オフィスづくりのコラム

COLUMN

オフィスの休憩スペースのメリットとは?働きやすさと生産性を両立

2025.9. 9
  • ウェルビーイング
  • コミュニケーション
  • レイアウト
  • 生産性

オフィスにおける休憩スペースは、法的な設置義務こそないものの、生産性向上や従業員満足度の観点から力を入れる企業が増えています。実際に、2024年のオカムラ調査では、約7割の企業が休憩スペース(リフレッシュスペース)を設置し、生産性向上に役立てていることが明らかになりました。
本記事では、オフィス休憩スペースに力を入れるメリットや活用事例、設置時のポイント、注意点について解説します。

目次

  1. オフィスの休憩スペースに力を入れるメリット
  2. オフィスの休憩スペースにはどんな種類がある?
  3. 使われる休憩スペースをつくるポイント
  4. オフィスの休憩スペースにおすすめの設備
  5. 【規模別】オフィス休憩スペースの導入事例
  6. 休憩スペースの工夫が働きやすさと企業価値を高める

1. オフィスの休憩スペースに力を入れるメリット

休憩スペースとは、気分転換や社員同士の交流、軽食などを目的とした業務の合間に短時間でリフレッシュできるスペースのことです。社員が「使いたくなる」休憩スペースを整えることで、以下のような多様なメリットが期待できます。

<オフィスの休憩スペースに力を入れるメリット>

  • 生産性の向上につながる
  • 心身の健康維持・ストレス軽減
  • コミュニケーション活性化
  • 従業員満足度と定着率の向上
  • 企業ブランディングになる

●生産性の向上につながる

人間の集中力には限界があるため、長時間の作業を続けるとパフォーマンスは低下します。休憩スペースで短時間リフレッシュすることで疲れた頭がリセットされ、再び集中して業務に取り組めるようになるでしょう。オン・オフの切り替えがスムーズになり、結果として業務の効率や質の向上につながります。

●心身の健康維持・ストレス軽減

デスクに座りっぱなしの状態が続くと、身体的・精神的に負担がかかります。適度に立ち上がって気分を切り替えることは、疲労感やストレスの蓄積を防ぎ、心身の健康を保つためにも重要です。休憩スペースは、長時間の座位姿勢による健康リスクを軽減するだけでなく、メンタルヘルス対策としても重要な役割を果たしています。

●コミュニケーション活性化

休憩スペースは、業務上あまり関わりのない社員同士が自然と会話を交わせる場所としても機能します。部署や役職の垣根を越えたカジュアルな交流が、チームワークの強化や新しいアイデアの創出につながります。特に、コーヒーサーバーや軽食を設けたカフェスペースなどは、人が集まりやすく、コミュニケーションのハブとしての役割も期待できるでしょう。

●従業員満足度と定着率の向上

過ごしやすい休憩スペースがあることは、従業員の働きやすさや満足度を高め、仕事へのモチベーション向上や会社への愛着を生みます。こうした環境が長期的な定着を促し、離職率の低下にもつながるため、人事戦略の一環としても有効です。

●企業ブランディングになる

おしゃれで機能的な休憩スペースは、働きやすい企業文化を象徴する存在となり、社外に好印象を与えます。休憩スペースは、ウェルビーイングの向上と企業ブランディングの両面に貢献する空間だといえるでしょう。たとえ社内専用の空間であっても、その設計や活用の様子を発信することで、企業価値の向上につながります。例えば、以下のような活用が可能です。

<休憩スペースの企業ブランディングとしての活用例>

  • 採用サイトや会社案内に写真や社員の声を掲載し、職場の雰囲気を伝える
  • SNSやブログで日常の利用風景を紹介し、企業文化をアピールする
  • プレスリリースやオウンドメディアで設計背景やこだわりを発信し、社員思いの姿勢を示す

2. オフィスの休憩スペースにはどんな種類がある?

フリーアドレスの浸透により、固定席以外で自分らしく過ごせる場所のニーズが高まり、近年の休憩スペースには多様なスタイルが求められるようになりました。限られたスペースでも工夫次第で快適に設計できるため、業務スタイルや社風に合った空間づくりが重要です。ここでは、代表的な休憩スペースの種類を紹介します。

<オフィスの休憩スペースの種類>

  • カフェスペース
  • ラウンジスペース
  • ライブラリー
  • テラス・屋外スペース
  • プレイルーム
  • 仮眠室

●カフェスペース

カフェスペースは、軽食やコーヒーを楽しみながら、雑談や昼食、ちょっとした気分転換ができるカジュアルな空間です。働き方の多様化が進む中で、決まった席に縛られず「人が自然と集まる場所」として、カフェスペースの価値が高まっています。

周囲にミーティングスペースやカウンター席を設けることで、仕事と交流がゆるやかにつながります。業務の合間に自然なコミュニケーションが生まれる場として、多くの企業が取り入れているスタイルです。

人が集まる場として注目されるオフィスのカフェエリアの魅力や導入のヒントを、以下の記事で詳しく紹介しています。

なぜオフィスのカフェエリアが注目されている? 導入のメリットと活用法をご紹介

●ラウンジスペース

リモートワークや個別作業が増える中、「仲間と話す場所」としての機能も重要視すべきポイントです。ソファ席や丸テーブルを中心に構成された、開放的でくつろげるラウンジスペースは、部門や上下関係を超えたカジュアルな会話が生まれやすく、心理的安全性の向上にも役立ちます。業務の合間にふと立ち寄れるよう、アクセスしやすい場所に設計することがポイントです。

社内コミュニケーションを促す空間づくりについては、以下の記事でも詳しく紹介していますので参考にしてください。

社内コミュニケーションが活性化するオフィスづくりとは? 15の実践事例とともに解説!

●ライブラリー

オフィスの一角に設けられた静かなライブラリースペースは、読書や調べ物など、集中してインプットしたいときに最適な空間です。ビジネス書や業界誌などを設置しておくことで、社員の自己研鑽やスキルアップをサポートする場として活用できます。リラックスしながら知識を深められる環境づくりがポイントです。

●テラス・屋外スペース

自然光や風、緑を感じながらリフレッシュできる屋外空間は、気分転換ができる場所として最適です。屋外家具や日除け、植物などを取り入れることで、限られたスペースでも快適でリラックスしやすい環境をつくることができます。屋上やバルコニーなど、未活用のスペースを有効活用する手段としても有効です。

●プレイルーム

ダーツやテレビ、ゲーム機などを設置したプレイルームは、短時間で心と体をリセットできるため、仕事のオン・オフを切り替えるスペースとして効果的です。若手社員や中途入社者との自然なコミュニケーションのきっかけにもなるでしょう。遊びの要素を取り入れることで、リラックスしながら交流を促進できます。

●仮眠室

短時間だけ体を休めることができる仮眠室は、リフレッシュ効果が高く、生産性や集中力の回復にもつながります。アイマスクや仕切り、リクライニングチェア、簡易ベッドなどを備え、安心して横になれる環境を整えることがポイントです。特に、深夜勤務がある職場や長時間労働が発生しやすい業種では、重要な設備のひとつとして導入が進んでいます。

3. 使われる休憩スペースをつくるポイント

せっかく時間とコストをかけて休憩スペースを整えても、あまり使われないというケースも少なくありません。使われる休憩スペースにするためには、社員が自然と立ち寄りたくなる空間づくりが重要です。ここでは、人が集まり、日常的に活用される休憩スペースを実現するためのポイントを紹介します。

<使われる休憩スペースをつくるポイント>

  • 利用者の声を取り入れて設計する
  • 利用人数に見合ったスペースを確保する
  • 空間の目的や使い方を明示する
  • 社内施策と連動させて活用を促す
  • 導入後も定期的に改善を重ねる

●利用者の声を取り入れて設計する

休憩スペースを実際に使うのは従業員であるため、設計前にヒアリングやアンケートなどでニーズを把握することが大切です。「どんなときに使いたいか」「どんな機能があると嬉しいか」といった声を取り入れることで、利用されやすい実用的な空間をつくれます。従業員が休憩スペースづくりに関わることで、完成後の愛着や満足度も高まるでしょう。

●利用人数に見合ったスペースを確保する

休憩スペースは、利用者が快適に過ごせる広さを確保することが大切です。混雑していたり窮屈に感じたりする空間は敬遠されやすく、利用率の低下につながります。設計時には、想定される利用者数に応じた面積を確保し、座席の間隔や通路の幅などにも配慮しましょう。人が集まりやすいスペースにするには、適度な余白とゆとりが欠かせません。

●空間の目的や使い方を明示する

「なんとなく使っていい場所」では、かえって使いづらさを感じることがあります。例えば、「読書や資料閲覧にどうぞ」や「1on1や雑談の場として活用できます」といった案内を掲示したり、エリアにわかりやすい名前をつけたりすることで、利用者の心理的なハードルが下がり、自然と人が集まりやすくなります。

●社内施策と連動させて活用を促す

休憩スペースは、社内イベントや掲示物の設置などと組み合わせることで、社員同士のコミュニケーションを促す交流のハブとして活用できます。例えば、季節の行事に合わせた装飾やキャンペーンの紹介、コーヒーの提供や読書コーナーの設置などを通じて、社員が自然に立ち寄れる空間になり、日常的に活用される場所になるでしょう。

●導入後も定期的に改善を重ねる

休憩スペースは、一度つくったら終わりではなく、導入後も利用状況を見ながら継続的に改善していくことが大切です。例えば、家具の配置を調整したり、季節に応じた装飾を取り入れたりすることで、社員が飽きずに利用できる空間になります。また、利用ルールの見直しや社員の声を反映した工夫を重ねることで、より快適で居心地のよいスペースへと進化させることができます。

4. オフィスの休憩スペースにおすすめの設備

快適で使いやすい休憩スペースを実現するには、空間の広さやデザインだけでなく、設置する設備や備品の選定も欠かせません。利用シーンや目的に合った設備を取り入れることで、社員が自然と立ち寄りやすくなり、利用率や満足度の向上につながります。

以下では、休憩スペースに取り入れられる代表的な設備と、その効果について紹介しているので参考にしてください。

■家具

設備名

用途・効果

主な目的

カウンターテーブル・ハイスツール

短時間の滞在や立ち話、ちょっとした作業に最適

短時間利用・気分転換

ソファ・ローテーブル

くつろいだ姿勢で会話しやすい環境をつくる

リラックス・会話の場づくり

仕切り・パーティション

視線を遮って安心感を提供し、集中できる環境をつくる

安心感・集中しやすい環境づくり

■家電

コーヒーメーカー・給茶機

ドリンクを通じて自然な会話が生まれ、立ち寄りやすさがアップ

コミュニケーション促進

冷蔵庫・電子レンジ

ランチ利用や軽食に対応し、昼休憩の質を向上

休憩・飲食環境の充実

■備品

掲示板・社内報ラック

情報共有の場としても活用できる

情報共有・社内活性化

ゴミ箱・衛生管理グッズ

共用スペースの清潔感を保ち、快適な空間を維持

清潔維持・衛生対策

■演出

植栽・インテリア小物

空間に潤いと落ち着きをもたらし、癒し効果も期待

癒し・心理的快適性

このほかにも、ゲーム機や卓球台を設置したり、アート作品や写真を飾ったりするなど、企業の文化や働き方に合わせた演出を取り入れることが可能です。こうした工夫は、社員の居心地を高めるだけでなく、企業らしさを表現する場にもなります。限られたスペースや予算の中でも、ちょっとしたアイテムやレイアウトの工夫次第で印象や使われ方が大きく変わるため、自社の目的や課題に応じて、柔軟に検討してみてください。

5. 【規模別】オフィス休憩スペースの導入事例

オフィスの規模やレイアウトによって、適した休憩スペースの形は異なります。ここでは、大規模オフィス、中規模オフィス、小規模オフィスそれぞれにおける導入事例や工夫のポイントを紹介します。自社の環境に合ったアイデアを見つける参考にしてください。

<オフィス休憩スペースの導入事例>

  • 日本電子計算株式会社様(人員規模:1,000人)
  • 株式会社JALナビア様(人員規模:500人)
  • Y社(人員規模:100人)
  • 株式会社清永宇蔵商店様(人員規模:60人)

●日本電子計算株式会社様(人員規模:1,000人)

日本電子計算株式会社様では、本社1階の大会議室を改装し、社員が自然と集まる共用スペースを整備。木目調で落ち着いた雰囲気のオフィスコンビニ「JIP Café」では、飲み物や軽食の購入ができ、自然と人が集まりリラックスした会話が生まれています。

カフェの向かいには、ランチや休憩、1on1など多用途に使えるリフレッシュスペースを設置。円形テーブルやソファ、植栽などが開放感を演出し、部門を越えたコミュニケーションを促進しています。高い利用率と満足度を実現しており、休憩スペースが働きやすい環境づくりに貢献している好事例です。

「あったらいいな」を叶えて自然と人が集まる共用スペース|日本電子計算株式会社


株式会社JALナビア様(人員規模:500人

株式会社JALナビア様は、社員がいきいきと自分らしく働ける場づくりを重視。活気のある雰囲気が社員同士の交流をもたらし、心身ともに健康的に働ける現代的なオフィスを実現しました。「Chill Cafe」と名付けられたリフレッシュスペースは、温かい色の家具や内装が多く用いられ、植栽も豊富に取り入れることでカフェのような設えに。執務中とは気持ちを切り替えてゆっくりリラックスできます。

ひとりや少人数でくつろぎたい人のために、丸みを帯びた優しいフォルムが印象的なソファも用意。ひとり一人に寄り添った誰もが自分らしく過ごせる空間です。

見通しの良い滑走路(Runway)を、堂々と自分らしく歩むように働く|株式会社JALナビア


●Y社(人員規模:100人)

「社員みんなが"集まりたい"と思える場所に」という想いから、オフィスを全面刷新。中でも3階に設けられた「3Cafe(サンカフェ)」は、仕事禁止のリフレッシュ専用スペースです。森のような香りと緑に囲まれた空間に、遊び心のあるソファやアウトドアチェアが並び、社員が心身を休めながら自然と集まれる場となっています。

最上階の5階には、VIP対応の会議室とラウンジを備えたラグジュアリーなフロアがあります。バーカウンター付きのアイランドキッチンやガーデン風テラスがあり、立食パーティーなど多目的な活用が可能です。


株式会社清永宇蔵商店様(人員規模:60人)

水色と木目を基調とした、北欧風のカフェを思わせるようなリフレッシュエリアには、様々な席が用意されています。仲間と談笑しながら過ごせるテーブル席や、一人で過ごせる窓際のカウンター席、くつろぎのソファ席、キッチンカウンターのハイチェアと、その日の気分や過ごし方によって席を選べます。

明るく風通しの良いオープンキッチンでは、コーヒーを入れながら、カウンターに座っている人と話すなど、自然な交流が生まれます。

創業150年企業のオフィス改革。曲線を活かした"つながる"空間|株式会社清永宇蔵商店

6. 休憩スペースの工夫が働きやすさと企業価値を高める

オフィスの休憩スペースは従業員が心身をリフレッシュできるだけでなく、部門を越えた交流や情報共有の場としても機能します。多様な働き方が広がる今、自分らしく過ごせる"居場所"をオフィス内につくることは、従業員の満足度を高めるためにも大切です。社員の声に耳を傾け、自社にとって最適な休憩スペースのあり方を考えてみてはいかがでしょうか。

従業員の働きやすい環境を整えるためには、空間づくりの工夫が欠かせません。今回紹介した休憩スペースの事例のように、ちょっとした工夫が従業員同士のつながりや満足度を高めるきっかけになります。より詳しく知りたい方は、以下の資料もぜひご覧ください。


イラスト:Masaki