オフィスづくりのコラム
COLUMN
フレキシブルオフィスとは?
市場規模、メリット、活用例などを解説
働き方改革の推進やテレワークの普及が進み、オフィスの在り方は大きく変化しています。その中で注目されているのが、契約形態を柔軟に選べる「フレキシブルオフィス」です。
しかし、フレキシブルオフィスは、コスト削減や働き方の多様化への対応など企業にとって多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
この記事では、フレキシブルオフィスの定義や注目されている背景、市場規模、メリット・デメリット、さらに活用例を解説していますので、導入を検討する際の参考にしてください。
<目次>
1. フレキシブルオフィスとは? 注目されている理由
フレキシブルオフィスとは、「柔軟に利用できるオフィス」の総称であり、利用者のニーズに応じてスペースや契約条件を柔軟に調整できる点が大きな特徴です。短期契約や部分的な利用が可能で、必要なときに必要なだけのスペースを選択できます。
代表的な形態には、「コワーキングスペース」「レンタルオフィス」「シェアオフィス」の3つがあります。以下の表にそれぞれの特徴をまとめました。
■代表的なフレキシブルオフィスの違い
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形態 |
スタイル |
特徴 |
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コワーキングスペース |
共用型 |
複数の企業や個人が共用のスペースを利用するオープン型オフィス。自由席(フリーアドレス)が多く、他業種との交流が生まれやすいのが特徴 |
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レンタルオフィス |
専有型 |
家具やインターネット環境が整った個室を、短期または月単位で利用できるオフィス。プライバシーや集中環境を確保しやすく、少人数の企業に向いている |
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シェアオフィス |
ハイブリッド型 |
自社専用の個室やデスクを持ちながら、会議室・受付・ラウンジなどを他社と共用できるオフィス。プライバシーを守りながら他社との交流性も両立できるのが特徴 |
これらの形態はいずれも、必要なときに・必要なスペースを柔軟に利用できる点が共通しています。自社で長期契約を結んでオフィスを構えるよりも、コストを抑えながら機動的に事業を展開できるのが最大のメリットです。
また、専有型のオフィスでは、「可動式パーティション」や「フリーアドレス制」を導入することで、固定席にとらわれない柔軟なレイアウト運用が可能になります。チーム構成の変化やプロジェクトごとの編成に応じて、最適な空間設計を自社の判断で実現できる点が大きな強みです。
近年は、テレワークの普及や働き方改革の推進などにより、企業にはオフィスの使い方を柔軟に見直す対応が求められています。こうした流れの中で、事業規模や働き方の変化に応じて自在に対応できるフレキシブルオフィスが注目を集めており、コスト最適化・人材確保・ワークスタイルの多様化対応といった観点からも、有力な選択肢のひとつとして注目を集めているのです。
2. フレキシブルオフィスの市場規模

フレキシブルオフィスの市場は、近年急速に拡大しています。ザイマックス総研が公表した「フレキシブルオフィス市場調査2025」によると、2025年時点で首都圏のフレキシブルオフィス件数は2,137件に達したとされています。これは関西圏のおよそ6倍に相当し、特に東京23区内には1,777件と、都心部に集中している状況です。
以下は東京23区内におけるフレキシブルオフィス件数の推移です。
■2020~2025年のフレキシブルオフィス件数の推移(東京23区内)
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年 |
件数 |
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569件 |
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762件 |
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1,080件 |
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1,260件 |
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1,437件 (首都圏1,724件) |
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1,777件 (首都圏2,137件) |
出典:ザイマックス総研の研究調査「フレキシブルオフィス市場調査」2020~2025年をもとに作成
東京23区内では、2020年の569件から2025年の1,777件へと、5年間で件数は約3倍に増加しました。首都圏で見ても、わずか1年間で約400件増加するなど、勢いは衰えることなく拡大し続けています。
3. フレキシブルオフィスのメリット

フレキシブルオフィスには、コスト面や働き方の柔軟性など、企業にとって多くのメリットがあります。ここでは、代表的な4つのメリットについて解説します。
<フレキシブルオフィスのメリット>
- コスト削減につながる
- 柔軟な働き方を支援できる
- 立地の自由度が高い
- 成長ステージに合わせられる
コスト削減につながる
フレキシブルオフィスの最大の魅力のひとつが、コスト削減です。
一般的な賃貸オフィスでは、入居時に内装工事や家具・什器の購入といった初期費用が発生しますが、フレキシブルオフィスの多くは、すでに業務に必要な設備やインフラが整っており、初期投資を大幅に抑えることができます。さらに、利用人数や期間に応じた料金体系を採用している施設も多く、必要な分だけスペースを借りられるため、無駄な固定費がかかりません。
例えば、新規プロジェクトチームが一時的に専用スペースを確保したい場合や、スタートアップ企業が小規模から業務を始めたい場合にも、経済的な負担を最小限に抑えた運用が可能です。このように、コスト効率の高い運用を実現できる点は、企業規模を問わず大きなメリットといえるでしょう。
柔軟な働き方を支援できる
働き方が多様化する中で、柔軟に働ける環境を整えることは企業にとって重要な課題となっています。フレキシブルオフィスは、個人の勤務スタイルやチームの業務内容に応じて柔軟に利用できるのが特徴です。
在宅勤務を基本としつつ、必要なときだけ出社するハイブリッドワークや、プロジェクト単位でのオフィス利用など、さまざまな働き方に対応できます。例えば、週の半分は自宅で勤務し、残りはフレキシブルオフィスでチームと顔を合わせながら働くという形態であれば、業務効率を維持しながら、通勤時間やストレスを軽減できるでしょう。多様化する働き方に柔軟に対応できる環境は、従業員満足度や生産性の向上にもつながります。
立地の自由度が高い
フレキシブルオフィスは、立地の選択肢が非常に豊富であることも魅力です。多くのフレキシブルオフィスは、都心部や主要駅近くといった好立地に展開されており、従来の賃貸オフィスでは手が届かないエリアにも拠点を構えることができます。
アクセス性の高い場所にオフィスを設けることは、従業員の通勤負担を軽減できるだけでなく、クライアントとの打ち合わせや商談にも便利です。例えば、営業チームが主要駅近くのオフィスを利用することで、移動時間を短縮し、訪問件数の増加や対応スピードの向上が期待できます。立地の自由度は、業務効率はもちろん、ブランドイメージの向上にもつながるでしょう。
成長ステージに合わせられる
企業の成長に応じて、オフィス規模をスムーズに拡張・縮小できるのも、フレキシブルオフィスの大きな強みです。従来の賃貸オフィスでは、契約期間の縛りや、解約・移転に伴う手間や費用がかかるのが一般的でした。しかしフレキシブルオフィスなら、必要に応じてスペースの拡張・縮小が柔軟に行えるため、成長フェーズに応じた最適なオフィス運用が可能になります。
例えば、5人規模のスタートアップが、半年後に10人、1年後には20人へと拡大していく過程において、段階的にオフィススペースを広げていくことができます。反対に、プロジェクト終了に伴って規模を縮小する際もスムーズです。
このように、変化に対応しやすい運用体制は、企業の成長を後押しするだけでなく、運営コストや業務への影響を最小限に抑えることにもつながります。
4. フレキシブルオフィスのデメリット
多くのメリットを持つフレキシブルオフィスですが、導入にあたっては注意すべき点や、企業の方針によってはデメリットとなり得る要素も存在します。ここでは、代表的な2つの懸念点について解説します。
<フレキシブルオフィスのデメリット>
- 機密性・セキュリティ面の懸念
- 内装やブランドイメージの統一が難しい
機密性・セキュリティ面の懸念
フレキシブルオフィスは、シェア型の空間が多く、他社と共用のスペースを利用するケースも一般的です。そのため、自社単独のオフィスに比べて、情報漏洩や業務上のプライバシー確保といったセキュリティ面でのリスクが高まる可能性があります。
特に、顧客情報や開発中の技術情報など、機密性の高いデータを取り扱う業務では、外部の視線や盗聴への対策が不可欠です。フレキシブルオフィスを利用する場合は、個室の利用や情報管理ルールの徹底、暗号化通信の導入など、自社でセキュリティを補完する体制を整える必要があります。
安心して業務を行うためには、施設選びの段階で、セキュリティ対策がどの程度整っているかを確認することが重要です。
内装やブランドイメージの統一が難しい
フレキシブルオフィスでは、内装や設備が既に完成されており、自由にレイアウトを変更することが難しい場合があります。そのため、自社のブランドイメージやカルチャーを空間に反映させたいと考える企業にとっては、制約を感じることもあるかもしれません。
特に来客対応や採用活動においては、オフィス空間が企業の第一印象を左右する重要な要素となるため、自社らしさを伝えにくい点はデメリットになり得ます。また、専有スペースであっても内装変更が制限されるケースもあるため、契約前にカスタマイズの可否を確認することが大切です。
自社のブランディング戦略や企業文化との整合性を保つためにも、フレキシブルオフィスを選定する際には、デザインやカスタマイズの柔軟性にも目を向けましょう。
5. フレキシブルオフィスの活用例

フレキシブルオフィスは、企業の規模や目的に応じてさまざまな使い方が可能です。ここでは、具体的なユースケースとして4つの活用パターンを紹介します。
<フレキシブルオフィス4つの活用例>
- CASE1:スタートアップ企業で成長に合わせた活用
- CASE2:サテライト拠点としての利用
- CASE3:プロジェクトチームでの一時利用
- CASE4:働き方の選択肢を広げるための活用
CASE1:スタートアップ企業で成長に合わせた活用
まだ人数の少ない創業初期のスタートアップでは、できるだけ固定費を抑えた小規模なオフィスが求められます。フレキシブルオフィスを活用すれば、必要最低限のスペースを低コストで確保できるため、限られた資金をプロダクト開発や採用活動など、より重要な領域に集中できるでしょう。
事業が成長し人員が増加した際には、段階的に広いスペースへと移行することができるため、無理のないオフィス運用が実現できます。
CASE2:サテライト拠点としての利用
本社以外の地域に拠点を設けたいものの、常設オフィスを構えるほどではない場合でも、フレキシブルオフィスは有効です。地方都市や海外拠点などにおいて、一時的な営業活動や出張対応の拠点として、短期契約で柔軟に利用することができます。
例えば、地方のクライアントと定期的に打ち合わせを行う企業であれば、移動時間の削減と現地対応力の強化を両立することが可能です。
CASE3:プロジェクトチームでの一時利用
短期間で集中して進めるプロジェクトにおいて、既存オフィス内でスペースを確保するのが難しい場合にも、フレキシブルオフィスは有効です。半年〜1年程度の期間で独立した作業環境を確保することで、チームの集中力や生産性を高めることができます。
特に新規事業や開発業務では、周囲からの干渉を避けながらスピーディに意思決定を進めることが求められるため、こうした一時的な専用スペースは大きな価値を発揮します。
CASE4:働き方の選択肢を広げるための活用
テレワークが主流となった現在でも、対面でのコミュニケーションが必要な場面は少なくありません。フレキシブルオフィスを導入することで、自宅勤務を基本としつつ、会議やチーム作業が必要な日にだけ出社するという柔軟な働き方が可能です。
通勤時間を削減しながらも、必要なときには快適な業務環境を確保できるため、社員の満足度向上や定着率の改善にもつながります。
6. 事業成長に合わせて選べるオフィス環境|「NovolBa」
フレキシブルオフィスを検討する際には、専用サービスを取り入れてみるのも選択肢のひとつです。
例えば企業の成長や事業のステージに応じてオフィスや家具を提供するサービス「NovolBa」では、企業の成長段階に合わせてスペースを拡張・縮小できる仕組みが整えられており、立ち上げ期から事業拡大期、さらには再編の局面まで幅広く活用できます。
自社オフィスを持ちたいけれど、「手間をかけたくない」「イニシャル費用がかけられない」「増員予定で数年後には手狭になる見込み」など、既存の賃貸物件と条件があわない方向けに、フレキシブルオフィスと賃貸オフィスのいいとこどりをしたようなサービスです。
家具や設備が整った環境をすぐに利用できるため、新規事業の立ち上げや短期プロジェクトでも負担を抑えてオフィスを用意できるのもメリットです。フレキシブルオフィスをどう活用するかを考えるうえで、こうしたサービスを知っておくと選択肢の幅が広がるでしょう。
7. フレキシブルオフィスが企業の成長を支える
フレキシブルオフィスは、働き方の多様化や事業環境の変化に柔軟に対応できる新しいオフィスのかたちとして注目を集めています。
コスト削減、柔軟な働き方の実現、好立地での展開、そして企業の成長に応じた段階的な利用など、多くのメリットを備えている一方で、セキュリティやブランドイメージの面では課題も存在します。だからこそ、自社の業務スタイルや将来の成長戦略に照らし合わせて、どのようなシーンでフレキシブルオフィスが効果を発揮するかを整理することが大切です。
働き方が多様化する中で、オフィスに求められるのは、単なる業務効率だけでなく、社員一人ひとりがいきいきと働ける環境です。フレキシブルオフィスは、柔軟な働き方を支えつつ、心身の快適さや心理的安全性にも配慮した空間づくりの第一歩になります。
以下の資料では、ウェルビーイングな環境を実現するヒントをご紹介しています。オフィスづくりの参考にしてください。
よくある質問
Q:フレキシブルオフィスとは何ですか?
A:フレキシブルオフィスは、「柔軟に利用できるオフィス」の総称です。コワーキングスペース・レンタルオフィス・シェアオフィスなど利用者のニーズに合わせて使える多様な形態のオフィスを指します。
従来の賃貸オフィスが「長期契約・固定スペース」を前提としているのに対し、フレキシブルオフィスは 短期契約や小規模利用が可能で、必要なときに必要な分だけ使えるのが大きな特徴です。
Q:フレキシブルオフィスは、どのような用途で利用されるのですか?
A:フレキシブルオフィスは、スタートアップの立ち上げ期や、新規事業・短期プロジェクトの拠点としてよく利用されます。また、サテライトオフィスとして地方に拠点を設けたい場合や、在宅勤務だけでは不足する設備や集中環境を確保したい場合にも活用されています。働き方改革やテレワークの広がりに伴い、「必要なときに必要な場所を利用できる柔軟性」が評価され、さまざまなシーンで導入が進んでいます。
Q:フレキシブルオフィスのメリット・デメリットを教えてください。
A:フレキシブルオフィスは、初期費用を抑えつつ、利用するスペースや期間を柔軟に調整できるのが大きなメリットです。家具や設備が整っているためすぐに業務を始められるほか、短期利用や拠点の拡張などにも対応しやすいでしょう。
一方で、共用スペースではセキュリティ確保が課題になる場合があり、内装やレイアウトの自由度も限られます。自社の目的や運用方針に合った形態・オフィスを選ぶことが重要です。
イラスト:Masaki
