働き方・働く場の研究と視点
KNOWLEDGEハイブリッドワークにおける作業姿勢と健康
オフィス勤務と在宅勤務を併用する「ハイブリッドワーク」が浸透したいま、
ワーカーはどのような姿勢で作業しているのでしょうか。
作業姿勢と心身の健康の関係について調査しました。
POINT:
- オフィスと自宅で勤務する時の作業姿勢の特徴から、オフィスと自宅ともに椅子座位中心のタイプ、オフィスと自宅で作業姿勢が異なるタイプの2つに分かれた。
- 椅子座位で体幹が直立した姿勢、後傾した姿勢を中心にとっているタイプは、肩こりや腰痛などの症状を感じる人の割合が少ない。
- オフィスと自宅の両方で椅子座位で前のめり姿勢が中心のタイプと、自宅で働く際にあぐらや立膝などをとるタイプは、肩こりや腰痛などの症状を感じる人の割合が多い。
オフィス・自宅の作業環境は?
オフィスとテレワークを使い分けるハイブリッドワークが浸透する中で、ワーカーはどのような作業姿勢で働いているのでしょうか。オフィスであれば作業内容にあった机や椅子が揃っていますが、自宅では作業内容にあった家具が備わっていない可能性があります。そんな中、疲労を軽減し快適に働くには、好ましい作業姿勢がとれるようにオフィス・自宅双方の作業環境を整えることが大切です。
そこで株式会社TATAMI とオカムラは、オフィスと自宅で働くハイブリッドワークに着目し、オフィス勤務と在宅勤務を併用するワーカー943名を対象に作業環境および作業姿勢の実態と健康状態についてアンケート調査を行いました。調査では、ワーカーに作業する時にとると想定される10種類の姿勢の画像を提示し、オフィス勤務時と在宅勤務時のそれぞれで、1日のうちに各姿勢をとっている時間の割合を回答してもらいました。
作業姿勢の割合から見た6つのタイプ
オフィスと自宅で勤務する時にとる作業姿勢の割合をもとに統計的な手法を用いて回答者をタイプ分けした結果、6つのタイプに分類できました。それぞれのタイプの特徴を見ていくと、オフィスと自宅でとる作業姿勢の割合が似た傾向にあるタイプ1〜4と、異なる傾向にあるタイプ5~6に大きく分かれます。
まず、タイプ1〜4について見ていきます。オフィス、自宅ともに椅子座位中心の人たちは、直立姿勢中心のタイプ1、後傾姿勢中心のタイプ2に分かれました。前のめり姿勢が多くみられたタイプの人たちは、前のめり姿勢中心のタイプ3、前のめり姿勢を4割程度、その他に直立姿勢、後傾姿勢などをとっているタイプ4に分かれました。次にオフィスと自宅で作業姿勢が異なる傾向にあるタイプの人たちは、オフィスでは椅子座位中心で、自宅ではあぐらが中心のタイプ5、立て膝や足を前に伸ばす長座などをとっているタイプ6に分かれました。
作業姿勢と心身の健康の関係は?
さらに、前述の6つのタイプ別に心身の健康状態を調査するために、厚生労働省の「職業性ストレス簡易調査票」などを参考に身体的健康・心理的健康に関する4つの項目を設定し、分析を行いました。
示した数字は、症状を感じる頻度について「ほとんどあった」「しばしばあった」と回答した人の割合の合計です。「肩こり」「腰痛」「気がはりつめている」「何をするのも面倒だ」すべての項目に共通して、タイプ1・2は症状を感じる人の割合が、タイプ3〜6より少ない傾向にありました。
以上より、ハイブリッドワークにおける作業姿勢の違いは心身の健康に影響を与えている可能性があると考えられます。タイプ3〜6のような前のめり姿勢が多い人たちや自宅で床座をとる人たちは、健康の視点から作業姿勢の見直しが必要と言えるでしょう。
前のめり姿勢や床座での作業を見直してより健康的に働く
今回の調査では、オフィスと自宅で働く際にとる作業姿勢の割合から、ワーカーを6つのタイプに分類し、その特徴を明らかにしました。健康面から分析すると、タイプ1・2のような椅子座位で体幹が直立した姿勢、後傾した姿勢を中心にとっているタイプのワーカーは、他のタイプと比較すると健康状態がよいことがわかりました。どちらのタイプも椅子の背もたれに背中をつけた姿勢を中心にとることで、身体にかかる圧力が分散しやすくなったことが影響していると考えられます。では、その他のタイプのワーカーは、どの様な点に注意が必要なのでしょうか。
まず、タイプ5・6のように、自宅で働く際にあぐら、立膝や長座をとることは、骨盤が後ろに傾き体に負担がかかりやすい姿勢になります。そうならないように、できるだけ背もたれに寄りかかれる椅子に座ることをおすすめします。
また、回答者全体の6割を占めていたタイプ3・4のような、オフィスと自宅どちらも椅子座位で前のめり姿勢が中心のワーカーは、前のめりの姿勢によって頸椎や腰椎の適切なカーブが保ちにくいことや、腹部が圧迫されることで、肩こりや腰痛を引き起こしている可能性があります。頭の位置が身体の真上にくるようにし、オフィスでも自宅でも、サブモニターやパソコンスタンドを用いて自分の目の高さよりやや下の位置に画面がくるように調整するとよいでしょう。天板高さや角度が調整できる机を使用するのもおすすめです。実際に天板昇降・傾斜機能のあるデスクを使った検証では、前のめりになりがちな姿勢から上半身が起き上がる傾向があることがわかっています。そしてどんな姿勢であっても長時間同じ姿勢を取り続けないようにすることも大切です。
今後、ワーカーが心身共に健康的に働くために、企業としてはオフィスと自宅双方の作業環境の整備を行っていくハード面の支援はもちろん、ワーカー自身が以下のような作業環境や姿勢のポイントを知り、意識してもらうための教育についてもあわせて行っていくことが重要になります。
Research: 嶺野あゆみ、浅田晴之(オカムラ)
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次、藤井花(Beach)
Production: Plus81