働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGE
持続可能なチームをつくる
オフィスでは、個人で完結する仕事だけでなくチームで進める仕事も重要です。では、チームが成果を出し続けるために、オフィスの設えや環境面から支援できることはあるのでしょうか。
この記事では『KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2025 FEATURE #02 持続可能なチームをつくる』より一部内容を抜粋してご紹介します。
POINT:
- チームの持続可能性のためには「個人の健康」「チームの健康」「パフォーマンス」の3要素が重要。
- 「個人の健康」「チームの健康」「パフォーマンス」がいずれも良い状態にある持続可能性の高いチームは全体の34%だった。
- 持続可能性が高いチームに影響を与える環境として、チームの一体感を高める空間や自分の働きやすい環境を整える工夫が必要。
持続可能なチームを考えるポイント
オフィスでは個人で完結する仕事だけでなく、チームで進める仕事も重要です。チームで成果を上げるためには、企業全体としての対策を行うだけでなく、チームメンバー自身がチームの状態を理解し、自ら工夫していくことも必要です。そこで、メンバーが良い状態のまま成果を上げ続けるチームを「持続可能なチーム」とし、その実現のために必要なことを東京女子大学と共同で調査しました。

本研究では「個人の健康」「チームの健康」「パフォーマンス」がいずれも良い状態にあることがチームの持続可能性を高めると想定し、それぞれの関係を調べるとともに、チームの持続可能性に影響を与えるオフィスや働き方の条件を明らかにしました。
「個人の健康」はワーカーの心身の健康、幸福について調査しました。「チームの健康」は明確な指標がないため、既往研究を参考に「チームが健全であり、円滑に仕事を進め、成長している状態」をチームの健康と定義し、ワーカーに事前調査をしました。その調査結果から、「チームの健康」は、一体感、意義・やりがい、適材適所・評価、コンプライアンス・働きやすさを指標としました。「パフォーマンス」については個人とチーム双方について見ています。
持続可能なチームはどのくらいあるのか?

持続可能性が高いチームは、どれくらいの割合で存在しているのでしょうか。「個人の健康」「チームの健康」「パフォーマンス」それぞれの要素のスコアが高い人を「H」、低い人を「L」として3つの組み合わせに当てはまる回答者の割合を見てみました。その結果、3つとも良い状態にある「HHH」のチームにいる人(持続可能型)、3つとも良くない状態にある「LLL」のチームにいる人(機能不全型)がともに34% と高い割合で存在していることがわかったことは、特筆すべき点です。
この考え方を用いて「個人の健康」「チームの健康」「パフォーマンス」のうち、どこが自分たちのチームに欠けているかを知ることができます。ではその欠けている要素を高めてチームが良い状態のままで成果を上げ続けるためには、どのような働き方やオフィスの工夫が必要なのでしょうか。
持続可能なチームはどのような環境で働いているのか?

持続可能性が高いチームの3要素に影響を与える環境の特徴を見ていきます。空間・運用は「チームで集まる場所がある」「周りの様子が見渡せる」、家具は「多機能」であることが良い影響を与えます。裁量・権限は「意思決定・裁量」がある状況、仕事の工夫は「個人が働きやすくなる工夫」と「コミュニケーションの工夫」 が出来ることが影響を与えます。働き方の制度ですべての項目に良い影響を与えるのは「リスキリング」でした。
チームを持続可能にするためには
一体感を高める工夫と裁量を与えることが大事
本研究では、メンバーが良い状態のまま成果を上げ続ける「持続可能なチーム」であるためのオフィスづくりについて調査・分析しました。
調査からは、まず一体感を高められるような空間がポイントとなることがわかりました。具体的には、メンバーの様子が見え、チームで集まれる場所があるとよいでしょう。次に、働きやすさやコミュニケーションに対してワーカー自らが工夫できることがポイントになります。そのためにはICTやデバイスといったツール面でのサポートや、飲食を伴うコミュニケーションをとったり、リラックスしたりすることを受け入れる文化も欠かせません。また、仕事における意思決定の権限や裁量をチームに与えることも重要になります。チームの持続可能性を高めるには空間的な余裕が与えられていることや、裁量・権限が与えられていて、より自律的に行動ができるようにしておくことが有効だと言えます。
さらに詳細な情報を掲載したPDF版(掲載ページP10〜)は下記バナーからダウンロードしてご活用ください。
Research: 池田晃一、井熊七央海、森田舞
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次(Beach)、堀内宏臣(Kanaalstraat Studio)
Illustration(Top Banner): noa1008
Production: Plus81
