働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGE
調査・研究データから考える働く人の心身の健康を支えるオフィス環境とは
ワーカーの仕事のパフォーマンスを支えるには、心身ともに健康であることが重要です。では、オフィス環境は働く人の健康をどのように支えられるのでしょうか。オカムラがこれまでに行ってきた様々な調査・研究の結果をまとめ、「からだ」と「こころ」の2つの視点からそのポイントを紹介します。
POINT:
- 調査では、「働くなかで大切にしたいこと」として「心身ともに健康であること」が最も多く選ばれた。
- 「からだ」の健康には、作業姿勢を整え、働く場所を変えながら身体を動かせる環境が重要。
- 「こころ」の健康には、リフレッシュできる環境や人とのつながりを持てる環境が重要。
近年、オフィスワーカーの健康に対する関心が高まっています。オカムラが実施したアンケート調査(※1)では、「働くなかで大切にしたいこと」として「心身ともに健康であること」が最も多く選ばれました。

心身の健康を支えるオフィスの環境づくりは、ワーカーの生産性をあげるために企業ができることの1つです。では、どのような工夫をするとよいのでしょうか。本記事では、ワーカーの健康を「からだ」と「こころ」の2つの視点から捉え、オフィスづくりのヒントを考えていきます。
作業姿勢の安定と変化で「からだ」の健康を支える
まず、からだの健康を支えるうえで重要なのが、日々の作業姿勢です。デスクワークでは長時間同じ姿勢で作業を続けることが多く、それによって肩こりや腰の負担、疲れやすさなどにつながることがあります。そのため、オフィスの作業環境は、ワーカーが無理のない姿勢で作業できるように整えることが大切です。
次の図は、健康的な働き方を実現するための好ましい作業姿勢と、それを支えるための家具や環境のポイントをまとめたものです。

まず、パソコンの画面に対して正面に座り、身体がねじれないようにすることが重要です。
椅子の高さは、自分の身体に合わせて調整することが大切です。膝裏が圧迫されず、足を動かしても足裏が床から離れない高さに座面を合わせます。足が床につかない場合は、足元に台などを置くと、姿勢が安定しやすくなります。
また、座面の奥まで深く腰かけ、背中が背もたれに十分につくように座ります。その際、背骨が自然なS字カーブを描くよう、腰の部分が支えられていることもポイントです。
机の高さも、作業姿勢を整えるうえで重要です。望ましいのは、机に腕をのせたときに肩が不自然に上がらず、手首がほぼまっすぐな状態になる高さです。
特にノートパソコンは前のめり姿勢になりやすいため、外付けのキーボードやディスプレイを活用し、キーボードと画面を分けて使うことも有効です。ノートパソコンを台にのせ、画面の上端が目の高さ、または少し下になるようにすると、首や背中への負担を抑えやすくなります。
同じ姿勢で座り続けないことを意識する
からだの健康を支えるためには座りすぎにならないことも重要です。
ABW(Activity Based Workstyle)は、仕事の内容や目的に合わせて働く場所を選択するワークスタイルです。作業する場所を変えることが、ワーカーの健康状態に与える影響を調査しました(※2)。
この調査では、働く場所の選択肢が多いオフィス環境への移転を経験したワーカーと経験していないワーカーの健康診断結果の違いを確認しました。

調査の結果からは、移転したワーカーでは、ウエスト周長の上昇幅が比較対象のオフィスワーカーよりも抑えられていることが確認されました。ウエスト周長は加齢とともに拡大する傾向がありますが、働く場所の選択肢が多いオフィス環境によって、その上昇が緩やかになった可能性があります。
また、移転したワーカーでは、いわゆる「善玉コレステロール」と呼ばれるHDLコレステロールの数値が上昇していることも確認されました。HDLコレステロールの上昇は、動脈硬化の抑制に関わる可能性があります。さらに、糖尿病リスクの指標であるHbA1cについては、数値の低下が確認されました。
このように、からだの健康を支えるためには、好ましい姿勢を支える環境やABWのように働く場所の選択肢を設けることが大切なポイントになります。
「こころ」の健康を支えるオフィス環境
次に、こころの健康について見ていきます。
ワーカーのパフォーマンスを支えるためには、身体への負担を減らすだけでなく、ストレスを和らげたり、前向きに仕事に向き合える状態をつくったりすることも重要です。そのため、オフィス環境には、気持ちを切り替え、リフレッシュを促す場としての役割も求められます。
オカムラの調査では、オフィスでのリフレッシュ行動には、「コミュニケーション」「リラックス」「レクリエーション」「アクション」の4つがあるとされています。人と会話する、静かに休む、遊び心のある活動をする、身体を動かすなど、気持ちの整え方は一つではありません。ワーカーが自分の状態に合わせてリフレッシュできる環境を整えることが、こころの健康を支えるうえで大切です。(詳しくはこちら:オフィスをより快適にするために | 働き方・働く場の研究と視点 | 株式会社オカムラ)
気持ちを整える環境づくりの一例として、オフィスにグリーンを取り入れることが挙げられます。オフィスグリーンについてオカムラが検証したところ、6割以上の人がストレスの緩和を実感していることが分かりました。また、快適性やコミュニケーションにも効果が確認されています。植栽や自然光、外の景色を感じられる空間は、働く人がリラックスしたり、気分を切り替えたりするきっかけになります。

人とのつながりが、働きがいや安心感を生む
また、こころの健康を考えるうえでは、人とのつながりや、安心して関われる関係性も重要です。
オカムラの調査では、職場でつながっている人数が多い人ほど、働きがいや発言行動の自由度が高い傾向も見られています。(詳しくはこちら:つながりを促すために | 働き方・働く場の研究と視点 | 株式会社オカムラ)オフィス空間においてつながりを促進する施策をうまく活用することで、働きがいや安心感を得られると考えられます。
つながりを生むオフィス空間は、どのように作ることができるのでしょうか。

オカムラでは、その一例として部門やチームで集まることができる場所を提案しています。
実際にフリーアドレスの運用をしているオカムラのオフィスにおいて、部門専用のスペースを設けて検証したところ、そのエリアを利用することで「自部門での雑談・相談の機会が増えた」「自部門内の情報共有やノウハウ共有が進んだ」といった効果が確認されました。
このように、こころの健康を支えるためには、ワーカーが気持ちを整えられる環境や、人とのつながりを通じて安心感を得られる環境をつくることが重要です。
心身ともに健やかに働けるオフィスへ
ワーカーの心身の健康には、さまざまな要素が関わります。個人の意識や組織の制度に加え、日々を過ごすオフィス環境も、その一端を担います。
オフィスづくりは、単に働く場所を用意するだけでなく、ワーカーの健康を支える視点が重要です。心身ともに健康で、前向きに、人とつながりながら働ける環境をつくることが、改めてオフィスに求められる役割のひとつとなるでしょう。
※1 オカムラ/2026年/従業員100名以上の企業に勤めるワーカー3000名を対象にアンケート調査
※2 (公財)明治安田厚生事業団とオカムラの共同研究/2020年
Research: 野々田幸恵、嶺野あゆみ
Edit: 吉田彩乃
Illustration: 川添むつみ
Production: Plus81