
避難安全検証法とは?
オフィス移転前に知っておきたい基礎知識
オフィス工事をする際は、原則として建築基準法で定められた仕様にしなければいけません。ただし、避難安全検証法と呼ばれる規定を適用すると、排煙設備や内装制限といった建築基準法の規定を一部除外でき、従来の規定よりも柔軟なオフィス空間をつくることができます。
避難安全検証法には種類があり、それぞれ検証方法が異なります。そのため、工事の計画を立てる前に既定の内容を十分に知っておくことが大切です。
この記事では、避難安全検証法の概要や種類、適用する場合の注意点についてご紹介します。
目次
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早めの計画が肝心? 避難安全検証法とは?
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ルートA・ルートB・ルートCの違い
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ルートCビルのメリット・デメリットと注意すべきポイント
- まとめ
1. 早めの計画が肝心? 避難安全検証法とは?
建築物を建築するうえでの敷地・構造・設備・用途の最低基準は、建築基準法によって定められています。しかし、避難安全検証法を適用して、定められた計算式に則って算出・検証することにより、排煙設備や内装制限といった建築基準法で定められた一部を適用除外できます。

建築基準法には「仕様規定」と「性能規定」の2種類の規定があります。仕様規定が定める内容をそのまま適用させるものであるのに対し、性能規定は同法に記載されている性能基準を満たすものです。このうち、避難安全検証法は「性能規定」に該当します。
性能規定を適用することでプランの自由度が向上し、従来の仕様規定では難しかったデザイン性の高いオフィスビルの建築や内装仕上げの施工の選択肢が広がりました。
ただし、適用できる規定はビルごとに定められており、入居者が自由に選択できるものではありません。工事計画や検証の内容によっては、多額の検証コストや、レイアウトの変更・修正に時間がかかるケースもあるため、入居予定のビルの規定を早めに確認しておきましょう。
2. ルートA・ルートB・ルートCの違い

建築物を建てる際の安全の申請方法は、「ルートA」「ルートB」「ルートC」の大きく3種類に分かれています。ルートAは建築基準法の仕様規定に則った設計方法で建てられたもの、ルートBとルートCは性能規定に則って建てられたものです。そのほか、検証方法、確認・審査方法に違いがあります。
■ルートAとは?
建築基準法で定められた仕様をそのまま適用する「仕様規定」にもとづいて設計された建築物が対象です。審査・認定を行うのは、指定確認検査機関・建築主事です。
■ルートBとは?
建築基準法の「性能規定」にもとづいて設計された建築物が対象です。国土交通省が制定する告示で定められた避難安全検証法を利用して検証し、指定確認検査機関・建築主事が確認・審査を行います。なお、ルートBはさらに「ルートB1」「ルートB2」に分けられます。この2つは告示で定められた計算式が異なり、規定を満たしやすい部屋の特徴に違いがあります。
ルートB1は、天井が高い部屋や床面積が広い部屋など、大きな部屋のほうが規定を満たしやすい傾向があります。一方で、ルートB2は空間が狭い部屋のほか、内装種別について検証結果への影響がルートB1と異なることから、ルートBと比べて内装に木材を使用している部屋も規定を満たしやすくなっています。
■ルートCとは?
ルートBと同じく「性能規定」にもとづいて設計された建築物が対象です。避難時間や避難時間や煙降下時間を独自の計算方法でシミュレーションするため、国土交通省によって制定された告示に適合させるルートBよりも、デザインや建築設計における自由度が高まります。ただし、ルートCでは国土交通大臣の認定が必要なうえ、指定専門機関以外では検証できないため、時間やコストがかさむ可能性があります。シミュレーション方法や設計ルールは建物ごとに異なる点にも注意が必要です。
3. ルートCビルのメリット・デメリットと注意すべきポイント
ルートCはほかの設計方法と異なり、独自の計算方法でシミュレーションする点に大きな特徴があります。では、こうした特徴があることは、実務的にどのような違いがあらわれてくるのでしょうか。
以下では、ルートCビルのメリット・デメリットや、工事を行ううえで注意すべきポイントについて解説します。
■ルートCビルのメリット・デメリット
ルートCのビルの設計方法には独自の計算方法を用いるため、自由度が高く、施工の選択肢が広がります。一方で、時間的・経済的コストがかかることも考慮しておかなければなりません。オフィス移転を検討している場合は、移転工事にかけられる期間や費用、人的リソースを把握し、計画を無理なく進められるようにしましょう。
| メリット | デメリット |
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■ルートCビルで工事を行う際に注意すべきポイント
ルートCのビルでの工事を行う場合は、時間的・経済的コストがかかりやすく、事前準備が不足していると思わぬトラブルに発展することがあります。以下のポイントに留意して進めましょう。
point 01 適切なスケジュール設定と綿密な管理が大切
オフィス移転をする際には「物件選定・確保」から「オフィス設計」「工事調整」「入居工事」「引越し」に至るまで、数多くの工程を踏まなければいけません。このうち「入居工事」に至るまでの期間は、ルートごとに大きく異なります。性能設計を採用したうえで高度な検証を必要とするルートCでは移転完了までの期間が、ルートAに比べて2カ月以上長くなるケースもあるため、スケジュール・計画をあらかじめ綿密に練っておくことが大切です。
point 02 できるだけ早めに情報収集を
入居が決まったら、なるべく早い段階で管理会社とコンタクトをとり、避難安全検証にかかる費用やスケジュールを大まかに確認しておきましょう。事前の情報共有のほか、過去にNGだった設計をあわせて確認しておくことも、スムーズな検証につながります。
point 03 天井まで区画する壁の位置や数に注意
オフィス内を区画する個室の数が多いほど避難ルートや時間が複雑になるため、避難安全検証に時間を要する可能性があります。とくに天井まで区画する壁は排煙計算に大きく影響し、想像以上に時間がかかるケースも。ローパーティションなど上部開口を設けた壁で区切ると、検証時間の短縮につながります。個室の数はなるべく少なくし、オープンミーティングスペースやワークブースなどの家具で代用することも選択肢の一つです。

4. まとめ
建築物の設計方法や検証方法、確認・審査方法は、建築物ごとに異なります。ルートCのビルではデザイン性の高いオフィス空間づくりを実現しやすい一方で、ほかの方法と比較して時間とコストがかかるため、オフィスづくりの担当者さまの通常業務を大きくひっ迫する可能性があります。
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イラスト:Masaki
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