
オフィスの動線計画のポイントは?
メリットや事例を紹介
オフィスでは、社員同士がすれ違ったり、来客対応をしたり、書類・備品を持ち運んだりなど、日々さまざまな動きが発生しています。こうした人や物の流れを指す「動線」は、働きやすいオフィスづくりに欠かせない視点です。
動線が整理されていないオフィスでは、移動に無駄が生じたり、通路が混雑したり、コミュニケーションや業務のしやすさに影響したりすることがあります。一方で、動線を適切に計画することによって、業務効率や安全性、快適性の向上が期待できます。
本記事では、オフィス動線の基本的な考え方や、計画時に押さえておきたいポイント、動線の工夫によって働きやすさを高めた事例を紹介します。
目次
1. オフィスの動線とは?

オフィスの動線とは、オフィスにおいて社員や来客が移動する経路や、書類・備品などの物の流れのことです。オフィスには、日常業務の移動だけでなく、来客対応や打ち合わせ、コピーや備品の利用など、さまざまな目的の動きが存在しています。
これらの動線を意図して設計するのが「動線計画」で、効率的で使いやすい空間にしたり、社員同士のコミュニケーションが生まれやすい空間にしたりすることができます。しかし、動線計画は、レイアウトや家具の配置、通路幅、ゾーニングなど、オフィス設計のさまざまな要素と密接に関わるため、部分的に見直すことは容易ではありません。移転や改装のタイミングは、「人がどのように動くか」をあらためて具体的に考え、空間全体を一体的に計画し直す絶好の機会といえます。
2. オフィスの動線を工夫するメリット
動線を意識してオフィスを設計すると、業務効率やコミュニケーション、空間の印象などさまざまな面でよい変化が生まれます。ここでは、動線を工夫することで得られる主なメリットを紹介します。
業務効率が向上する
動線が整ったオフィスでは、無駄な移動が減り、業務がスムーズに進みやすくなります。よく使う設備へのアクセスが近くなったり、連携の多い部署同士の行き来がしやすくなったりすると、作業の流れが途切れにくくなるのです。一つひとつはわずかな時間でも、積み重なると業務全体のスムーズさに大きな差が生まれます。
社員同士のコミュニケーションが生まれやすくなる
社員が自然と顔を合わせる機会が生まれやすくなるのも、動線を工夫することで得られるメリットのひとつです。移動の途中に他部門の社員と出会ったり、共有スペースで偶発的な会話が生まれたりすることで、普段は接点の少ない社員同士のつながりが育まれます。
空間全体にまとまりが生まれる
動線が整理されると各エリアの役割が明確になるため、空間全体にまとまりが生まれます。エリアごとに動線が整っている状態では、社員が迷わず行動できるようになるほか、来訪者にも整然とした印象を与えることができるでしょう。
3. 動線が悪いオフィスで起こりやすい問題
動線がうまく機能していないオフィスでは、日々の業務にさまざまな支障が生じる可能性があります。ここでは、動線が悪いことで起こりやすい代表的な問題を紹介します。
空間の目的に合った使い方がしにくくなる
動線が空間の用途と合っていない場合、本来その場所で期待される行動が生まれにくくなります。例えば、人の往来が多い場所に集中作業スペースがあると、視線や話し声が気になり、落ち着いて作業に取り組むことが難しくなるでしょう。一方で、交流を促したいエリアで動線が分断されていると、自然なコミュニケーションが生まれにくくなってしまいます。
このように、動線が空間の目的に合わせて計画されていない場合、本来期待される行動が生まれにくくなり、業務効率や働きやすさに影響を与えてしまうのです。スペースの目的と人の流れを整合させることが、各エリアを本来の機能どおりに活かすための前提条件となります。
無駄な移動が増える
よく使うものがすぐ近くにないと、作業のたびに無駄な移動が発生します。ちょっとした時間と捉えられやすいですが、積み重なれば無視できないタイムロスになり、あまり効率的とはいえません。
こうした無駄な動きが多いオフィスは、個々の作業効率を下げるだけでなく、集中が途切れるタイミングも増えるため、作業の質にも影響することがあります。さらに、こうした非効率が組織全体に広がると、チーム全体の生産性にも影響を及ぼしかねません。小さな移動コストを見直すことが、業務改善の第一歩になります。
通路の混雑が生じる
通路が狭かったり人の交差が多く発生したりする空間では、すれ違いや待ち時間が発生しやすくなります。特に、昼休みや始業・終業時間など、多くの社員が同時に移動するタイミングでは、通路の混雑が顕著になりやすいでしょう。
こうした時間帯に主要な通路が詰まってしまうケースでは、移動のたびにストレスが生じるだけでなく、緊急時の迅速な避難にも支障をきたすおそれがあります。通路の幅と人の流れを事前に計画しておくことが、快適なオフィス環境の維持につながります。
来客の移動が業務の妨げになる
来客の移動ルートを適切に整理しないと、来訪者の動線と業務スペースが重なってしまい、社員の移動や作業の妨げになることも。また、ディスプレイや書類に表示された情報が来訪者の目にふれるリスクも見逃せません。受付から会議室・応接室への来客動線を明確に設計することが、業務の快適性とセキュリティの両面で重要です。
4. オフィスの動線計画を立てる際のポイント

働きやすいオフィスを実現するためには、人や物の流れを踏まえた計画的な動線計画が欠かせません。適切な動線は業務効率の向上やストレスの軽減にもつながるでしょう。ここでは、オフィス動線の計画を立てる際に押さえておきたい主なポイントを紹介します。
目的に応じてゾーニングを行う
ゾーニングとは、オフィス内のエリアを用途や目的ごとに区分けすることです。集中作業、打ち合わせ、来客対応など、用途の異なる業務を同じ場所で行うと、人の動きが混在しやすくなります。ゾーニングで目的ごとにエリアを分けることで、不要な移動や干渉を減らし、それぞれの活動に適した環境を整えやすくなるでしょう。
例えば、集中して作業をするエリアは人の通行が少ない奥まった場所や窓際に設ける一方、打ち合わせや雑談のしやすいコミュニケーションエリアは、社員が自然と集まる場所に配置するといった工夫が効果的です。ゾーニングは動線計画全体の出発点ともなる重要なステップとなります。
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メイン動線とサブ動線を分ける
人の通行量が多い主要な通路(メイン動線)と、各エリアへアクセスする補助的な通路(サブ動線)を区別して計画することで、混雑や不要な交差を抑えられます。メイン動線はオフィス全体をスムーズに移動できるよう直線的に配置し、執務エリア内はサブ動線でつなぐのが基本的な考え方です。
メイン動線が不必要に曲がりくねっていたり、各エリアへのアクセスが一本の通路に集中していたりすると、特定の場所に人が集まりやすくなり、混雑の原因になります。メイン動線をオフィスの主軸として一本通し、そこから各エリアへサブ動線で枝分かれさせることで、移動の効率と通路の分散を両立しやすくなるでしょう。
動線の交差を適切に使い分ける
人の流れが頻繁に交差する場所に作業スペースがあると、作業中に視線や動きが気になりやすく、集中して作業に取り組みにくくなります。一方で、共有スペースやカフェエリアなどでは、人が行き交う動線をあえて設けることで、偶発的な会話やコミュニケーションが生まれやすくなるでしょう。
通路の位置や設備の配置を工夫し、不要な交差は避けつつ、それぞれの場所の目的に応じて動線の交差を使い分けることが、働きやすい環境づくりにつながります。例えば、集中作業スペースへの動線は人の流れを限定し、リフレッシュスペースや共有スペースへの動線は複数の方向から自然に集まれるよう設計するといったアプローチが効果的です。
通路幅には余裕を持たせる
通路が狭いと人のすれ違いや移動がしにくくなり、混雑や滞留が発生しやすくなります。こうした状態は日常的なストレスや安全面のリスクにもつながるため、通行量や利用目的に応じて適切な幅を確保することが重要です。
一般的に、人が1人通れる幅としては600mm以上が必要とされています。その上で、建築基準法では通路幅について以下の目安が定められています。
■建築基準法による通路幅の目安
|
条件 |
幅 |
|
通路の両側に部屋がある場合 |
1.6m以上 |
|
その他 |
1.2m以上 |
出典:建築基準法施行令(1950年政令第338号)第109条
通行量が多い場所や、車椅子・台車の使用が想定される通路では、法令上の基準を超えた余裕のある幅を確保しておくことが大切です。また、レイアウト変更時には家具の配置によって実質的な通路幅が狭くなるケースもあるため、定期的に確認しましょう。
避難経路を確保する
オフィスの動線計画では、日常の使いやすさだけでなく、災害時や緊急時の避難を想定した経路の確保も重要です。避難経路がわかりにくかったり、通路上に障害物があったりすると、スムーズな避難が妨げられる可能性があります。
非常口までの経路を明確にし、十分な通路幅(メインの避難通路は直線状に幅1.2m以上)を確保するとともに、日常的に物が置かれないような運用を整えることが欠かせません。
避難経路の確保は、法令上の要件であることに加え、非常時に社員が迅速かつ安全に避難できる環境をつくるための取り組みです。オフィスのレイアウトを変更する際には、避難経路への影響を必ず確認するようにしましょう。安全性に配慮した動線計画は、安心して働ける環境づくりにもつながります。
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共有設備の配置を最適化する
コピー機や収納、共用機器などが使いにくい位置にあると、移動距離が増え業務効率が低下します。利用頻度や部署の位置関係を踏まえて配置すれば、無駄な動きを減らし、スムーズな業務につなげることが可能です。
オカムラの調査によると、オフィス内での歩行距離に不便を感じない距離は20mとされており、さらに打ち合わせやリフレッシュなどの利用目的によって適切な距離や限界距離は異なります。よく使う設備は利用者の席から20m以内に収まるよう配置を検討するとよいでしょう。
また、複数の部署が共用する設備は特定の部署の近くに偏らせず、各部署からアクセスしやすい位置に設けることで、特定エリアへの人の集中を防ぎ、動線全体の均衡を保てます。

5. オフィスの動線計画で働きやすさを高めた事例
動線計画の考え方は理解できても、実際にどのようにオフィスに落とし込めばよいのかイメージしにくい場合もあるでしょう。ここでは、動線に配慮した実際の設計パターンをご紹介します。
固定席と共有エリアを行き来しやすい動線で集中と交流を両立

産業用資材の専門商社、株式会社シバタ 様では、創立70周年を機に別々の拠点を統合した新オフィスを開設しました。社員の集中環境を守りながら、コミュニケーションも自然に生まれるよう動線が設計されています。
固定席での集中作業をベースとしつつ、すぐ近くに共有エリア(打ち合わせスペース・ハイテーブルなど)を配置。集中と交流の場を無理なく行き来できる動線になっています。また、全席に電動昇降デスクを導入したことで立ち姿勢での作業が可能になり、「立ち作業中に歩いている人と自然に目が合い、会話が生まれやすくなった」という声も聞かれています。集中とコミュニケーションのメリハリを、空間設計と動線の両面から支えた事例です。


固定席+共有エリアで集中と交流を両立。70周年企業の新拠点|株式会社シバタ
動線の中心にコミュニケーションスペースを設けて偶発的な出会いを創出

衛生用品メーカーのユニ・チャーム株式会社 様では、本社移転を機に7フロアを3フロアに集約しました。フロアが分かれることで生じやすい部門間コミュニケーションの希薄化を防ぐため、動線を意識した設計が採用されています。
3フロアの中間にあたる41Fには、個人ロッカーやカフェコーナーなど「みんなが集まる機能」を集約し、社員が毎日通る動線の中心に位置づけました。また、各部門の拠点となるスペースをあえて動線上に設けることで、通りがかった社員が他部門の様子を自然に感じられる設計になっています。ロッカー前やカフェでの偶発的な出会いが、部門を超えた会話のきっかけとなっています。


来客エリアと執務エリアの動線を分けてセキュリティと快適性を両立

ITサービス企業のジェイエスフィット株式会社 様は、本社移転で4フロア構成のオフィスを新設しました。来訪者への好印象と社員の業務環境を守ることを両立するため、来客動線と執務動線を明確に分けた設計を採用しています。
来客対応の拠点となる5Fには、エントランス・応接室・来客スペースを集約し、執務エリアとは別の動線で来訪者を案内できる間取りにしました。機密情報が扱われる執務エリアへの不必要な立ち入りが生じないレイアウトにより、情報管理の面でも安心できる環境が整っています。訪れたお客様への印象向上はもちろん、採用においても企業の魅力を発信できる場として機能しています。


4つのフロアを超えて人が動き、つながりが深まるオフィス|ジェイエスフィット株式会社
曲線動線が"たまり場"を生み出し、交流を生む

自動車部品メーカーの日本ガスケット株式会社 様では、「Connect(つながり)」をコンセプトに掲げた本社フロアの改装で、動線の設計から交流を生み出す工夫が凝らされています。
以前は固定席の島型レイアウトで部署間の交流が生まれにくいという課題がありました。改装では人の往来が多いメイン通路に曲線を取り入れ、気軽に集まれる「たまり場」となる交流スペースを新設しています。うねりのある通路が社員の足を自然と止め、部署を超えた会話が生まれやすくなりました。執務エリアはフリーアドレスに移行し、異なる部署の社員が隣り合う機会が増えたことで、新たなつながりと情報交換も活発化しています。


曲線の通路が生み出した、活気あふれる交流の場|日本ガスケット株式会社
曲線動線で社員の行き来と交流を活性化

建材商社の株式会社清永宇蔵商店 様では、創業150年という節目を機に、営業本部を全面リニューアル。以前は直線的な机の配置で部署間の行き来がしにくく、情報共有が滞りがちだったことが課題でした。
リニューアルでは、あえて明確な通路を設けず、背の低い収納庫やソファを曲線的に配置することで、執務席の合間を自由に移動できる動線を設計しています。ちょっとした打ち合わせや立ち話が自然に生まれ、移動のたびに交流が促される仕掛けです。新オフィスへの移行後は、ミーティングや交流が増えたことで連携の機会が増え、お客さまからもポジティブな声が聞かれています。


6. 適切な動線計画が働きやすいオフィスをつくる
オフィスの動線は、ただ人が移動するための経路ではなく、業務効率やコミュニケーション、働きやすさに大きく影響する重要な要素です。無駄な移動や混雑、干渉が生じる環境では、日常的なストレスが蓄積し、生産性の低下やミスの増加につながることもあります。
一方で、適切に動線計画を行うことで、人や物の流れを最適化し、業務に集中しやすい環境が生まれます。企業の働き方や組織構成に合わせて動線を計画することで、コミュニケーションの活性化や柔軟な働き方の実現にもつながるでしょう。
オフィス移転や改装の際には、レイアウトやデザインだけでなく、「人がどのように動くか」という視点から空間を見直すことが重要です。動線計画を意識したオフィスづくりは、社員一人ひとりが快適に働ける環境を整えるだけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与します。
オカムラでは、動線計画を含むオフィスづくりを総合的にサポートしています。移転・改装をお考えの方は、ぜひ以下の資料もご覧ください。
よくある質問
Q:オフィスの動線計画はどのように進めればよいですか?
A:まず、オフィス内で発生する人や物の流れを洗い出すことから始めましょう。社員の日常的な移動パターンや来客の動き、共有設備の利用状況などを整理した上で、目的に応じたゾーニングとメイン・サブ動線の整理を行います。通路幅や設備配置も合わせて検討することで、業務効率や安全性を踏まえた動線計画が立てやすくなります。
Q:動線計画で通路幅はどれくらい確保すればよいですか?
A:建築基準法では、通路の両側に部屋がある場合は1.6m以上、その他の場合は1.2m以上が定められています。実際には通行量や利用目的に応じてゆとりを持たせることが大切です。車椅子の通行や台車の使用が想定される場所では、さらに広い幅の確保を検討することをおすすめします。
Q:来客動線と社員動線を分けるにはどうすればよいですか?
A:受付から会議室・応接室への来客動線を、執務エリアを通過しないルートとして設計することが基本です。来客が移動できる範囲をエントランス寄りのゾーンに集約することで、社員の業務への影響を最小限に抑えられます。不必要な視線や接触を減らすことは、情報管理の面でも有効です。
イラスト:Masaki
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