オフィスに求められる機能を再定義する

――エイベックスが本社ビルオープンからわずか数年で移転を決断した理由

オフィスに求められる機能を再定義する

――エイベックスが本社ビルオープンからわずか数年で移転を決断した理由

この記事は2022年12月 1日に公開されたものです

エイベックス株式会社 様

6,800㎡ / 約1,500名・750ワークポイント / 2022年3月竣工
お客様のファーストオーダー

環境の変化を機にオフィスサイズを見直し、
チームワークを最大化する空間を

2017年以降、わたしたちは本社ビル全フロアでのフリーアドレス運用を導入するなど、時間と場所にとらわれない自由な働き方に挑戦してきました。 働き方改革により社員の意識は変わってきたものの、固定席運用時と比べてチーム内のコミュニケーションを取る機会が減ってしまったことに、若干の課題を感じていました。 

そんな中、新型コロナウイルスの流行により、世の中はテレワークを取り入れた柔軟な働き方へ大幅にシフト。 当社も出社率3割程度の状況が続き、オフィスはかつての賑わいを失いつつありました。 そこで、今後はオフィスワークとリモートワークのどちらかだけに限定しない、ハイブリッド型の働き方を推進していくことにします。 

具体的には、新本社は出社率50%を前提としてオフィス面積を約半分にし、チームワーク強化を目的にグループアドレス運用へ変更します。 個人の集中作業は自宅やシェアオフィスで行い、出社時はコミュニケーションをたくさん取れる空間を提供したいと考えています。 働くスタイルの選択肢を増やすことで社員一人ひとりのパフォーマンスを最大化し、クリエイティビティを発揮できる環境を整備します。 

BEFORE
オカムラのアンサー

「エイベックスらしさ」を感じられる賑わいのあるオフィスを

2017年本社ビルオープンからわずか数年での移転計画をお伺いした時は、正直驚きました。 しかし同時に、つねに時流を読み最善の選択をし続ける決断力と柔軟性に、改めてエイベックスさんらしさを強く感じました。 

新本社の特徴は、「出社時にはコミュニケーションを」というビジョンをかなえるため、各フロアの機能が明確に区分されていることです。 そうすることで同じ目的をもった従業員が自然と集まり、コミュニケーションが活性化する「賑わいあるオフィス」の実現を目指しています。 また、出社時には改めて「エイベックスらしさ」や居心地の良さを感じてもらいたいという想いから、エントランスやカフェテリアの内装デザインには特にこだわりました。 本物のグリーンや木材などのナチュラルな素材を大胆に使用し、コミュニケーションが渦を巻き生まれるよう、いたるところに曲線のモチーフを組み込んでいます。 

旧本社で利用していた家具や照明器具には、状態がよくリユースできるものが多くあったため、なるべく無駄にならないよう転用計画を進めていきました。 リユース品を有効活用しながらも、よりアップデートされた空間になるよう、新旧のものが自然に馴染む配置やカラーリングを心がけています。 


過去と未来の融合が企業カルチャーをはぐくむ

まずは企業イメージが表現された10階のエントランスからご紹介します。 ビルの廊下からエントランスの扉をぬけると、鉄骨が露わになったスケルトン天井や、ラスティックに仕上げられたアール状の壁が印象的な空間が広がっています。 隣接するカフェテリアもガラス越しに見渡すことができ、空間全体を一体に感じられる開放的なエントランスです。 

ここは打ち合わせに訪れる来訪者や、社内会議を行う社員が必ず立ち寄る場所。 日常的に訪れるからこそ、自社のブランドやカルチャーを自然と浸透させられる場所でもあります。 来訪者が待合いで腰掛けられる円形のソファは、エイベックス社のルーツでもあるレコードを想起させるデザイン。 天井から吊られた明るく輝くペンダントライトは、同社が生み出してきた無数のアーティストやコンテンツをイメージしています。 その中心には、美しい曲線と上品なシルバーの仕上げが目を奪う、大きなミラーボールのようなロゴサインが。 創業時から受け継がれる自社のDNAと、これから生み出される未来への期待感を同時に感じられる、まさに企業カルチャーが醸成されていく空間です。 

時間帯によって趣をかえる“エイベックスタウン”

エントランスからガラスのセキュリティ扉を抜けると、まるでブルックリンの街角に訪れたような落ち着いた雰囲気のカフェテリアが広がります。 ここは仲間と直接向かい合いながら打ち合わせや雑談ができる、社内コミュニケーションの場。 グリーンも多く、会議室とは異なる雰囲気がカジュアルなコミュニケーションを誘発します。 「POP IN」と呼ばれるカフェスタンドからは、専門スタッフがサーブする香ばしいコーヒーの香りが漂い、新鮮な生絞りオレンジジュースや色鮮やかなサラダが並ぶショーケースが視界を彩ります。 ランチタイムには、自社で運営する飲食店舗スタッフによって製造されたお弁当を楽しみに従業員が続々と集まり、さらに活気を増していきます。 お昼を過ぎると、木漏れ日が差し込むソファエリアや見晴らしの良い窓際カウンターで気分をリフレッシュする人も。 オンラインではなかなか味わえない体験がこの空間にはたくさん詰まっています。 

リアルな空間だからこそ得られる体験価値

10階は来訪者との打ち合わせに利用できる来客会議室も備えています。 各個室はあえて整然と並べるのではなく、箱をずらして寄せ合わせたようにランダムに配置されています。 まるで街中の路地に迷い込んだかのような、遊び心と立体感が感じ取れるレイアウトです。 ジグザグな通路と会議室の間に生まれた空間も大切なコミュニケーションの場。 ソファに腰かけ偶然居合わせた仲間とちょっとした打ち合わせをするなど、気兼ねなく利用できる社員のたまり場になっています。 

会社としての大事な決定は、中に入ると思わず気持ちがしゃきっとするような役員会議室で執り行われます。 空間全体がグレーとシルバーの色調で統一され、冷静な議論を促してくれそうです。 会議の内容と目的に合わせて、適切な空間を使い分ける――これも、オフィスに出社したからこそ得られる体験価値の一つでしょう。 

ここがわたしたちのホームグラウンド

5階は約4,000㎡あるメガフロアを、ほぼ仕切らずオープンに活用した執務エリア。 今回のオフィス構築のコンセプトである「チームワーク強化」のため、出社した際になるべく社員同士が近い距離感で働けるよう、執務エリアはすべて5階に集約しました。 さらに旧本社で導入した完全フリーアドレスは、目的に応じてさらにアップデート。 新本社ではチームごとに定められたエリア内でフリーアドレス運用を行う「グループアドレス制度」が採用されています。 そうすることで、在宅勤務やテレワークで希薄になりがちなチーム内での一体感を補い、コミュニケーションの活性化を図っています。 

オープンなメガフロアでも各チームの所在がわかりやすく、帰属意識が高まるような工夫も施されています。 入口付近には、各チームのグループアドレスエリアが示されたマップを設置。 エリアごとに柱も色分けされているので、広い空間でも自身の所在に迷いません。 各エリアにはチーム名のプレートが吊り下げられ、チームのよりどころのような安心感を与えています。 一方で、各エリアは壁ではなくオープンシェルフで緩やかに仕切られ、チーム間のコミュニケーションも分断されないようにバランスが保たれています。 

コミュニケーションから集中への瞬間移動

チームワーク重視でつくられた執務エリアにも、リフレッシュや個人作業をサポートする機能エリアが適切な間隔でちりばめられています。 ワンフロアを端から端まで蛇行しながらひとつなぎにする通路導線沿いには、ちょっとした休憩やコミュニケーションに最適なカフェスポットが3か所設けられています。 仕事の合間にドリンクを飲みながら一息ついている同僚がいたら、通りがかりに立ち寄って思わず声をかけてしまう――不思議な引力のあるスポットです。 

オンライン会議が主流になり、ひとりで個室を利用したいニーズが高まったことから、5階には一人用のフルクローズ型ワークブースを18台設置しました。 遮音性が高く会議に集中できる人気スポットですが、グループアドレスエリアから通路を隔てて設置されていることで、より気分を切り替えて集中空間へワープすることができます。 

おもいきって変えたもの、あえて残したもの

4階にはフリーアドレス運用をサポートする機能空間を集約しています。 執務エリアには個人の席がないため、郵便物や宅配便は一度4階のビジネスサポートに届けられます。 社員は出社した際に自身に届いた郵便物を受け取り、送りたい荷物があるときもここから出荷するシステム。 これは旧本社で導入され、今日まで継承されているシステムです。 ビジネスサポートではそれ以外にも、PCや携帯端末の貸出を行うPC・モバイルサポート、旅券の申請・発行が可能なツアー手配の窓口があり、対面で安心して業務のサポートを受けられます。 

これまでは各執務フロアに設置していた書庫と個人ロッカーは、一人当たりのサイズを縮小して4階に集約しました。 個人ロッカーはあえて執務エリアから距離がある場所に設置することで、保管する紙資料を厳選する傾向が生まれ、自然とペーパーストックレスが身につきます。 テレワークが浸透し、オフィスに荷物を保管する習慣が少なくなったことにも柔軟に対応しています。 

働き方が変化したことにより、おもいきって変えたものとあえて変えずに残しているもの、「新」と「旧」が見事に共存した空間です。 

編集後記(ここに注目!)

今回は「チームワーク強化」と「オフィスでの体験価値」に重点を置いて設計された事例でした。ハイブリッドワークが定着するなかで、オフィスに求められる機能が再定義されつつありますが、企業のありたい姿やオフィス構築の目的が明確であれば、自然と必要な機能を取捨選択することができます。また、オンラインでなかなか実現できていないことに着目すると、オフィスに求められるものは自然と見えてくるのかもしれません。ぜひ本事例が、貴社にとって「いま必要な機能は何なのか」を考えるきっかけになれば幸いです。

「Design Stories」に掲載できなかったエイベックス本社オフィスの写真は「Design Tips」でもご紹介しています。また、エイベックスの本社構築ストーリーは動画コンテンツ「Workplace TV」でもご紹介しておりますので、ぜひそちらもあわせてご覧ください。

Project’s Data

業種
音楽・エンタテインメント事業
企業名
エイベックス株式会社
プロジェクト名
エイベックス本社移転プロジェクト
WEBサイト
https://avex.com/jp/ja/

Relative Projects

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