働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGE
集中できるオフィスの条件
オフィスにおける「集中」について、ワーカーはどのように捉えているのでしょうか。オフィスワーカーの集中の実態を探り、必要とされるオフィス環境について調査をしました。
この記事では『KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2025 FEATURE #03 集中できるオフィスの条件』より一部内容を抜粋してご紹介します。
POINT:
- どんな座席運用の人も執務席以外で集中作業を行っている人が4割以上いる。
- 集中できる環境は個人差があり、各タイプに合わせた環境づくりが大切になる。
パフォーマンス向上のために「集中」は欠かせない

まず、オフィスで集中するために行っていることを調べてみました。上位5項目を見ると、休憩やトイレに行く、デスク周りを整える、飲食を取るなど、仕事に直接かかわらない行動を通じて気分を切り替えてから、集中作業に入っていることがわかります。集中のためには休憩・気分転換がしやすい雰囲気や環境の整備が必要であると言えるでしょう。
集中の阻害要因については、「周囲の音(会話・電話やウェブ会議の音)」「周囲の人から話しかけられること」が上位2位に挙げられていました。
以上の結果から、オフィスでの集中を考えるうえでは、休憩・気分転換がしやすい環境づくりと、集中を阻害しないために周囲の音や周囲の人との距離感を考えていく必要がありそうです。
集中作業を行った場所の実態

次に、オフィスで集中作業をしている場所について尋ねました。座席運用別に集中作業を行った場所の組み合わせを見ていくと、固定席の人は執務席のみの人が約6割、執務席以外も使用した人が約4割、グループアドレスとフリーアドレスの人は執務席のみの人が約4割、執務席以外も使用した人が約6割でした。
この結果から、どの座席運用においても、執務席以外にも集中作業ができる選択肢をつくることが重要になります。
集中のタイプとその環境の特徴は?

最後に、周囲の人の有無、動線、周囲の音、周囲の見え方、囲われ方に対して条件を提示し、それらの条件下で集中できるかを尋ねました。上の図は、その回答からワーカーを4タイプに分類して集中できる環境を整理したものです。タイプ①はどんな環境でも、タイプ②は静かで囲われた環境、タイプ③はオープンな環境の方が集中でき、タイプ④はどの環境も集中できないと答えた人たちです。
集中できる環境には個人差があり、タイプ②は囲われていて周囲の音が聞こえにくいスペース、タイプ③は仕事で関わる人と集まれるオープンな環境を設けることが有効です。タイプ④は出社頻度が高く、事務職の人が多い傾向にありました。周囲からの問い合わせを受けることが多い職種であることから、オフィス環境の整備だけでなく集中する時間を確保するための工夫が必要です。
「集中」の捉え方から
働く環境を考えることが重要
調査の結果、どのような座席運用であっても執務席以外で集中作業をする人が4割以上もいることがわかりました。執務席以外にも集中作業ができる環境を設けることはワーカーのパフォーマンスを上げるために重要と言えます。
さらに、集中できる環境のタイプは4つに分類できました。①どんな環境でも集中ができる、②静かで囲われた環境の方が集中できる、③オープンな環境の方が集中できる、④提示したどんな環境でも集中ができない、の4タイプです。
タイプ②は最も多く、全体の約4割を占めました。人の往来の多い執務エリアから外れた場所に、パネルや壁で囲われた遮音性のある空間を設けることが有効です。タイプ③は情報システムなど、周囲と迅速なコミュニケーションが求められる職種に多い傾向がありました。周囲のメンバーの様子が感じ取れ、仕事で関わるチームやプロジェクトで集まって働けるオープンなスペースや運用が適しています。タイプ④は事務などの周囲からの問い合わせが頻繁に発生する職種に多い傾向がありました。環境だけでなく、特定の日や時間帯を集中タイムにするなど、自分の作業に没頭できる時間を職場全体で設ける工夫が求められます。
集中できる環境は個人差があり、オフィスづくりは一筋縄ではいきません。そんなとき、ここで提示する4つのタイプのその傾向が指標になるはずです。
さらに詳細な情報を掲載したPDF版(掲載ページP18〜)は下記バナーからダウンロードしてご活用ください。
Research: 嶺野あゆみ、野々田幸恵、鯨井康志、森田舞
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次(Beach)、堀内宏臣(Kanaalstraat Studio)
Illustration(Top Banner): noa1008
Production: Plus81
