
オフィスでのお酒をどう活かす?
交流を生む空間づくりのポイント
テレワークやハイブリッドワークが広がったことで、部署をまたいだ雑談や偶発的な会話の機会が減ったと感じる企業は少なくありません。オカムラの調査でも、働く環境づくりで「コミュニケーションの活性化」を重視する企業が多いことが示されています。
近年のオフィスづくりにおいて、カジュアルな交流が生まれる空間をどうつくるかは、非常に重要なテーマです。この記事では、交流を活性化させる方法のひとつとして、「お酒」を活用した交流の考え方に着目し、オフィスでの活用のポイントを解説します。
1. 世界にはお酒を交えたカジュアルな交流文化がある

日本では、仕事とお酒は切り離して考えられる場合が多く、オフィスでお酒を飲むことに抵抗を感じる人も少なくありません。しかし、世界に目を向けると、仕事とお酒の距離が比較的近い文化を持つ地域があります。こうした文化のある地域では、お酒の場は決して特別なイベントではなく、日常の延長として、交流の機会になっているのです。
例えば、英国のパブ文化はよく知られています。勤務終了後に同僚とパブへ立ち寄り、軽く1杯を楽しみながら会話を交わす光景は珍しくありません。必ずしも長時間滞在するわけではなく、短時間で近況を共有して帰宅する利用も一般的です。
ここで重要なのは、お酒そのものを目的としているわけではないということ。リラックスした雰囲気の中で交流を生み、人間関係を育てるための手段としてお酒が活用されているといえます。
2. 日本企業におけるお酒を活用したコミュニケーションの課題
日本企業でも、業務以外での交流の必要性は高まっています。しかし、日本で仕事後に同僚とお酒を飲む場合は、居酒屋などでのイベントというかたちになりがちで、気軽に短時間だけ立ち寄るというカジュアルさがないのが現状です。
その結果、交流の機会を日常的に設けにくいという課題が生まれます。社外で集まるには、日程調整や店の予約、移動の手間がかかります。こうした負担があると開催の頻度が下がり、交流の場があっても、一部の人だけのものになってしまう可能性があるでしょう。
加えて、近年は長時間の飲み会や参加負担に対して、否定的な意見を持つ社員も少なくありません。役職差がある場では発言しにくいと感じる人もいますし、業務後の時間を確保しにくい人もいます。だからこそ、日本企業でお酒を活用したコミュニケーションを考える際は、お酒そのものよりも、誰もが無理なく参加できる交流の場をどう設計するかが重要です。
3. オフィスにお酒を飲める場を設けるメリット
お酒を楽しめる場をオフィス内に設けると、交流の機会を日常に組み込みやすくなります。もちろん、導入の目的は飲酒ではなく、コミュニケーションの質と量を高めることです。
ここでは、オフィスにお酒を飲める場を設けることで企業が得やすい3つのメリットを紹介します。
日常的にカジュアルなコミュニケーションが生まれる

オフィス内に交流の場があると、短時間でもコミュニケーションが生まれやすくなります。社外での飲み会は準備負荷が高く、実施のたびに段取りが必要です。その一方で、終業後にそのまま立ち寄れる場所があれば、「30分だけ話す」「少人数で近況共有する」といった柔軟な使い方ができます。実施ハードルが下がることで、特別な会ではなく、日常の延長として交流を積み重ねやすくなるのです。
さらに、日常的な会話は業務連携にもよい影響を与えます。普段から話している相手には相談しやすく、情報共有のスピードも上がりやすいでしょう。例えば、プロジェクト開始前に関係者同士が軽く顔合わせできるだけでも、会議の進み方が変わることがあります。形式的な打ち合わせだけでは見えにくい温度感を共有できる点も、カジュアルな場の強みです。継続的な交流が、結果として業務の円滑化につながります。
部署を超えた偶発的な交流が生まれる

共用のバーやラウンジは、部署や役職を超えた出会いを生みやすい空間です。通常業務では接点がない社員同士でも、同じ場を使うことで自然に会話が生まれます。こうした偶発的な交流は、公式の会議では出てこなかったアイデア交換や情報のつながりを促します。新規施策のヒントが別部署から得られるなど、思わぬ相乗効果も期待できるでしょう。
また、偶発性を高めるには空間づくりの工夫も重要です。立って話しやすいカウンター、短時間利用しやすい席配置、複数人が視線を交わせる動線などを整えると、会話のきっかけが増えます。
2014年のオカムラと早稲田大学が発表した「フリーアドレスオフィスにおける業務及びサロンエリアの差異がワーカー同士のコミュニケーションに与える影響」によれば、同じ場に40秒とどまる仕掛けをつくることで、会話が発生する確率が50%に上がるという研究結果も。「飲み物を取りに来たついでに5分話す」というような接点が繰り返されると、組織内の心理的距離は少しずつ縮まります。部署横断の連携が課題の企業ほど、こうした交流の価値は大きいといえるでしょう。
オフィスのイメージアップにつながる

交流スペースは、企業文化を体現しやすい場所です。社員同士が気軽に集まれる空間があることで、働きやすさやコミュニケーションを重視する企業姿勢が伝わります。社内向けには「ここで働きたい」という実感につながり、来訪者向けには組織の雰囲気を伝える接点になります。採用広報やブランディングの観点でも、空間体験の価値は高まっているのです。
ただし、見た目の演出だけでは十分ではありません。実際に使われる運用設計が伴ってこそ、価値が定着します。例えば、定期的に小規模イベントを開く、チームをまたいだ交流イベントを設ける、ソフトドリンクも充実させて社員が集まる工夫をすることで、利用率と満足度は変わります。空間と運用を一体で設計することが、イメージアップを一過性で終わらせないポイントです。
4. オフィスにお酒を飲める場を設けた事例
オフィスでお酒を活用した場づくりを考える際は、実際にどのような空間が交流のきっかけになっているかを見ることも参考になります。ここでは、社員食堂やラウンジ、リフレッシュエリアなどを活用し、コミュニケーションが生まれやすい環境を整えている事例を紹介します。
社員食堂とリフレッシュエリアを交流の場として活用

株式会社村田製作所 様の本社食堂改装プロジェクトでは、社員食堂とリフレッシュエリアを、多様な過ごし方に対応できる空間として整えています。5階の食堂は混雑緩和と快適性向上を目指して改装され、6階にはカフェを併設したリフレッシュエリアが新設されました。食事や休憩だけでなく、打ち合わせや交流にも使える場として機能している点が特徴です。

特に6階のリフレッシュエリアでは、曜日によって終業後にアルコールも販売され、交流を深める場として活用されています。立ち作業ができる席やソファ席など、多様なスペースが用意されているため、短時間の会話から休憩、軽い打ち合わせまで幅広く対応可能です。お酒の場を単独で設けるのではなく、社員食堂やカフェを含む日常空間の延長として交流を生み出している点は、オフィスでお酒を活用する際の参考になるでしょう。
多くの社員が集う社員食堂をスムーズな動線で心地よく|株式会社村田製作所
ラウンジやパントリーを交流のハブに

森トラスト株式会社 様では、社員が出社する価値を感じられるよう、ロビーやラウンジを交流の中心に据えたオフィスづくりがおこなわれています。ホテルのようなラグジュアリーな空間が広がるエントランス「LOBBY」は、来客との打ち合わせや待合い、社員の執務スペース、さらにはイベントスペースを兼ねた空間です。LOBBYでは、来客に提供する飲み物を準備できるほか、社内イベントなども行われています。


また、執務エリアの中央にある「LOUNGE」は、社員同士のカジュアルな打ち合わせや談笑、スキマ時間の作業などに使われており、チームを超えた交流やコラボレーションが生まれる場として機能しています。カウンター裏にパントリーを備え、コーヒーを片手に会話できる場や、レイアウト変更しやすい空間をつくることで、目的に応じて交流の形を変えられる設計にしています。
チームの結束を高め、社員の拠り所となるオフィス|森トラスト株式会社
リフレッシュエリアをイベントや懇親の場に活用

NTT・TCリース株式会社 関西支店 様では、執務エリアとは雰囲気を変えたリフレッシュエリアが交流の場として活用されています。カフェカウンターやソファ、明るさを抑えた照明を取り入れた空間は、日中の休憩だけでなく、社員同士が自然に集まりやすい場として設計されています。働く場とは少し空気を変えることで、会話が生まれやすい環境をつくっている点が特徴です。

さらに、このリフレッシュエリアは、終業後にお酒を飲みながら気軽なイベントを催す場としても使われています。普段から親しみのある共有空間をそのまま懇親の場に活用できるため、特別な会場を別に用意しなくても交流の機会をつくりやすいのです。お酒を楽しめる場をオフィスに設ける際は、このように日常使いの空間をベースにして、交流やイベントへ自然につなげる考え方が参考になるでしょう。
三位一体で取り組んだ妥協しない理想のオフィスづくり|NTT・TCリース株式会社 関西支店

5. オフィスにお酒を飲める場を設けるポイント
オフィスでお酒が飲めるスペースがあるからといって、自然と交流が生まれるわけではありません。スペースそのものの空間設計はもちろん、利用ルールの整備や飲まない人への配慮という運用面も含めて整えることで、初めて誰もが安心して使える場になります。
ここでは、導入時に必ず押さえておきたいポイントを整理します。
利用ルールを明確にする
オフィス内でお酒を扱う場合は、利用ルールを事前に明文化することが大切です。ルールが曖昧なままだと、業務時間との境界が不明瞭になり、トラブルや不公平感につながる可能性があります。例えば、「終業後のみ利用可能」「開催責任者を設定する」「持ち込み可否を定める」など、運用の前提を明確にすると安心して使いやすくなります。
加えて、周知方法も重要です。ルールを明文化して終わりではなく、社内ポータルや掲示でいつでも確認できる状態にしておくと、運用のぶれを防げます。導入後は、実態に合わせた見直しも必要です。利用率や困りごとを定期的に確認し、ルールを更新することで、場の目的であるコミュニケーション促進を維持しやすくなるでしょう。
飲まない人への配慮を忘れない
交流の場を機能させるためには、「お酒を飲まない人も主役になれる設計」が欠かせません。飲まない理由は体質、健康、宗教、妊娠・授乳、服薬などさまざまです。理由を問わず、参加しやすい環境を用意することが、組織としての配慮につながります。参加の自由を明確にし、飲酒を前提にしない運用を徹底しましょう。
具体的には、お酒と同様にソフトドリンクやノンアルコールドリンクを用意し、お酒を飲む人と飲まない人がストレスなく飲み物を選べる環境をつくることが大切です。また、会話テーマや簡単なゲームなど、お酒に依存しない交流のきっかけを準備すると、より自然なコミュニケーションを促せます。運用担当者が「飲まない選択を尊重する姿勢」を示し、「本来の目的はコミュニケーション」であると常に意識することが重要です。
交流が生まれやすい空間設計を意識する
交流の質は、空間の位置とレイアウトで大きく変わります。立ち寄りやすい場所に設けると利用率は上がりますが、執務エリアに近すぎると騒音やにおいが課題になることも忘れてはいけません。そのため、アクセス性と業務集中の両立を考えた配置が必要です。執務エリアから一定の距離を取りつつ、移動しやすい位置を選ぶのが基本になります。
またレイアウト面では、滞在目的の違いに対応することが大切です。短時間で話したい人向けのハイテーブル、落ち着いて話したい人向けの着席エリアなど、複数の使い方を想定すると、利用者の幅が広がるでしょう。さらに、執務席への飲み物の持ち込みルールの設定や、片付けしやすい設備計画を組み込むなど、運用も同時に設計することが成功のポイントです。
6. お酒を楽しめる場をつくり、オフィスにコミュニケーションを!
社内コミュニケーションは、生産性や連携のしやすさだけでなく、働きやすさや組織への納得感にも影響します。働き方が多様化した今は、偶発的な会話を自然に生む仕組みを、意図して設計することが重要です。お酒を活用した場づくりは、その選択肢のひとつとして有効でしょう。
一方で、導入の成否は「飲める場をつくること」ではなく、「誰でも安心して参加できる運用を続けること」で決まります。利用ルールの明文化、飲まない人への配慮、業務への影響を抑える空間設計をそろえることで、交流の場として機能しやすくなります。また、交流の場はバーだけに限りません。社員食堂やカフェスペースなど、日常的に人が集まる場所を活用する方法もあります。
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よくある質問
Q:オフィスにお酒を飲める場を設けるメリットは何ですか?
A:主なメリットは、日常的にカジュアルなコミュニケーションが生まれやすくなること、部署を超えた偶発的な交流が生まれること、オフィスのイメージアップにつながることです。終業後にそのまま立ち寄れる場があると短時間でも交流しやすくなり、業務連携もしやすくなります。
Q:オフィスにお酒の場を設けるときのポイントは何ですか?
A:利用ルールを明確にすること、お酒を飲まない人への配慮を忘れないこと、交流が生まれやすい空間設計を意識することがポイントです。利用時間などのルールを明文化し、ノンアルコールドリンクも用意した上で、執務エリアへの影響を抑えながら立ち寄りやすい配置にすると、安心して使える場にしやすくなるでしょう。
Q:お酒を飲まない社員が疎外感を持たないようにするにはどうすればよいですか?
A:参加を任意にし、ノンアルコールドリンクやソフトドリンクを同等に用意するといいでしょう。加えて、会話テーマや軽い交流企画を準備し、飲酒の有無に関係なく楽しめる場にすると、疎外感を防ぎやすくなります。場の目的がコミュニケーションであることを明確に共有するようにしてください。
イラスト:Masaki
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