
フリーアドレスとは?
目的や事例、失敗しない運用のポイント
働き方改革やテレワークの広がりを背景に、社員が自由に好きな席で働ける「フリーアドレス」を導入する企業が増えています。オフィス面積の有効活用や部署を越えたコミュニケーションの促進など、フリーアドレスには多くのメリットがある一方で、導入に不安を抱えている企業も少なくないでしょう。
この記事では、フリーアドレスの基本的な定義やABW(Activity Based Working)との違い、導入が広がっている背景、企業が期待する効果、導入時のステップ、運用を成功させるポイント、さらには実際の導入事例まで詳しく解説します。
<目次>
1. フリーアドレスとは?
フリーアドレスとは、社員がオフィス内の好きな席で仕事ができる仕組みのことです。出社人数に応じて柔軟に席を選べるため、オフィス面積の有効活用やコスト削減につながるほか、コミュニケーションの活性化、ペーパーレスの推進など、さまざまな効果が期待されています。
従来の固定席と比べると、働き方やオフィス環境に以下のような違いがあります。
■固定席とフリーアドレスの特長比較
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固定席 |
フリーアドレス |
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コミュニケーション |
・部署内のコミュニケーションや一体感が生まれやすい ・人を覚えやすい、探しやすい |
・部署を越えたコミュニケーションが促進されやすい |
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業務効率 |
・自分に適した形に作業環境を整えられる |
・オフィスにいる人数に合わせて適正な作業環境をつくれる |
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オフィス環境 |
・紙資料や備品を個人ごとに安全に管理できる ・社員数に応じた面積(席数)が必要 |
・共有資料がクラウド上で管理され、ペーパーレス化が促進する ・出社率に合わせて席数を最適化できる |
固定席とフリーアドレスの比較や適正について、くわしくは以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。
2. フリーアドレスとABWの違い
フリーアドレスと混同されやすい考え方に「ABW(Activity Based Working)」があります。どちらも固定席を持たないという点では共通していますが、運用の範囲や目的には明確な違いがあります。
<フリーアドレスとABWの違い>
- フリーアドレス:座席を自由に選べるようにする「席の運用方法」
- ABW:業務の目的や内容に応じて働く場所を選べるようにする「働き方」
フリーアドレスは、日によって異なる席で働ける仕組みであり、オフィスの省スペース化やコミュニケーションの活性化を目的としています。一方、ABWは業務の目的や内容に応じて、最適な場所を自分で選んで働くスタイルです。
例えば、以下のように業務に応じて働く環境を自由に選べるのがABWの特長です。
<ABWの例>
- 集中して資料を作成したいときは「静かな個室ブース」
- チームで議論やブレストをしたいときは「オープンスペース」
- リラックスしながらアイデアを練りたいときは「カフェエリアやラウンジ」
つまり、フリーアドレスが「席の自由」である一方、ABWは「働く場所と方法の自由」を意味し、より包括的で柔軟な働き方といえます。
3. フリーアドレスを導入する企業は年々増加
フリーアドレスという概念は1980年代後半から存在していましたが、近年では働き方改革やテレワークの普及を背景に、より柔軟な働き方に対応できるオフィス環境の一つとして、一般化しつつあります。

実際に、オフィスづくりを手がけるオカムラが優良オフィス(日経ニューオフィス賞の応募資格に該当するオフィス)を対象に行った調査によると、2014年〜2023年の10年間で、一部または全面的にフリーアドレスを導入している企業の割合は23.5%から75.0%へと大幅に増加しています。
こうした結果からも、フリーアドレスは一過性の流行ではなく、新たなオフィスのスタンダードとして定着し始めていることが分かります。企業は空間の有効活用だけでなく、社員の多様な働き方を支援する仕組みとして、フリーアドレスを積極的に導入しているのです。
4. 企業がフリーアドレスを導入する目的は? 期待する効果
企業がフリーアドレスを導入する理由は、単に席を自由にすることではありません。働き方の多様化やオフィスコストの見直しを背景に、より戦略的な目的を持って導入されています。

オカムラが2023年3月に実施した調査では、企業がフリーアドレスを導入しようとした理由として、上記のような結果が出ました。特に多かった上位5つの目的について、以下でくわしく説明します。
<フリーアドレスを導入しようとした理由5つ>
- オフィス面積の最適化
- 部門を越えたコミュニケーションの活性化
- 社員の自律的な働き方を促す
- 社員エンゲージメントの向上
- 部門内のコミュニケーション活性化
オフィス面積の最適化
テレワークやリモートワークの浸透により、「常に全社員が出社することがなくなった」という状況もあるのではないでしょうか。以前のように社員数と同じだけの席を用意しているものの使われず、無駄なスペースが発生しているケースは珍しくありません。
フリーアドレスは、実際の出社人数に応じて柔軟に席数を調整できます。余剰なスペースを減らし、オフィスの縮小やレイアウト変更といった戦略的な空間設計にも対応しやすいのもメリットです。
部門を越えたコミュニケーションの活性化
部署を越えて席を自由に選べることで、普段接点のない社員同士の交流が自然と生まれやすくなります。特に、リモートワークで直接顔を合わせる機会が減った分、オフィスに出社したときに生まれる偶発的なコミュニケーションが、イノベーションや新しいアイデアの創出につながるとして注目されています。
社員の自律的な働き方を促す
フリーアドレスでは「どの席で働くか」を社員自身が選べます。例えば、静かな場所で集中したい日は人の少ない席を、同僚と意見交換をしたい日はチームの近くを選ぶといったように、その日の業務内容や気分に合わせて座席を調整できるのです。こうした小さな選択の自由が積み重なることで、社員の主体性や自律性を高める効果につながります。
社員エンゲージメントの向上
フリーアドレスでは、固定席に縛られず、自分にとって働きやすい環境をその都度選べるため、「自分で働き方をコントロールできている」という感覚が得られます。こうした裁量のある環境はストレスを軽減し、仕事への満足度を高めます。結果として、社員のモチベーションや企業への信頼感・愛着が強まり、組織に対するエンゲージメント(貢献意欲や定着意識)の向上につながります。
部門内のコミュニケーション活性化
フリーアドレスは、同じ部署内でも座席の組み合わせが変わりやすくなるため、さまざまなメンバーとコミュニケーションが生まれる機会が増えます。結果として、部門内の風通しが良くなり、部署の一体感を高める効果が期待できるでしょう。なお、部署ごとのまとまりを意識したい場合には、エリアを部署ごとに分けるグループアドレスを組み合わせるのも有効です。
これらのことからわかるように、フリーアドレスは単なる「コスト削減のための施策」ではありません。オフィス面積の最適化、部門を越えた交流の促進、社員の自律性向上、エンゲージメントの向上、部門内のコミュニケーション活性化など、幅広い目的で導入が進められています。こうした多面的な効果が期待できることから、いまやフリーアドレスは働き方改革を実現する有効な手段のひとつとして注目されているのです。
5. フリーアドレス導入の進め方
フリーアドレスを成功させるには、いきなり全社導入するのではなく、段階的に進めていくことが重要です。以下のような流れで取り組むとスムーズです。
<フリーアドレス導入の手順>
- ステップ1. 目的と方針を社員に共有する
- ステップ2. 社員を巻き込んだ検討プロセスを設ける
- ステップ3. 運用ルールを整備する
- ステップ4. 一部部署での試行導入から始める
- ステップ5. ツールの活用を検討する
ステップ1. 目的と方針を社員に共有する
固定席をなくすことに不安を感じる社員も少なくありません。まずは導入の目的や期待する効果を説明会などで伝え、理解を深めてもらいましょう。
ステップ2. 社員を巻き込んだ検討プロセスを設ける
自治会やワークショップを立ち上げ、社員が導入プロセスに参加できる仕組みをつくるのもおすすめです。自分たちで決めたルールや仕組みであれば、社員も納得して受け入れやすくなり、導入後のフィードバックと改善も前向きに進めやすくなるでしょう。
ステップ3. 運用ルールを整備する
本格導入にあたって、座席利用や荷物管理、クリアデスク(情報漏洩や情報紛失防止のため、離席や退社時に書類やUSBメモリなどを机上に放置しないルール)の徹底など、基本ルールを明文化して全員に共有します。ルールがあることで安心して利用でき、トラブル防止にもつながるでしょう。
しかし、ルールを細かく決めすぎると、かえって窮屈さを感じてしまう社員もいます。基本的なマナーやルールにとどめておくことで、社員一人ひとりが自発的に考え、主体的にフリーアドレスを運用できるようになるはずです。
ステップ4. 一部部署での試行導入から始める
全社で導入する前に、特定の部門でパイロット的に導入を行い、課題を洗い出したうえで改善を行います。その結果を踏まえ、全社展開へと広げていくことが効果的です。
ステップ5. ツールの活用を検討する
フリーアドレス導入にあたって、座席予約システムやチャットツール、個人ロッカーを活用すると、ルールの運用がしやすくなります。ツールの整備は社員が安心して利用するための基盤です。
6. フリーアドレス導入で失敗しないポイント
フリーアドレスは自由度が高い一方で、導入方法を誤ると「席が確保できない」「ルールが守られない」「情報漏洩が不安」といった問題が起きやすくなります。ここでは、導入を成功に導くために押さえておきたいポイントを整理します。
<フリーアドレスで失敗しないポイント>
- 目的の設定・共有
- 運用ルールの策定・共有
- ツールや設備の活用
目的の設定・共有
まずは「なぜ導入するのか」を明確にし、全社員に理解してもらうことが不可欠です。目的が伝わらなければ「コスト削減のためだけ」と受け止められてしまい、不満や反発を招く可能性も否定できません。説明会やガイドラインを活用し、目的を丁寧に共有することで社員の納得感を高められます。
運用ルールの策定・共有
座席利用や荷物管理といった基本的なルールを整備し、全員に徹底してもらうことが欠かせません。ルールが曖昧だと人によって判断が異なり、混乱やトラブルにつながります。
例えば、部門内のコミュニケーション不足が懸念される場合には、部門ごとに利用範囲を限定する「グループアドレス」を導入する方法があります。また、荷物管理が煩雑になりやすい場合には、業務終了時に机を片付ける「クリアデスクルール」を設ければ、美観の維持や情報漏洩防止にも効果的です。
このように、自社の課題に合わせてルールを策定し、全員で共有することが、フリーアドレスを快適かつ安全に運用するカギとなります。
ツールや設備の活用
フリーアドレスでは「毎日座れる席があるのか」「荷物や資料の置き場所がない」といった不安や不便が起こることもあります。こうした課題を放置すると、社員のストレスにつながったり、非効率を招いてしまったり、あまり良い結果にはなりません。
例えば、座席予約システムや出社管理アプリなどを導入することで、席が確保できる安心感が生まれます。また、個人ロッカーやセキュリティボックスを整備すれば、荷物や重要資料を安全に管理でき、情報漏洩のリスクも減らせるでしょう。ツールや設備は、フリーアドレスを快適かつ安全に運用するための基盤となります。
7. フリーアドレス導入事例
実際の導入事例を見ることで、フリーアドレスがどのように企業の課題解決や働き方改革につながるのかを具体的にイメージできます。ここでは、創業150年を越える老舗企業である株式会社清永宇蔵商店 様、新たな拠点で役職員を含むフリーアドレスを実現した福井コンピュータホールディングス株式会社 様の事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
<フリーアドレス導入事例>
- 面積効率と新しい文化の醸成のためにフリーアドレスを導入
- 役職員のフリーアドレスを導入、交流がアウトプットを生み出すオフィス
面積効率と新しい文化の醸成のためにフリーアドレスを導入

株式会社清永宇蔵商店 様では、次世代への事業継承と人材確保を見据え、オフィスの全面リニューアルを実施しました。固定席からフリーアドレスへの移行にあたり、多様なタイプの家具を配置し、用途に応じて使い分けられるスペースを拡充。ABWの要素を取り入れたオフィス空間を実現しました。
また、社員が自然と集まる場を設けることで、部署を越えたコミュニケーションが活性化。従来のオフィスにはなかった交流が生まれ、組織文化の刷新にもつながっています。
創業150年企業のオフィス改革。曲線を活かした"つながる"空間|株式会社清永宇蔵商店
役職員のフリーアドレスを導入、交流がアウトプットを生み出すオフィス

福井コンピュータホールディングス株式会社 様では、人材確保と社内コミュニケーションの活性化を目的に、新オフィス「Visionary Hub Fukui」を開設。役職員を含む全社員が自由に席を選べるフリーアドレスを導入し、部署を越えた交流や新たな発想を生み出す環境を整備しました。
オフィスは業務内容に応じて使い分けられるよう「コミュニケーションエリア」「ベースワークエリア」「フォーカスエリア」の3エリアにゾーニングし、執務以外にも自然と人が集まる仕掛けを取り入れ、偶発的な会話やコラボレーションを促しています。
8. 「目的・ルール・環境」を整え、フリーアドレス導入をスムーズに
フリーアドレスは、オフィス面積の有効活用やコミュニケーションの促進、働き方の柔軟化といったメリットが期待できる一方で、席の確保やルールの徹底、荷物管理などの課題も伴います。
こうした課題を乗り越えるには、導入の目的を明確にすること、運用ルールを整備・共有すること、ツールや設備を活用して安心できる環境をつくることが欠かせません。自社に合った仕組みを整えれば、フリーアドレスは単なる座席運用の工夫にとどまらず、組織文化や働き方そのものを進化させる仕組みとなります。フリーアドレスを検討する際は、制度の設計だけでなく、運用や定着までを見据えて取り組むことで効果を発揮するでしょう。
フリーアドレス導入の事例や導入企業のインタビューを掲載したダウンロード資料をご用意しております。フリーアドレスの導入を検討されている方は、ぜひこちらもご確認ください。
よくある質問
Q:フリーアドレスとABW(Activity Based Working)の違いは何ですか?
A:フリーアドレスは「座席の運用方法」に関する仕組みで、ABWは業務内容や目的に応じて最適な場所を選んで働くという「働き方」に関する考え方です。フリーアドレスが"席の自由"であるのに対し、ABWは"場所と働き方の自由"を意味し、より包括的な概念となっています。
Q:企業がフリーアドレスを導入する主な目的は何ですか?
A:オフィス面積の最適化、部門を越えたコミュニケーションの活性化、社員の自律的な働き方を促す、社員エンゲージメントの向上、部門内のコミュニケーション活性化などが代表的な目的です。コスト削減だけでなく、組織文化や働き方改革を推進するための施策として導入されています。
Q:フリーアドレスを導入する際のポイントを教えてください。
A:いきなり全社で導入せず、段階的に進めましょう。フリーアドレス導入には、「目的・ルール・環境」の3つを整えることが重要です。まず導入目的を明確にし、社員に共有することで納得感を高めます。次に、座席運用などの運用ルールを定めたら社員に共有し、全員でルールを徹底することが欠かせません。そして、座席予約システムや個人ロッカーなどのツール・設備を整えることで、不安や不便を解消し、安心して利用できる環境をつくることができます。
イラスト:Masaki
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