オフィスづくりのコラム

COLUMN

オフィス自治会が会社を変える!社員の主体性が育てる快適なオフィス

2025.9. 2
  • ウェルビーイング
  • コミュニケーション

テレワークやフリーアドレスの普及で固定席がなくなり、出社頻度も人によって異なる中で、オフィスは「誰のものでもない空間」になりつつあります。こうした中で、社員自身が自分たちのオフィスとしてオフィス運用に関わり、整えていく「自分ごと化」の意識が重要視されるようになりました。

この記事では、社員の自分事化の意識を育てる「オフィス自治会」の取り組み事例を紹介し、その意義と効果、継続的な運用のための工夫についてお伝えしていきます。

目次

  1. オフィス自治会とは?必要とされる理由
  2. オカムラでのオフィス自治会の運用
  3. オフィス自治会の導入効果と成功事例
  4. オフィス自治会をスムーズに運用するための工夫
  5. 社員が自らオフィスを育てていく

1. オフィス自治会とは?必要とされる理由

オフィス自治会とは、職場をより良くするための社員主体の活動の総称です。美化活動やイベントの運営、職場ルールの見直しなど、社員自身が活動の中心となって取り組むことで、オフィスへの当事者意識が育まれます。

近年では、従来総務部門が主導していたオフィス移転などのプロジェクトにも、社員が直接関与するケースが増えました。業務負担の大きい総務部の負荷を減らすだけでなく、オフィス自治会を通じて各部門の意見を広く集め、実際の施策に反映できる体制として注目を集めています。

特に、規模の大きな企業や多様な職種が同じ拠点で働く組織では、部門間の摩擦や価値観の違いをすり合わせる場が必要です。オフィス自治会は、社員同士の相互理解を深める有効な手段として、導入が進められています。

2. オカムラでのオフィス自治会の運用

オカムラでは、自社のオフィス移転プロジェクトの発足から、移転後は運用フェーズとして「自治会」へと形を変え、現在も活動が続いています。空間づくりを一度で終わらせるのではなく、運用・改善を社員自身が継続的に担う仕組みです。

以下で、オカムラが実際に運用している自治会活動についてご紹介します。

<オカムラの自治会活動>

  • オフィス自治会活動の目的
  • 自治会4つの分野
  • 運用の仕組み

●オフィス自治会活動の目的

オカムラで運用しているオフィス自治会の目的は2つあります。 

<目的>

  • 社員の意見を反映したオフィスをつくり、運用していくこと
  • 異なる業種や働き方の社員のコミュニケーション活性化・すり合わせの場にすること

オカムラでは多くの拠点で入居者全員が何かしらの自治会に参加し、ルールの策定・改善に関与することで、自分たちの職場を自分たちで育てる意識を醸成します。多様な職種が同じ拠点で働いているため、日常業務では接点のない社員同士の交流を図ることで相互理解を進め、職場全体の連携を強化します。

●自治会4つの分野

オカムラの自治会活動は、主に以下の4つの分野に分かれて運用されています。

・オフィス運用

オフィス運用自治会は、社員から集めた意見をもとに運用上の仕組みを考案したり、設備の導入を検討したりする役割を担っています。さらに、集まった意見を内容に応じて他の自治会へ振り分けるオフィス自治会のハブとしての役割も果たしており、自治会全体の連携を支える存在です。

・ICT

ICT自治会は、拠点内のICTツールの導入・運営を担う自治会です。AV機器やモニターなどの管理に加え、会議システムや座席予約システムの活用支援も行います。特徴的なのは、社員主導で勉強会を開催するなど、ツールの活用を促す取り組みを行っている点です。単なる設備管理にとどまらず、現場目線での活用促進を進めています。

・美化・衛生(BCP)

美化・衛生(BCP)自治会は、快適で清潔なオフィス環境を保つことを目的とした活動を行っている自治会です。毎週金曜日の一斉朝清掃の実施・運営、指導や年末の拠点全体の大掃除の企画・運営、空気清浄機のフィルター交換、ウェットティッシュの補充管理など、全社的な美化活動の企画・実施から日常的な衛生備品のメンテナンスも行います。さらに、災害や緊急時に備えるBCP(事業継続計画)に関する取り組みも担当範囲です。

・イベント

イベント自治会は、季節行事や社内交流イベントを企画し、部門を越えたつながりやチームビルディングを促進しています。卓球大会やバレンタインの差し入れ、家族参加型のバーベキューなどの企画を担当し、普段接点の少ない社員同士が自然に会話できる機会を生み出しています。

上記の4つは、一般的な自治会の分野です。この4つに加え、企業独自の自治会を運営している企業もあります。例えば、季節やイベントに応じた装飾を担当する自治会、新入社員のオンボーディングを担当する自治会など、企業によって個性が出るのもユニークなポイントでしょう。

●運用の仕組み

社員主体でオフィスをよりよくしていくためには、継続的に意見を出し合い、改善につなげる運用体制が欠かせません。オカムラのオフィス自治会では、メンバー選出から施策の実行まで、以下のようなフローに沿って活動を進めていきます。 

■オフィス自治会運用の流れ

実施内容

頻度

詳細

1.自治会メンバーの決定

1

各部門の人数比に応じて自治会ごとに人数を割り振る または 全員参加型で全社員が希望性でいずれかの自治会に所属する

2.各自治会でリーダーを選出

1

活動の進行・タスク管理などを担うキーパーソンである自治会リーダーの選出

3.自治会ごとに定例会を実施

1回以上

自治会ごとに活動の企画・実施・改善提案などを話し合い。メンバーの意見をもとに、必要に応じて他の自治会や全体に共有

4.部門長との連携ミーティング

3か月に1

各自治会のリーダーが部門長と対話。活動報告や承認事項の確認を行い、組織全体の運営方針とつなげていく

5.改善施策を実行職場に反映

都度

承認を経た内容をもとに、実際のオフィス運用や施策として反映。継続的に改善を回していくサイクル

以下では、オカムラの拠点のひとつである「Work Harbor Yokohama」でのオフィス自治会導入事例を詳しく紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。

職場でコミュニケーションの輪を広げる、部門横断型「自治会」活動

3. オフィス自治会の導入効果と成功事例

各オフィス自治会の活動は、社員の主体性と部門を超えた交流の促進という共通の効果をもたらします。ここでは、実際の自治会活動を通して得た具体的な事例とその効果をご紹介します。

<オフィス自治会の導入効果>

  • 自治会活動を通して"当事者意識"が芽生える
  • 普段関わらない人との交流が生まれる

●自治会活動を通して"当事者意識"が芽生える

オカムラでは、オフィス改装時に運用自治会が中心となって社員の声を集約し、新しいルールづくりやレイアウトの検討を主導しました。従来のように総務部門に任せるのではなく、「自分たちで考えて整える」という意識が自然と芽生え、社員の当事者意識を大きく育てました。

また、ICT自治会では会議ツールの活用に関する勉強会を社員主導で企画・開催。「みんなが使いやすくなるにはどうすればよいか」という視点でツールの運用に関わるようになり、社員一人ひとりの主体性が高まりました。

●普段関わらない人との交流が生まれる

イベント自治会が企画したアドベントカレンダー企画では、ちょっとした差し入れや話題の共有を通じて、部署を越えた気軽な会話のきっかけが生まれました。また、週1回開催されている「シャッフルデー」は、異なる部署の社員が近くの席で働く機会をつくることで、職種や立場の垣根を越えた交流が活性化しています。

さらに、オフィス運用自治会では、新入社員向けのコミュニケーションカードを作成。顔写真と名前、簡単な自己紹介を添えて掲示することで、「誰が誰かわからない」という状況を防ぎ、自然な声かけや交流が生まれやすい環境を整えています。

このような活動を通じて、社員同士の新たなつながりや気づきが生まれ、組織全体の一体感やエンゲージメントの向上にもつながっています。

4. オフィス自治会をスムーズに運用するための工夫

オフィス自治会は社員主体で進める取り組みであるからこそ、スムーズな運用のための工夫が欠かせません。メンバーの巻き込み方や活動の継続性など、運営上の課題に直面することもあるでしょう。ここでは、運用における難しさとその工夫について紹介します。

<オフィス自治会をスムーズに運用するための工夫>

  • 周囲を巻き込むのが得意な人をリーダーに選ぶ
  • 社員が意見を出しやすい環境をつくる
  • 自治会の活動内容を明確にする
  • 他社や他拠点の良いところを取り入れる
  • 楽しみながら参加できる活動に変換する

●周囲を巻き込むのが得意な人をリーダーに選ぶ

自治会のリーダーは、メンバー調整や定例会の進行、タスク管理などを担う重要な役割です。単に職位や年次で選ぶのではなく、周囲を巻き込むのが得意な人が担うことで、チーム全体が動きやすくなります。一定の推進力と調整力をもつリーダーの存在が、活動の質と継続性に大きく影響すると言っても過言ではありません。

●社員が意見を出しやすい環境をつくる

自治会では、社員の意見をいかに集められるかがカギとなります。そのため、例えば所属長はあえて自治会には加わらず、日々の活動には関与しないなど、意見を出しやすい体制づくりが大切です。意見を集約した上で、3ヵ月に1回の所属長ミーティングで報告・相談することで、適度な距離感を保ちながら組織とつながる仕組みができます。

●自治会の活動内容を明確にする

自治会活動は本業とは異なるため、「何をやっているのか」が周囲に見えにくいデメリットがあります。そのため、掲示板や社内ポータルを活用して活動内容を可視化することが効果的です。目的や進捗を共有することで、参加者自身の意識も高まり、周囲からの理解と協力も得やすくなります。

●他社や他拠点の良いところを取り入れる

自治会の運用は一度決めて終わりではありません。他社や他拠点の取り組みをリサーチし、積極的に取り入れる姿勢も大切です。また、運用中に出てきた課題や改善点はその都度見直しを行い、常にアップデートしていくことが継続的な活動のカギとなります。

●楽しみながら参加できる活動に変換する

自治会活動が「業務の延長」や「負担」と感じられてしまうと、継続は難しくなります。そのため、初回の活動ではロゴをつくったり、チーム名を決めたりと、チームで楽しめる活動から始めるのも効果的です。活動自体を楽しめるよう工夫することで、自然と関わる意欲が生まれ、前向きな空気が広がります。

5. 社員が自らオフィスを育てていく

オフィス自治会は、社員が主体的に関わりながら、自分たちの職場をより良くしていく仕組みです。日々の業務とは一線を画した活動だからこそ、普段とは異なる社員の一面が見え、新たなつながりが生まれます。

オフィスは「つくって終わり」ではなく、使いながら育てていくものです。働く人が気持ちよく過ごせるオフィスにしていくための手段として、オフィス自治会を上手に活用していきましょう。

社員の働きがい向上のためには、オフィスの環境を整えることがとても重要です。以下の資料では、ウェルビーイングを重視したオフィスづくりについてまとめているので、こちらもぜひ参考にしてください。


イラスト:Masaki