働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGE
オフィスをより快適にするために
ワーカーにオフィスでストレスを感じる環境についてアンケートをとったところ、「周りの音が気になる」「リラックスする機会がない」「周りからの視線が気になる」といった声が挙がりました。ここでは、「音」「休憩」「視線」に関する快適なオフィスづくりのヒントをご紹介します。
この記事では『KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2025 COLUMN オフィスをより快適にするために』より一部内容を抜粋してご紹介します。
POINT:
- オフィスでの「音」の問題は「ABCDルール」という4つのルールに基づいた対策が有効。
- オフィスでのリフレッシュ行動は4つに分類され、それに合わせた環境の工夫が必要。
- デスクワークで気になる「他者の視線・存在」は真正面よりも斜め前。
オフィスの音はどのようにコントロールする?

近年、かつてよりもオフィスは静かになっています。たとえば、機器の進化によって動作音が削減され、携帯電話の普及により固定電話の着信音が鳴ることは減りました。だからこそ、会話などの音声やちょっとした雑音が耳につくようになり、音に敏感になっている人もいるのではないでしょうか。実際に、オフィス内で不快に感じる音を調査すると、最も回答者の割合が多い項目は「人が雑談をしたり笑ったりしている会話の音」で、3割以上が不快と感じていました。
そんなオフィスの音の問題には、「ABCDルール」に基づいた対策が有効です。これは、A:吸音(音を吸収する)、B:遮音(音を通さない)、C:マスキング(音を被せる)、D:距離(音源に近づく・離れる)の4つの手段で音環境をコントロールする考え方です。B:遮音に関しては、ワークブース等を用いて遮音性の高いスペースをつくることが有効です。C:マスキングの対策として、マスキング音(川のせせらぎ音や小鳥のさえずり音)を会議室で流すことで隣室や通路からの会話を聞こえにくくするもあります。
また既往研究によれば、知識創造のための会議は静かすぎるとやりづらく、意思決定を目的とした会議は静かな環境が適していることが明らかになっています。オフィスのゾーニングを検討する際は、業務内容に応じて音環境を選べるように設計することが重要です。
休憩のポイントは?

働くうえで、どの程度休憩を取るとよいのでしょうか。既往研究では「作業時間45〜60分ごとに10〜15分程度の休憩を取る」ことが、作業効率や心身の負担軽減の観点から望ましいとされています。
また、オカムラが行った調査では、オフィスでのリフレッシュ行動は「コミュニケーション」「リラックス」「レクリエーション」「アクション」の4つに分類できることがわかりました。「コミュニケーション」は、仲間との会話や飲食などを楽しむことによって精神的に安らぐ行動です。「リラックス」は、植物を見たり音楽を聴いたりするなど、何かを鑑賞しながら心身を休める行動を指します。「レクリエーション」は、雑誌を読むなど、仕事以外のことを考えながら気分転換する行動です。そして「アクション」は、オフィス内を歩くなどの軽く体を動かすような行動です。
デスクワーク中心の場合、休憩時間をすべて安静に過ごすよりも、体を動かすことがより効果的な休憩であることが示されています。体を動かすことによって脳が刺激を受け、心身の活性化につながると考えられるからです。
さらに、「オフィスグリーン」の活用もオフィスでのリフレッシュに大きな役割を果たします。外部の調査によると、オフィスの緑視率(人の目に映る緑の量)が10〜14%であると、ストレス緩和効果があることが示されています。
休憩時間を確保するだけでなく、その時の行動とそれを行う環境を工夫することも効果的です。
気になる他人の視線・存在

オフィスにおける「他人の視線・存在」はどのくらい気になるものなのでしょうか?
オカムラと東京大学は、対向型レイアウトの座席に座る人が、周辺のワーカーの視線や存在から受ける影響について調査しました。その結果、パソコン作業を想定した場合に、他者の「視線」が気になる領域よりも、他者の「存在」が気になる領域の方が広いことがわかりました。視線が自分に直接向けられていなくても、近くに誰かがいるだけで仕事のしやすさに影響を与えてしまうようです。
また、影響を受ける方向を見ると、自席の真正面よりも斜め前の方が、より遠くまで他者の視線や存在が気になるという傾向にありました。ノートパソコンの作業では視線が前方に集中するため、真正面の人よりも、斜め前の人の方が視界に入る範囲が広くなり、存在がより意識されやすくなると考えられます。
こうした他者の視線や存在が気にならないような環境をつくるためには、いくつかのポイントがあります。まず、斜め前に座る人が視界に入りにくいデスクの配置、パネルやパーティションの設置をするとよいでしょう。そのほか、視界をほどよく遮り目隠しとなるオフィスグリーンを配置することなどが有効です。
快適なオフィスをつくるためには、
「音」「休憩」「視線」を意識することが重要
快適なオフィス環境をつくるためには、音環境の工夫、休憩の工夫、視線を意識したレイアウトや家具・什器の導入が重要です。オフィスで過ごす時間がより快適で生産的なものとなるよう、前述した対策を実践してみてはいかがでしょうか。
さらに詳細な情報を掲載したPDF版(掲載ページP44〜)は下記バナーからダウンロードしてご活用ください。
参考文献:
・スピーチプライバシーの評価規準と設計指針 -音声による情報漏洩防止-/日本建築学会/2021年
・複数人による知識創造活動を行う会議に及ぼす室内音環境の影響/辻村壮平、秋田剛、小島隆矢、佐野奈緒子/2015年
・VDT作業の休憩時間の過ごし方に関する一考察/堀江良典/1995年
・室内植物によるオフィスワーカーのメンタルヘルスケアに関する実証研究/源城かほり、蒲原大季、松本博、中野卓立/2020年
Research: 嶺野あゆみ
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次(Beach)、堀内宏臣(Kanaalstraat Studio)
Production: Plus81
