働き方・働く場の研究と視点

KNOWLEDGE

【新刊紹介】人が集う場に必要なものを考える
『「行きたくなる」オフィス 集う場のデザイン』

2024.4. 3
  • Collaboration
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コロナ禍で自由に集うことができない状況を経験したいま、
リアルで集まることの意味や、集う場づくりに必要なものは何なのかが問われるようになりました。
2024年春の新刊『「行きたくなる」オフィス 集う場のデザイン』は、
人が集い、新たな価値を創造していく場に必要な要素について考えるための一冊です。 


「行きたくなる」オフィスとは何かを考える

長かったコロナ禍を経て、集うことの制限がなくなり、リアルに顔を合わせる日常が戻ってきました。一方で、リモートでも仕事が進められるようになり、目的や理由がなければオフィスに出社しないという人もいるのではないでしょうか。

あらためて問われているのが、オフィスに集まる価値です。 オフィスには、リアルだからこそ生じる思いがけない出会いや会話、さらに、いまのリモート技術では実現できない感情共有や体験が求められています。では、どのように集うことができれば、よりよい働き方が実現するのでしょうか。そして、出社したくなるオフィスとはどのような場なのでしょうか。

2024年春の新刊『「行きたくなる」オフィス 集う場のデザイン』(彰国社)は、人が集い新たな価値を創造するためにはどのような環境が求められているのかを考証した一冊です。オカムラの研究所が40年以上にわたって取り組んできた「働く」に関する研究の結果をもとに、「空間」「視線」「接触」「位置」という四つのキーワードからコミュニケーションを活性化させる働く場のデザインを紐解いていきます。


オフィスに行きたくなる4つのポイント

本書の「空間」の章では、「行きたくなる」オフィスとはどのような場所かについておこなった検証を掲載しています。ここでご紹介する調査の結果から、オフィスには「仕事の内容に適した場所を選べる」、「リラックスして発想が広がる」、「メンバーとのつながりを感じる」、「居心地がいい」という4つの要素が求められていることがわかりました。

仕事の内容に合う、メンバーとの交流といった視点は、何十年も前からオフィスで重視されてきた点です。近年さらに求められるようになったのが、リラックスできることや居心地の良さといった、個の心理的な視点です。

また、以前から重視されていた「メンバーとの交流」についても、現在の状況に合わせて考えを深めていく必要があります。例えば、会議室のような無機質な場所を設けているだけでは、偶発的な出会いや交流は生まれません。メンバーとのつながりが生まれる「きっかけ」となる仕掛けや工夫が必要です。その場所に一緒にいたいと思えること、そのような気持ちになる居心地のよい環境が、働く場所に求められるようになっています。


集中が途切れないスペースとは?

人との交流や会話を求めてオフィスへ出社する時もあれば、個人作業を進めるために出社することもあります。自宅やカフェでは気が散ってしまうとき、集中することを求めてオフィスに行った経験がある人もいるのではないでしょうか。

近年のオフィスは、コミュニケーションをとりやすい環境にするため、空間全体が見通せるオープンなつくりが主流となっています。しかし、あまりにもオープンすぎると、周囲の視線が気になって落ち着かなかったり、集中できなかったりします。

本書の「視線」の章では、仕切りの位置やサイズの視点から、オープンな空間でありながら集中も確保できる環境づくりについておこなった検証を掲載しています。

この章では、仕切りの位置とサイズについて、集中しやすい4つの条件を紹介しています。圧迫感をやわらげながら程よく集中するには頭から腕が隠れているが望ましく(上図A)、また、頭頂から腕までを隠すと最も集中しやすくなる(上図D)ことが、研究の結果からわかっています。


オフィスづくりを考えるときの参考に

本書ではここでご紹介した内容のほか、チームでのプロジェクトを活性化させるための場づくりや、会議で使うディスプレイの位置、立ち姿勢と作業効率の関係性など、さまざまなトピックで「行きたくなる」オフィスとは何か、また、集う場のデザインについて考証をしています。さらに、後半では建築家と哲学研究者へのインタビューを通じて、リアルに集まることの意味、集う場づくりにいま何が求められているのかを探っています。

建築やデザインに携わる方はもちろんのこと、働き方の改善やオフィスのリニューアルを検討されている方や、オフィスに人を集めたいとお考えの経営層の方にもおすすめの一冊です。


『「行きたくなる」オフィス 集う場のデザイン』の目次

空間
働き方が変わったいま、出社したくなるオフィスとは?
チームを活かすことができるのはどんな場所?
カジュアルな空間は、仕事のパフォーマンスを上げる?

視線
集中が途切れないのは、どんなスペース?  
グループワークを活性化させる座席の向きは?  
ノートパソコンは各自持参。それでも会議にディスプレイは必要? 

接触  
会話中の動きは、私たちのどんな意識を表している?
立ち話の最中、どこかに触れたくなるのはなぜ?  
立ったまま会話をする2人の間に、テーブルは必要? 

位置
2人の共同作業がはかどるのは隣の席、それとも?  
四角いテーブルと丸いテーブル、共同作業にどう影響する?
立ち姿勢が仕事の効率を上げるって、本当?
ローテーブルやソファは、どんな仕事に向く?

インタビュー
大西麻貴(建築家)+百田有希(建築家)
永井玲衣(哲学研究者)


本書は全国の書店やAmazonでお買い求めいただけます。

「行きたくなる」オフィス 集う場のデザイン
2,200円(税込)
著者:花田愛
出版社:彰国社
発行日:2024年4月10日
単行本:208ページ

Text &Edit: 吉田彩乃
Book design & Infographic: 田部井美奈、栗原瞳子
Illustration: 斉藤弥世
Production: Plus81 inc.