
座席運用は「固定席」が約7割!?
固定席の課題を解消する工夫と活用事例
リモートワークや多様な働き方が浸透する中、フリーアドレスやABW(Activity Based Working)といった柔軟な座席運用を導入する企業が増えています。しかしその一方で、固定席をあえて維持・活用している企業も少なくありません。
本記事では、固定席をめぐる最新の企業動向や、固定席のメリットや課題を整理したうえで、固定席の良さを活かしながら課題を解消するヒントを、実際の導入事例とともに詳しく解説します。
目次
1. 固定席はもう古い? 座席運用の最新動向
近年、働き方の多様化が進み、フリーアドレスやABW(※)といった「フレキシブルな座席運用」への注目が高まっています。とくにコロナ禍以降、リモートワークやハイブリッド勤務の普及により、「席は固定である必要がない」という価値観が企業の間で広がり、座席運用の見直しを行う企業が増加しました。こうしたフレキシブルな座席運用の導入理由には、以下のような背景があります。
※Activity Based Working...仕事の内容や目的に合わせてオフィス(オフィス外も含む)で「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方のこと
<フレキシブルな座席運用の導入理由>
- テレワークの導入で出社人数が減少したため、在籍人数の増減に対応したい
- 社内コミュニケーションを活性化したい
- 業務効率化(作業の効率化)を図りたい
一方で、オカムラが2025年に実施した調査(全国の従業員数100名以上の企業に勤務する経営層500人・ワーカー3,000人対象)によれば、現在もなお68.1%の企業が「固定席」での運用を行っており、フリーアドレスやグループアドレスを導入している企業は31.9%にとどまっています。さらに、固定席を採用している企業のうち、実に76.8%が「今後も固定席を希望する」と回答しており、固定席には根強いニーズがあります。
■現在の座席運用と今後希望する運用方法の割合

また、2021年にオカムラが実施した「職種別 コロナ禍後に希望するオフィスの座席運用」によると、職種によっても固定席を希望する割合は異なり、業務内容に応じて適した座席スタイルが変わることがわかっています。
つまり、座席運用における選択肢は多様化しており、単純に「固定席=古い」とはいえません。むしろ、企業の特性や働き方に応じて、最適な座席運用を選ぶことが重要な時代になってきているのです。
2. 固定席のメリットをおさらい
フリーアドレスやABWといった柔軟な座席運用が注目を集める中でも、固定席が長年多くの企業に採用され続けているのには、明確な理由があります。ここでは、固定席ならではの代表的なメリットについて整理します。
■固定席のメリット
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メリット |
詳細 |
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自分の席をパーソナライズできる |
固定席では、高さの合う椅子やモニターなどの環境も自分仕様に整えられるため、集中しやすく快適な作業空間がつくれる |
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周囲とのコミュニケーションが深まる |
同じメンバーと日常的に顔を合わせることで、自然と顔と名前が一致し、気軽な会話や相談が生まれやすくなる。これらが信頼関係の構築やチームの一体感につながる |
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業務が近いメンバーで連携が取りやすい |
似た業務の担当者同士が隣接することで、非公式なナレッジ共有や、ちょっとしたサポート・アドバイスがしやすくなり、チームとしての連携力が高まる |
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状況把握・マネジメントがしやすい |
上司やマネージャーがメンバーの様子や進捗状況を把握しやすく、声かけや業務フォローがスムーズに行えるため、マネジメントの効率が良い |
このように、固定席は単なる「場所の確保」ではありません。集中しやすい作業環境の維持や、チーム内でのコミュニケーション促進、スムーズな業務連携、マネジメントのしやすさなど、職場全体の働きやすさや生産性を支える重要な仕組みとなっています。
働き方が多様化する現在でも、固定席の持つメリットは、多くの企業で確かな価値を発揮し続けているのです。
3. 固定席の課題に立ち向かう! メリットを活かす固定席の活用事例
多くのメリットがある固定席ですが、もちろん課題も存在します。例えば、固定席には以下のような課題があります。
■固定席によくある課題
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課題 |
詳細 |
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オフィスの空間効率が下がる |
すべての社員分の席を常に確保する必要があるため、出社率が低い職場では使われない席が増えやすい |
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部署を超えた交流が生まれにくい |
固定席では決まった人とだけ接する傾向が強くなり、他部署との偶発的な会話やつながりが生まれにくい |
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働き方の自由度が低い |
その日の気分や業務内容に応じて場所を選べないため、集中したい日・対話したい日などに柔軟に環境を変えることができない。席の位置によっては、不満やモチベーションの低下につながることもある |
固定席には多くの利点がある一方で、空間効率や働き方の柔軟性、コミュニケーションの幅といった点で、いくつかの課題もあります。とくに出社率が低い職場では、使われない席が増えてしまい、空間の無駄が生まれやすくなります。そのため、固定席は出社率の高い企業に適した座席運用のスタイルといえるでしょう。
また、「部署を越えた交流が生まれにくい」「働く場所の自由度が低い」といった固定席特有の課題については、ABWを取り入れることで解消できるケースもあります。
ここでは、固定席のメリットを活かしつつ、課題を工夫で乗り越えている企業の実際の事例をご紹介します。
<固定席を活かしている企業事例>
- 多目的エリアやカジュアルなミーティングスペースの併設でコミュニケーションを活性化
- 固定席中央に設置された「Xエリア」がコミュニケーション活性化のカギに
- 部門内の連携強化と部門外とのコミュニケーション活性化を実現する2フロアオフィス
- 固定席のところどころにABWスペースを設置し、働く席を選べるオフィスに
多目的エリアやカジュアルなミーティングスペースの併設でコミュニケーションを活性化

ハニューフーズ株式会社 様では、固定席を基本とした執務エリアにおいても、集中とつながりの両立を図る空間設計がなされています。執務室には広めの通路が確保されており、席の間隔も適度に保たれているため、個人が集中しやすい環境が整っています。部長席は窓際に配置され、チーム全体の動きを見渡しやすいレイアウトになっているのも特徴です。

固定席のそばにはファミレス席やスタンディングミーティングスペースが併設されており、ちょっとした打ち合わせや相談が気軽に行えるようになっています。


隣接する多目的室は、打ち合わせや休憩のほか、イベントなどにも活用できる柔軟なスペース。窓際には1人で過ごせるスペースやカウンターもあり、リラックスできる雰囲気の中で、部署を越えた自然なコミュニケーションが生まれています。
固定席の集中環境を活かしながらも、さまざまなワークシーンに対応する空間を組み合わせることで、固定席のデメリットを補完し、つながりと柔軟性を生み出している好例です。
つながりが広がる固定席。企業の進化を象徴する新本社|ハニューフーズ株式会社
固定席中央に設置された「Xエリア」がコミュニケーション活性化のカギに

株式会社YEデジタル 様では、2拠点あった事業所を統合し、180名の社員が1フロアで働ける固定席の執務室を構築しました。座席はすべて固定席で、部門ごとに島が分かれています。通路を広くとっているので、歩く人の動きも気になりません。

執務室の中央にはXの形をしたカウンターを中心に、コーヒーマシンや電子レンジ、軽食販売機などが配置されており、ランチや休憩時に多くの社員が集まるスペースとなっています。

窓際には生木が配置された大型ソファ席が設置され、リラックスできる空間が広がっています。視線が気にならない設計になっているため、雑談・休憩・業務など幅広く使えるマルチスペースとして活用可能です。
固定席で分かれた島をつなぐようにフロア中央に「交流のハブ」を配置することで、部門を越えた偶発的なコミュニケーションを促進しています。
居抜き物件をカスタマイズして「自社らしさ」を追求|株式会社YEデジタル
固定席のところどころにABWスペースを設置し、働く席を選べるオフィスに

株式会社エフオン 様では、基本は固定席としながらも、オフィスの随所にABWスペースを分散配置することで、自由度のある働き方を実現しています。


固定席にはパーティションを設置し、集中しやすい作業環境を確保。より静かな環境で集中したい場面では、オフィスの一角に設けられたパーソナルソファ席に移動して作業することが可能です。さらに、オフィス中央に配置されたユーティリティスペースには、複合機や作業台、掲示板などが揃っており、備品を取りに来た社員や通りすがりの社員同士の偶発的なコミュニケーションが生まれる場となっています。
固定席を維持しつつ、ABWの要素を取り入れることで選べる働き方を実現し、社内のつながりや生産性向上に寄与している好例です。
部門内の連携強化と部門外とのコミュニケーション活性化を実現する、2フロアオフィス

小泉産業株式会社 様では、「執務フロア」と「コミュニケーションフロア」の2つのフロアに分けた運用で固定席の課題を解消した点がポイントです。機密情報を扱う業務の性質上、社員一人ひとりに固定席を割り当てる必要があるため、執務フロアでは部門内での連携を強化しつつ、生産性を高める空間設計がなされています。

執務室の中央にミーティングスペースや複合機、文具などの共有物を集約しました。これにより、自然と人が集まりやすく、部門内でのちょっとした相談や連携が生まれる仕掛けになっています。


もう一方のフロアは、「コミュニケーションフロア」として設計されています。ここにはコーヒーマシンのあるカフェカウンターや、多様な形式の打ち合わせ席、囲われたソロワーク席などを配置。集中したいときや気分転換したいとき、長時間作業でアイデアが浮かばないときでも、気軽に環境を変えることができます。
用途ごとにフロアを分けることで、固定席の課題を補いながら、業務と交流の両立を実現した事例です。
固定席&コミュニケーションエリアが高める従業員エンゲージメント|小泉産業株式会社

4. 固定席+ABWを導入する際の注意点
固定席を効果的に導入・運用するためには、ABWとの併用がカギとなります。固定席を導入する際は、以下の4つの点に注意しましょう。
<固定席+ABWを導入する際の注意点>
- 通常よりも広いオフィス面積が必要になる
- 出社状況や業務特性に応じてスペースの比率を検討する
- ガイドライン・運用ルールを整備する
- 使い方を明示しないと定着しにくい
通常よりも広いオフィス面積が必要になる
固定席を導入する場合は、全社員分の座席を常設する必要があるため、一定のオフィス面積を確保しなければなりません。また、固定席に加えてABWスペースを併設する場合は、それよりもさらに広いオフィス面積が必要です。
狭い空間で両方を取り入れようとすると、それぞれの良さが発揮されず、使いにくいレイアウトになってしまうおそれがあります。レイアウト設計の初期段階から、席の数・配置・共用エリアの広さを明確にし、面積に見合ったゾーニングを行うことが重要です。
出社状況や業務特性に応じてスペースの比率を検討する
固定席を運用する際は、出社状況や業務特性に応じて席数やエリア構成のバランスを取ることが重要です。例えば、テレワークや外出が多く出社頻度が低い部署に全員分の固定席を確保してしまうと、空席が増えてスペース効率の低下につながります。
一方で、機密性の高い情報を扱う部署や紙の資料を多く扱う業務、密な連携が必要なチームなどの出社頻度が高い職種では、固定席の確保が業務効率に直結します。出社状況や業務特性に応じて、固定席とフリーアドレス、共有スペースの比率を柔軟に検討しましょう。
ガイドライン・運用ルールを整備する
ABWスペースを導入する際は、「自由に使える場所」であると同時に、誰もが安心して利用できるルールやマナーの整備が欠かせません。「自由に使ってよい」とだけ伝えてしまうと、社員が使い方に戸惑ったり、セキュリティリスクが生じたりすることもあります。
例えば、「このスペースでは電話OK」「この席は集中作業用」「ここでは飲食も可能」といったように、スペースごとの使い方をあらかじめ明示しておくと、利用する側も迷わず行動しやすくなります。また、機密性の高い資料を扱う場合や、ノートPCの持ち込みなどについても、ルールを定めておくと安心です。
利用が始まった後もルールを定期的に見直すことで、ABWスペースが組織全体に定着しやすくなるでしょう。
使い方を明示しないと定着しにくい
多くの企業で見られるのは、せっかくABWスペースを設置しても使われないケースです。これは、「このままで困っていないから」「周囲の目が気になる」など、無意識の遠慮や現状維持の心理が背景にあります。特に、長年固定席での働き方に慣れている社員ほど起こりやすいでしょう。
そのため、導入時には「いつ・誰が・どのように使っていいのか」を具体的に伝える工夫が必要です。例えば、イントラネットでの活用例を紹介したり、使い方を示すPOPを置いたり、利用シーン別の説明会などを実施して利用イメージを伝えたりすることが重要です。

また、「実際に使ってみた社員の声」や「こんな場面で便利だった」という体験談の共有も効果的です。日常的に「自分も使っていいんだ」と思えるきっかけを増やすことで、ABWスペースが"使える空間"から"使いたくなる空間"へと変わっていきます。
5. 固定席の価値を見直し、自社に合った座席運用を考えよう
近年は、フリーアドレスやABWといった柔軟な働き方が注目されがちですが、固定席にも根強いニーズがあり、多くの企業が引き続き活用しています。特に、出社率が高く、密な連携や機密情報の取り扱いが求められる現場では、固定席の良さが発揮されやすいでしょう。
一方で、固定席には空間効率や自由度、コミュニケーションの面で課題もあります。そうしたデメリットに対しては、ABWスペースや共有エリアを併設するなど、空間設計や運用の工夫によって解消することが可能です。
オフィスづくりで重要なのは、他社の導入事例や流行に流されず、自社の働き方や業務内容に合った座席運用を見極めることです。固定席か、フリーアドレスか、ABWか、答えは一つではありません。本記事で紹介した事例やポイントを参考にしながら、自社にとって最適な働き方やオフィス環境を考えるきっかけにしてください。
オカムラの無料診断ツール「OFFICE KIT」では、簡単なステップで理想のオフィスを考え始めることができます。ぜひこちらもご活用ください。
よくある質問
Q:固定席とフリーアドレス、どちらが今の主流ですか?
A:近年はフリーアドレスやABWの導入が進んでいますが、オカムラの2025年の調査では68.1%の企業が現在も固定席を採用しており、そのうちの76.8%が今後も継続を希望しています。企業ごとに運用スタイルは多様化しており、固定席のニーズも依然高い状況です。
Q:固定席にはどんなメリットがありますか?
A:固定席は、自分専用の席を自分好みに整えられるため、集中しやすく快適に働けるメリットがあります。また、同じメンバーと日常的に顔を合わせることで、自然と会話や相談が生まれやすくなり、チーム内の連携やフォローもしやすくなります。
Q:固定席のデメリットは、どのように解消できますか?
A:部署間の交流不足や自由度の低さといった課題は、ABWスペースや多目的エリアを併設することで補うことができます。実際に多くの企業が、固定席とABWを組み合わせたレイアウトで、柔軟な働き方とコミュニケーションの促進を実現しています。
Q:固定席を導入する際に気をつけることはありますか?
A:出社率や業務特性など、自社に合わせた適切な座席運用を検討することが重要です。加えて、ABWスペースを併設する場合は、スペースの確保やガイドライン・ルールの整備、使い方の周知などが求められます。
イラスト:Masaki
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