働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGE
オフィスが経営に貢献できること
ワーカーは自分自身のパフォーマンスとオフィスについてどのように捉えているのでしょうか。一般職や管理職のパフォーマンスの捉え方やその実態について調査しました。
この記事では『KNOWLEDGE - WORK DESIGN REVIEW 2025 FEATURE #01 オフィスが経営に貢献できること』より一部内容を抜粋してご紹介します。
POINT:
- ワーカーの6割以上がオフィスで働くことは自身のパフォーマンスに良い影響を与えると回答。
- ワーカー自身にパフォーマンスが発揮できていると思う状態について聞くと「切り替え実感」「効率実感」「協調実感」の3つのタイプがいた。
管理職が部下のパフォーマンスを評価する基準

パフォーマンスの捉え方について把握する上で、まず管理職に部下のパフォーマンスを評価する際に参考していることを尋ねました。回答が最も多かったのは「目標の達成度合い」、次いで「部下の行動を観察」することでした。また管理職自身の出社頻度にかかわらず、「部下からの報告(会議や相談)」は選ばれており、対面・リモートどちらでも工夫して部下の行動を観察しているようです。
さらに参考にしていることの組み合わせでのタイプ分けを見ると、行動観察し目標の達成度を中心に評価する「行動評価タイプ」、部下からの報告と自己評価シートが中心の「自己申告評価タイプ」、目標の達成度と顧客の評価が中心の「客観指標評価タイプ」に分かれました。部下の行動が観察しやすく、報告が受けやすい環境、目標の達成度合いを確認しやすい環境を中心に、管理職のタイプに応じた環境について考える必要がありそうです。
ワーカーのパフォーマンスの捉え方

次に、一般職のワーカーに自分自身のパフォーマンスが発揮できている状態について聞いたところ、最も回答者の割合が多かったのは「心身ともに健康である」、次いで「的確な判断ができる」でした。さらに、回答の傾向から統計的な手法でワーカーを分類すると、3つのタイプに分かれました。
1つめは、「オンオフの切り替えができている」などでパフォーマンスの発揮を実感する「切り替え実感タイプ」です。2つめは、「的確な判断ができる」「作業を早くこなすことができる」などで実感する「効率実感タイプ」。3つめは、「周囲との交渉や調整ができている」ことなどで実感する「協調実感タイプ」でした。働く上で、「パフォーマンス」はさまざまな場面で使いがちな言葉ですが、ワーカーによって捉え方が異なることがわかります。
オフィスはパフォーマンス向上に貢献するか?

一般職のワーカーに、オフィスで働くことが自身のパフォーマンスに良い影響を与えると思うかを尋ねると、6割以上が良い影響を与えると回答しました。良い影響を与えると回答した人にオフィスに必要な環境を尋ねると、「集中作業がしやすい環境」「上司・部下に相談しやすい環境」「リフレッシュがしやすい環境」「快適な空気(温度・湿度)」「チームメンバーと連携しやすい環境」が上位5項目に挙がりました。パフォーマンスの捉え方のタイプ別に見ると、各タイプともに上位5位は同じ環境となりましたが、「効率実感タイプ」は他のタイプより各環境を選択する割合が多く、よりオフィスに対する要求が高そうです。上の図に示した環境を中心にオフィスを考えることが、ワーカーのパフォーマンス向上を考える上で重要です。
オフィスはワーカーのパフォーマンスを
向上させ経営に貢献する
どのような空間づくりをすると、オフィスはパフォーマンス向上に貢献するのか、ワーカーに尋ねてみると、「集中作業がしやすい環境」「上司・部下に相談しやすい環境」「リフレッシュがしやすい環境」「快適な空気(温度・湿度)」「チームメンバーと連携しやすい環境」を特に重要視していました。
注意が必要なのは、ワーカーによって「パフォーマンスが発揮できている」と感じるときの状態が異なることです。その状態は「切り替え実感」、「効率実感」、「協調実感」の3つのタイプに分かれることが明らかになりました。
また、管理職を対象にした調査では、部下のパフォーマンスを評価する際に参考にするものの特徴から「行動評価」「自己申告評価」「客観指標評価」の3つのタイプの管理職がいることがわかりました。部下の行動が観察しやすい、報告を受けやすい、目標の達成度合いを確認しやすい環境が求められます。部下やチームの様子が見渡しやすいオープンな環境や、気軽な会話で確認や報告が進むようなカウンターがその一例です。
この章では、具体的なオフィスづくりのヒントを紹介していきます。また、この結果に関連してKNOWLEDGEの以降の各章では「チームが良い状態で成果を出し続けるために必要な環境」「集中しやすい環境」「気分転換につながるオフィスライブラリー」というテーマを設定しました。パフォーマンス向上が企業の経営に貢献するオフィスのつくり方について多角的かつ具体的に考察していきます。引き続き記事を公開いたしますので、ぜひご覧ください。
さらに詳細な情報を掲載したPDF版(掲載ページP04〜)は下記バナーからダウンロードしてご活用ください。
Research: 嶺野あゆみ、野々田幸恵、鯨井康志、森田舞
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次(Beach)、堀内宏臣(Kanaalstraat Studio)
Illustration (Top Banner): noa1008
Production: Plus81
