働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGEオフィス環境は人材の確保・育成に役立つ?
オフィス環境を工夫することは、人材の確保や育成に役立つのでしょうか?
企業の役員や経営者を対象に、調査しました。
POINT:
- 7割の経営者が「優秀な人材の確保」「人材の育成」を課題と感じており、過半数の経営者がオフィスを見直すことでこれらの課題の改善が期待できると答えた。
- 「優秀な人材の確保」「人材の育成」のために、採用活動時にオフィス見学を取りいれることや、1on1の実施や研修などに対応するオフィスの工夫が考えられる。
人材の確保や育成に
オフィスは関係する?
近年、人材の確保や育成を経営課題と捉える企業が増えています。しかし、オフィスが人材の確保や育成に役立つかどうかについては、これまでほとんど触れられてきませんでした。
では、人材の確保や育成にオフィスは貢献できるのでしょうか。そこで、オフィスを構えている企業の経営者・役員を対象に、「自社の経営課題」と「オフィスを見直すことで改善が期待できる経営課題」についてアンケート調査を行いました。
オフィス環境を見直すと
課題を改善できる?
まず、アンケートでは自社の経営課題を尋ねました。回答結果の上位2つに「人材の育成」「優秀な人材の確保」が挙がり、7割の経営者がこれらの課題を意識していることが明らかになりました。やはり高い注目が集まっているとわかります。
次に、この2つの項目について「オフィスを見直すことで改善が期待できるか」と質問したところ、半数の経営者・役員が「オフィスを見直すことで改善が期待できる経営課題である」と回答しました。
このことから、人材の確保や育成を考えるうえでオフィスは大切な役割を担うといえそうです。では、具体的にオフィスをどのように工夫するとよいのでしょうか。
オフィス見学が
人材確保につながる
まず、人材の確保を考えるうえで、採用活動時にオフィス見学を実施することが有効と考えられます。実際に新卒1年目の社員に聞いたところ(※1)、半数以上の人が「会社を決める上でオフィス環境を重視した」と回答しています。
また、「清潔感」「社員の活気」「スペースの余裕」が、オフィスの印象を決定づける要素ということもわかっています。清潔感のあるインテリアやゆとりのあるレイアウトを取り入れるとともに、会議室やオープンなミーティングスペースを設置して活気ある議論が行えるようにもすることも有効かもしれません。
人材育成に有効な
2つの工夫
人材の育成については1on1(上司が部下の声に耳を傾けるための対話の時間)の推進が重要であると考えられます。対話を通じて企業や事業の成長と、個々人の成長の方向性を一致させていくことで、やりがいや働きがいを感じられるようにするとよいでしょう。
その上で、オフィスでは1on1が快適に行える環境を用意することが大切です。調査の結果(※2)からは、1on1では対話相手との位置関係が重要で、相手が希望する座り位置を選択できる環境を整えることが望ましいことがわかっています。
また、近年では人材育成のための研修の拡充や、ワーカーが主体的に学習できる機会を提供する企業内大学を導入する企業も見受けられます。オフィスにおいては、プログラムの内容に合わせてレイアウトが変更しやすい研修スペースや、オンライン研修が受講しやすいWEB会議ブースを設けることも有効でしょう。
今後のオフィスを見直すきっかけとして、これらの結果をぜひ参考にしてみてください。
※2 参考記事:上司、部下、それぞれが考える理想の1on1環境とは?
Research: 嶺野あゆみ、野々田幸恵
Edit: 吉田彩乃
Illustration: 川添むつみ
Production: Plus81