オフィスづくりのコラム
COLUMN
【事例付き】小規模オフィスを快適にするレイアウトの工夫
「作業スペースが窮屈で仕事に集中できない」「収納が足りず書類が散らかりがち」「会議や来客対応のスペースが確保しづらい」など、小規模オフィスならではの課題を感じている方も多いのではないでしょうか。限られたスペースで効率よく業務を行う小規模オフィスでは、レイアウトや家具の選び方ひとつで快適さや生産性が大きく変わります。
この記事では、そんな悩みを解決するために、小規模オフィス特有の課題や、代表的なレイアウトパターン、限られた空間を有効活用する工夫、さらには実際の事例まで幅広く解説します。
目次
1. 小規模オフィス特有の課題
小規模オフィスは、限られたスペースの中で業務を行うため、特有の課題を抱えやすい傾向があります。主な課題は次のとおりです。
<小規模オフィス特有の課題>
- 作業スペースが窮屈になりやすい:一人ひとりの作業領域が狭く、業務効率や快適さが損なわれやすい
- 収納・保管スペースが足りない:書類や備品があふれ、整理整頓が難しくなる
- 会議スペースや来客対応がしにくい:WEB会議や打ち合わせのための静かな空間の確保が困難
- 集中と交流のバランスが取りにくい:コミュニケーションが取りづらかったり、逆に集中が妨げられたりすることがある
- 空間にゆとりがなく、圧迫感が生まれる:精神的な疲労感や閉塞感につながりやすい
このように、小規模オフィスには複数の課題が存在します。しかし、限られたスペースの中でも「何を重視するか」を明確にし、それに合わせたレイアウトや設備の工夫をすることで、快適で使いやすいオフィス環境をつくることができるのです。
2. 代表的なレイアウトパターン
小規模オフィスの限られたスペースを有効活用するには、レイアウトの工夫が欠かせません。ここでは、小規模オフィスでよく採用される3つのレイアウトパターンを紹介します。それぞれのレイアウトには特徴があり、職種やチームの働き方に応じて最適な形式を選ぶことが重要です。
<小規模オフィスでの代表的なレイアウトパターン>
- 対向型
- 背面型
- 縦横型
●対向型
対向型は、メンバー同士が向かい合って座るレイアウトです。同じチーム内での情報共有や相談がしやすく、コミュニケーションが取りやすいのが特徴です。会話がしやすい反面、集中した作業にはやや不向きな場合もあります。
●背面型
背面型は背中合わせで座るレイアウトで、集中と交流のバランスがとりやすい形式です。振り返ればすぐにメンバーがいるため、必要なときだけ声をかけやすく、作業に集中したいときは背を向けることで自然に距離がとれます。
●縦横型
縦横型は、テーブルを縦横に組み合わせる自由度の高いレイアウトです。席の配置に変化が出ることで、チーム内外のコミュニケーションを促進しやすく、導線の工夫次第で動きやすい空間をつくることができます。
3. 小規模オフィスにおすすめの工夫
小規模オフィスでは、スペースに制限があるからこそ、レイアウトや設備の工夫が重要になります。ここでは、限られた空間でも効果を発揮する3つの実践的な工夫を紹介します。
<小規模オフィスにおすすめの工夫>
- 空間にゆとりをつくるための収納スペース削減(ペーパーレス化)
- 可変式・多用途家具の活用
- 視覚的な広がりをつくるレイアウトデザイン
●空間にゆとりをつくるための収納スペース削減(ペーパーレス化)
紙の書類が多くなると、収納スペースを圧迫してしまいます。書類はPDF化してクラウドで共有したり、請求書や契約書を電子化したりして紙を減らすことで、収納スペースの削減が可能です。コピー機の集約やプリント枚数の削減も、スペースの有効活用につながります。
また、個人用のワゴンやキャビネットを廃止するのもおすすめです。デスクまわりがすっきりし、レイアウトの自由度が向上します。収納の「共用化」や「最小化」を進めることで、限られたスペースでも広がりを感じられるオフィスにできるでしょう。
●可変式・多用途家具の活用
ひとつのスペースを複数の用途に使えるようにすることで、効率的な空間活用が実現できます。例えば、キャスター付きのデスクやチェアを使えば、ミーティングスペースを一時的な作業場に切り替えるといった柔軟な対応も可能です。また、ホワイトボードと間仕切りを兼ねたパネルなどの多用途家具は、限られたスペースの中でさまざまな使い方ができます。
●視覚的な広がりをつくるレイアウトデザイン
物理的なスペースを拡張することは難しくても、「広く見せる」工夫によって心理的な快適さは高められます。例えば、ホワイトやベージュなどの明るい色を基調にした内装や家具を選べば、空間に"抜け感"が生まれます。また、鏡面素材やガラスパーティションを使えば、奥行きが出て視覚的な広がりを与えることができるでしょう。家具の高さを低めに揃えることで、視線の分断を防ぎ、すっきりとした印象を与えます。
4. 小規模オフィスのレイアウト事例紹介
最後に、小規模オフィスの実際のレイアウト事例を紹介します。なお、ここでは面積規模1,000平方メートル以下を小規模と定義して紹介しています。
<小規模オフィスのレイアウト事例>
● 北電情報システムサービス株式会社 様
<オフィスの規模>
- 面積規模:300m2
- 人員規模:30人
<レイアウトのポイント>
- フリーアドレスの導入
- 壁を使わずに空間を区切る
- 多用途に使えるコミュニケーションエリア
ガラス張りのセキュリティドアを入ると、高級感のあるグレーの大テーブルと特徴的な照明が配置されたコミュニケーションエリアが広がります。落ち着いた雰囲気の中で、気軽な打ち合わせや作業が行えるカジュアルな空間として機能しており、日常的なやり取りやアイデア交換の場としても活用されているエリアです。


執務エリアには、高さの異なるビッグテーブルが配置されており、ひとり一人の作業スペースを広く確保して、軽い打ち合わせなどにも柔軟に対応できる設計となっています。コミュニケーションエリアとは異なるカーペット敷きの床が使われており、壁を設けずに空間の境界を緩やかに分ける工夫を施しました。これにより、開放感を保ちつつも集中しやすい環境が実現され、自然なコミュニケーションの促進につながっています。
●株式会社小野測器 様
<オフィスの規模>
- 面積規模:900m2
- 人員規模:約70人
<レイアウトのポイント>
- ABW(※)を採用
- 社員同士のコミュニケーション促進を意識
※Activity Based Working...仕事の内容や目的に合わせてオフィス(オフィス外も含む)で「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方のこと

株式会社小野測器 様のカフェエリアは、食事はもちろん、業務の打ち合わせやリクルーティング活動などさまざまな用途で活用されています。インテリアにはカフェ風の什器やラグを取り入れ、オフィスらしさを感じさせません。採光性に優れた設計で、自然な会話やコミュニケーションが生まれやすい環境となっています。


執務エリアは、壁を取り払った開放的なレイアウトが特徴です。什器の配置に変化を持たせることで、部署を超えた社員同士の交流を促進しています。一方で、集中して作業したいときには、半個室の集中席が人気です。業務の内容や気分に応じて働く場所を選べるABWの考え方が取り入れられ、多様な働き方に対応しています。
●ヒノデホールディングス株式会社 様
<オフィスの規模>
- 面積規模580m2
- 人員規模:15人(常駐)
<レイアウトのポイント>
- 狭さを感じさせない内装デザイン
- フロアごとに機能を分けたゾーニング

プレゼンテーションルームには、流線的なデザインの壁が採用されており、視覚的なインパクトとともに、洗練された印象を与える空間です。椅子には、着座姿勢にフィットしリラックスできるシーティング「Leopard(レオパード)」を採用。来客時にも配慮された、快適で機能的なプレゼン環境が整っています。


執務スペースはフリーアドレスを採用し、他拠点に所属する社員がサテライトオフィスとして活用することも少なくありません。個別席には大きめの仕切りが設置され、隣席の手元や視線が気にならないよう工夫されています。業務内容に応じて個室で働ける環境も整え、少人数ながら多様な働き方に対応した柔軟な設計がなされているのが特徴です。
●小泉産業株式会社 様
<オフィスの規模>
- 面積規模:1フロア約500m2
- 人員規模:約60人
<レイアウトのポイント>
- フロアで分けた固定席とコミュニケーションエリア


執務フロアでは、機密情報の取り扱いに配慮し、社員一人ひとりに固定席が設けられています。固定席でありながらも、執務エリアの中央にミーティングスペースを配置し、社員同士のコミュニケーションを促す設計を施しました。短時間の打ち合わせや簡易的な報告会など、日常的に頻繁に活用されるエリアとなっています。


別フロアに設えられたコミュニケーションエリアはカフェスペースを中心に、ソロワークに適した席や多様な打ち合わせスペースが設けられているエリアです。利用目的や人数に応じて柔軟に使い分けができ、季節ごとの装飾やイベントも実施。社員が自ら空間づくりに関わる文化が根づいています。働く環境への愛着やエンゲージメントの向上に貢献する空間構成です。
●レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン株式会社様
<オフィスの規模>
- 面積規模:900m2
- 人員規模:約70人
<レイアウトのポイント>
- 「自社らしさ」を散りばめたオフィス空間
- 社内アンケートから社員の声を反映

執務エリアには昇降デスクや集中ブースを設置し、社員がその日の気分や業務内容に合わせて働く環境を選べるように配慮。デスクは縦や横にずらしてレイアウトすることで、空間に広がりを感じさせ、自然なコミュニケーションが生まれやすくなります。また、個室ブースは、これまで同社がオフィスを構えてきた地名が名称として用いられ、会社の歴史や文化を表現しました。


社員の声を反映して誕生したリフレッシュスペースは日当たりの良い窓際に設けられ、北欧スタイルの家具を取り入れることで、温かみのあるくつろぎの空間を演出しました。グローバルポリシーに基づき取り入れた少年のグラフィックも特徴的で、企業独自のこだわりが感じられます。カフェカウンターにはコーヒーマシンやお菓子が常備されており、休憩や昼食時の利用はもちろん、社内イベントの場としても活用される空間です。
チームの一体感で楽しくオフィス移転を実現した「ぬープロジェクト」|レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン株式会社
5. 小規模オフィスの課題はレイアウトや設備を工夫することで解決できる
小規模オフィスは、スペースの制限や機能面での課題を抱えやすい一方で、工夫次第で快適かつ生産性の高い環境へと進化させることができます。限られた空間だからこそ、「何を重視するか」を明確にし、目的に合わせたレイアウトや設備の選定を行うことが重要です。
本記事では、小規模オフィスに特有の課題やレイアウトパターン、限られたスペースを有効に使う工夫、そして実際の事例をご紹介しました。これらの情報をもとに、自社に最適なレイアウトのヒントをつかんでいただければ幸いです。
以下の資料でも、規模別にまとめた最新のオフィスデザインをご紹介しています。ぜひこちらもご参考に、自社に合ったレイアウトイメージを検討してみてください。
イラスト:Masaki