
ファシリティマネジメントとは?
メリットや具体的な活動例を解説
働き方改革やオフィスの多様化が進む中、企業の施設運用は大きく変化しています。ファシリティマネジメント(Facility Management)は、直訳すると「施設管理」を意味しますが、単に建物や設備を維持することにとどまりません。
オフィスや工場、店舗などの施設は、社員の働く場であると同時に、経営戦略を支える重要な経営資源です。こうした施設をどのように企画・管理・活用するかを考えるのがファシリティマネジメントであり、経営と連動した戦略的な取り組みとして、多くの企業で注目されています。
この記事では、ファシリティマネジメントの定義や目的、3つのレベル、メリット、具体的な活動内容をわかりやすく解説します。
<目次>
- ファシリティマネジメントとは?
- ファシリティマネジメントのレベル
- ファシリティマネジメントのメリット
- ファシリティマネジメントの具体的な活動は?
- ファシリティマネジメントの業務サイクル
- ファシリティマネジメントは、自社の次のステップを意識して進めることが大切
1. ファシリティマネジメントとは?
ファシリティマネジメントとは、企業や団体が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画・管理・活用する経営活動のことです。この定義は、業界の指針を示す公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)によって定められています。ここでいう「ファシリティ」とは、土地・建物・構築物・設備などのことです。これらの資産を最適な状態に保ち、経営戦略と結びつけて活用することがファシリティマネジメントの本質となります。
従来の建物や設備の維持・保全を目的とした「施設管理」とは異なり、ファシリティマネジメントは経営的な視点を含む、より包括的で戦略的なマネジメントである点が大きな特徴です。
ファシリティマネジメントの運用は総務部門が中心となって進めますが、実際には多くの場合、経理・人事・IT・経営企画など複数の部署と連携する、横断的な取り組みとなります。コスト削減や業務効率化といった成果が目に見えて現れやすいため、組織全体にメリットをもたらす活動としてやりがいを感じやすいでしょう。
2. ファシリティマネジメントのレベル
ファシリティマネジメントは、段階的に成熟していく取り組みです。公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)では、次の3つのレベルに分類しています。
■ファシリティマネジメントの3つのレベル

<ファシリティマネジメントの3つのレベル>
- 経営レベル:全ファシリティを統合的に捉え、経営戦略と結びつけて活用する段階
- 管理レベル:施設や設備の状態を改善し、効率化や低コスト化を図る段階
- 日常業務レベル:清掃・保全・修繕など、日々の運営を合理的・計画的に行う段階
この3つのレベルは、ピラミッドのように下位が上位の土台となっています。例えば、日常業務レベルの清掃や修繕といった基本が整っていなければ、効率化や低コスト化の施策を行う管理レベルに進むことはできません。自社がどのレベルにあるかを確認し、次に目指すべき段階を意識して進めていくことが、ファシリティマネジメントの実現につながります。
3. ファシリティマネジメントのメリット
ファシリティマネジメントは、単なる施設管理にとどまらず、経営基盤の強化や組織の成長を支える重要な役割を担います。ここでは、ファシリティマネジメントを行うことによって得られる5つのメリットを紹介します。
<ファシリティマネジメントのメリット>
- 経営コストの最適化
- 業務効率・生産性の向上
- 社員のモチベーション向上
- 災害やリスクに強い職場づくり
- 社会的評価・企業ブランドの向上
経営コストの最適化
ファシリティマネジメントにより、建物や設備の使用状況を把握し、無駄な支出を抑えることができます。例えば、使われていないスペースを縮小・統合することで、不要な光熱費や賃料の削減が可能です。こうして抑えたコストは、限られた経営資源を成長戦略や新規投資に振り向ける原資となり、企業の競争力強化にもつながります。適切に運用することで、利益率の向上や財務体質の改善が期待できます。
業務効率・生産性の向上
ファシリティマネジメントでは、オフィス環境やICT設備を戦略的に整備することも重要です。働きやすい空間やツールが整っていることで、社員一人ひとりの集中力や作業効率が高まり、全体の生産性向上につながります。例えば、オンライン会議に対応した会議室や、リモートワークに適した通信インフラの整備によって、社内外との連携がスムーズになり、意思決定のスピードも上がるでしょう。
社員のモチベーション向上
快適な職場環境は、社員のモチベーション向上にも直結します。ファシリティマネジメントでは、休憩スペースや福利厚生設備の充実など「人を支える場」の整備も欠かせません。適切な休息が取れる環境は、働きやすさや満足度を高め、結果として離職率の低下や定着率の向上につながります。モチベーションの向上は、組織の活力と安定性にも好影響をもたらすでしょう。
災害やリスクに強い職場づくり
ファシリティマネジメントは、災害対策やセキュリティ体制の整備を通じて、社員が安心して働ける環境を構築します。例えば、地震対策としての耐震補強や非常用電源の設置、入退室管理システムの導入などが挙げられるでしょう。万が一のトラブルにも柔軟に対応できる体制を整えておくことで、事業の安定運営や取引先からの信頼確保につながります。
社会的評価・企業ブランドの向上
ファシリティマネジメントは、省エネや環境配慮といった取り組みを通じて、企業の社会的責任を果たす活動にもつながります。例えば、省エネ型の空調やLED照明の導入、再生可能エネルギーの活用、環境に配慮したオフィス設計などがその一例です。こうした取り組みを行うことで、「環境にやさしい企業」として社会からの評価が高まり、企業ブランドの向上にもつながります。
4. ファシリティマネジメントの具体的な活動は?
ファシリティマネジメントは、単に建物や設備を管理するだけでなく、社員の働きやすさや安全性、環境への配慮など、幅広い観点から実施される活動です。ここでは、企業が実際に取り組んでいる代表的な活動内容を紹介します。
<ファシリティマネジメントの活動例>
- 維持管理費や光熱費の削減(コスト最適化)
- オフィスレイアウトやICT環境の整備(生産性向上)
- 福利厚生設備や休憩スペースの導入(社員満足度向上)
- 災害対策・セキュリティ強化(リスクマネジメント)
- 省エネ設備導入・脱炭素設計(ESG/SDGs)
これらの活動を通じて、企業は施設を単なる「箱」ではなく、経営に貢献する資源として最大限に活用することが求められます。ここでは、それぞれの活動内容を具体的に見ていきましょう。
維持管理費や光熱費の削減(コスト最適化)
ファシリティマネジメントの代表的な取り組みのひとつが、建物や設備の維持管理費や光熱費の最適化です。日常的な設備の稼働状況を把握し、無駄を省くことで、運用コストの大幅な削減が可能です。
例えば、照明をLEDに切り替えたり、空調システムに自動制御機能を導入したりといった工夫により、電力使用量を抑えることができます。また、部署ごとの利用状況を分析し、使われていない会議室や執務スペースを統合・縮小してオフィスの面積や賃料を見直すことも効果的です。
このような省エネやコスト見直しの取り組みは、固定費の削減につながり、経営資源をより戦略的な領域へ振り向けることを可能にします。
オフィスレイアウトやICT環境の整備(生産性向上)
オフィスの空間設計やICT環境の整備は、ファシリティマネジメントにおいて生産性向上を図る上で重要な要素です。社員が快適に働ける環境を整えることで、業務効率の向上や組織内のコミュニケーション活性化につながります。
例えば、フリーアドレスやABW(Activity Based Working)の導入で、業務内容や気分に応じて最適な場所を選んで働けるようになり、働き方の多様化に対応できます。さらに、オンライン会議に適した会議室の整備や、高性能なWebカメラ・マイクなどICT機器の導入によって、リモートワークやハイブリッドワークにも柔軟に対応できる職場環境が実現可能です。
こうした取り組みにより、社員同士の情報共有や部門を越えた連携が促進され、新たな発想が生まれやすくなります。結果として、個人のパフォーマンス向上にとどまらず、組織全体の生産性やスピード感のある意思決定、イノベーション創出にもつながるでしょう。
福利厚生設備や休憩スペースの導入(社員満足度向上)
社員が安心して働き続けられる環境を整えることも、ファシリティマネジメントの重要な役割のひとつです。特に、福利厚生設備や休憩スペースの充実は、社員のモチベーションや健康意識の向上に大きく貢献します。
例えば、カフェスペースやリフレッシュルーム、仮眠スペースなどを設けることで、仕事の合間に適度な休息を取ることが可能です。こうした取り組みは、社員の心身のリフレッシュを促し、集中力の維持やストレス軽減につながります。
社員のウェルビーイングを大切にする企業風土が醸成されることで、企業全体の活力や、社員の定着率の向上にも寄与するでしょう。
災害対策・セキュリティ強化(リスクマネジメント)
万が一の事態に備えた災害対策や、日常的な安全性を確保するセキュリティ強化も、ファシリティマネジメントにおいて欠かせない取り組みです。社員が安心して働ける環境を整えることは、企業の信頼性や事業継続性にも直結します。
例えば、地震対策としての耐震補強や、停電時に備えた非常用電源の設置は、災害時のリスクを軽減するために重要です。また、入退室管理システムや監視カメラの導入など、施設内のセキュリティを強化することで、部外者の侵入や情報漏えいなどのリスクにも対応できます。
さらに近年では、サイバー攻撃や情報システムの停止といったリスクも事業継続を妨げる要因として無視できません。物理的な防災対策と併せて、ネットワーク監視やアクセス制限など、情報セキュリティ面での対策を強化することも重要になります。
このような備えにより、突発的なトラブルが発生しても業務への影響を最小限に抑えることが可能です。事業の安定運営や取引先からの信頼確保にもつながります。
省エネ設備導入・脱炭素設計(ESG/SDGs)
環境への配慮や脱炭素の取り組みは、近年のファシリティマネジメントにおいて重要性が増しています。企業のESG(環境・社会・ガバナンス)対応や、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献としても注目されており、ブランド価値の向上にもつながるでしょう。
具体的には、エネルギー効率の高い空調や照明の導入、断熱性能の向上といった省エネ設計の採用、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用するオフィスづくりなどが取り組まれています。こうした取り組みにより、電力使用量やCO₂排出量を削減し、環境負荷の軽減を図ることが可能です。
これらの施策は、単なる設備の更新ではなく、環境に配慮する姿勢を社内外に示すことにもつながり、企業の社会的評価や採用力、投資家からの信頼にも好影響を与えます。
5. ファシリティマネジメントの業務サイクル
ファシリティマネジメントは、一度きりの施策ではなく、継続的に改善を重ねていくプロセスが重要です。その進め方として基本となるのが、「PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Act)」です。計画から改善までの流れを継続的に回すことで、施設の価値を高め、経営に貢献する仕組みが構築されます。
■ファシリティマネジメントの業務サイクル

<ファシリティマネジメントの業務サイクル>
- Plan(計画):経営戦略にもとづいて、施設や設備をどう活用・改善するかを計画する
- Do(実行):計画に沿ってプロジェクトを実施し、日常の運営・維持管理を行う
- Check(評価):コスト削減や生産性向上など、取り組みの成果を検証する
- Act(改善):評価結果をもとに改善を加え、次の計画に反映させる
このPDCAサイクルを統合的な施設マネジメントとして継続的に回すことで、施設の管理が一過性のものではなく、経営を支える重要な仕組みとして機能します。ビジネス環境がめまぐるしく変化する現代は、施設の状態を常に見直し、柔軟に改善していくことが求められているのです。
6. ファシリティマネジメントは、自社の次のステップを意識して進めることが大切
ファシリティマネジメントの目的は、単なる施設の維持・管理ではなく、経営を支えるための基盤を作ることにあります。そのためにも、日常業務レベルから始まり、管理レベル、経営レベルへと段階的に成熟させていくことが重要です。また、PDCAサイクルを回しながら継続的に見直しと改善を行うことで、コスト削減や生産性の向上、社員のモチベーションアップ、そして企業ブランドの強化といった多面的な効果を生み出せます。
施設は「一度整えれば終わり」ではなく、常に最適な状態に保つべき経営資源です。まずは自社のファシリティマネジメントがどのレベルにあるのかを確認し、次に目指すステップを明確にしながら戦略的に取り組んでいくことが、これからの企業運営に欠かせません。
オフィスの運用方法や環境整備の見直しを通じて、自社の成長を支える基盤を作っていきましょう。オフィス運用のお悩みを解決するアイデアをまとめた以下の資料もぜひご活用ください。
よくある質問
Q.ファシリティマネジメントと施設管理は何が違うのですか?
A: 施設管理は建物や設備の維持・保全を目的とするのに対し、ファシリティマネジメントは経営戦略と連動し、施設を経営資源として最適に活用することを目的としています。より広い視点でのマネジメントが求められる点が大きな違いです。
Q.ファシリティマネジメントは、誰が・どのように進めれば良いのでしょうか?
A: 多くの場合、総務部門が中心となってファシリティマネジメントを推進します。ただし、経理・人事・IT・経営企画など、複数部門との連携が不可欠であり、社内横断的な取り組みが求められます。
Q:ファシリティマネジメントで実際にどのようなコスト削減が可能ですか?
A: 具体的には、使われていないスペースの削減による賃料の削減、LED照明や省エネ空調の導入による光熱費の削減などが可能です。施設運用を最適化することで、固定費全体の圧縮につながります。
Q:ファシリティマネジメントはまず何から始めればいいですか?
A. まずは現状の施設の使われ方やコスト状況を「見える化」することが第一歩です。そこから、PDCAサイクルを活用して改善施策を立て、段階的に管理レベル・経営レベルへと成熟させていくことがポイントです。
イラスト:Masaki
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