働き方・働く場の研究と視点

KNOWLEDGE

ABWとクリエイティビティ

2023.12.18
  • Creativity
  • Research
  • Workstyle

ABWを採用するとどのような効果があるのでしょうか。
ABWに対応したオフィスで働くワーカーの行動のデータから、
場所を使い分けながら働くこととクリエイティビティの関係を探りました。

POINT:

以下の二つの行動パターンを取っている人のクリエイティビティが最も高いことがわかった。

  • オフィスに出社した際の1日当たりの滞在時間が3~5時間程度であること
  • オフィスに出社した際に 利用場所が適度にばらついていること(拠点となる場所を持ちつつ他の場所も適度に使い分けながら働いている)

ABWを実践している人はどんな人?

ABW実態調査では、ABWのような働き方は「個人」「チーム」の両方に対して、仕事に良い影響を与えていることがわかりました。ここでは、「クリエイティビティ」に着目し、実際にクリエィティビティが高い人はABW に対応したオフィスでどのような行動をしているのか、オカムラは東京大学大学院、ディスカバリーズ株式会社と共同で調査をしました。

調査では、オカムラのABWに対応したオフィスで働くワーカー170名を対象にクリエイティビティの評価と行動パターンとの関係を分析しました。行動パターンはビーコンを用いて取得し、クリエイティビティの評価は「単純に独創的・斬新なアイデアを思いつくだけではなく、実現に向けて周囲を巻き込んだり、適切な計画を立てたりするなど、実務家としての能力も含めた、広い意味での創造・革新行動」と定義しました。


オフィス滞在時間とクリエイティビティ

分析の結果、二つの行動パターンがクリエイティビティの高低に関係することがわかりました。一つ目は、時間に関する行動パターンです。

オフィスに出社した際の1日当たりの滞在時間について、対象者数がおおよそ均等になるように3つのグループに分けると、3〜5時間程度のグループのクリエイティビティが最も高いことがわかりました。

調査の対象となったワーカーの就業時間は約8時間なので、就業時間中ずっとオフィスで働いているわけではないことを示しています。この傾向は、職種を考慮に入れても変わらないため、すべての職種において集中作業をシェアオフィスや自宅で行うなど、オフィス以外で働く時間をある程度設け、オフィス以外の場所も含めたABW を実践するワーカーの方がクリエイティビティが高いといえそうです。


場所の使い分けとクリエイティビティ

二つ目は、場所についての行動パターンです。ABW はさまざまな場所を使い分けて働くことが前提となりますが、どのような配分で場所を使い分けるのが良いのでしょうか。そこで、本研究では、利用場所のばらつきに着目して分析を行いました。

オフィスに出社した際の利用場所のばらつき度によって対象者数をほぼ均等になるように3つのグループに分けると、利用場所が適度(中程度)にばらついているグループのクリエイティビティが最も高いことがわかりました。

どのくらい空間が多様かはオフィスによって異なりますが、ばらつき度は場所を均等に使い分けると高い値になりやすく、特定の場所に長時間滞在すると低い値になります。つまり、用意された選択肢をどのように使うかが、クリエイティビティと関係していたということになります。


利用場所のばらつき度が「中」程度の人はどんな人?

前述の利用場所のばらつき度については、経済学で用いられる手法を参考に、各ワーカーのオフィスの利用場所ごとの利用時間割合から算出しました。

上図は、「オフィス内の利用場所のばらつき度とクリエイティビティの関係」の3つのグループの中から任意に選んだ3名の場所の利用時間割合を示しています。同じ場所で仕事をしていてほとんど動いていない人は、ばらつき度が低くなります。さまざまな場所で仕事をしている人で、拠点となる場所を持つ人は、ばらつき度は中程度になり、拠点となる場所を持たない人は、ばらつき度が高くなります。


ワーカーに働く場所や時間を
選択する裁量を与えることが重要

今回の調査からは、仕事をする場所をオフィスに限定していないワーカーと、オフィス勤務の際には、拠点となる場所を持ちつつ他の場所も適度に使い分けながら働いているワーカーのクリエイティビティが高いことが分かりました。

働く場所の視点では、ワーカーが普段オフィス内でどんな場所を拠点としているのかを把握し、居場所として好まれる場所の特徴をふまえてオフィスを改善していくことが大切になるでしょう。働き方の視点では、テレワークやフレックスタイムなどの制度を用意して、ワーカーが主体的に働く時間や場所を選ぶことができるように適度な裁量を与えておくことが重要になるはずです。

また、それぞれのワーカーによって与えられる裁量が変わってくることにも注意が必要で、ワーカーごとの差を把握するために、1on1のような相互理解を促す取り組みを積極的に取り入れることが役立つでしょう。ワーカー各人の経験や能力を見極め、適切な裁量を与えること。そして、主体性を発揮できる状態を把握し、適切な環境に改善することでワーカーのクリエイティビティを引き出していくことが求められます。

Research: 牧島満(オカムラ)
Edit: 吉田彩乃
Illustration & Infographic: 浜名信次、藤井花(Beach)
Illustration (Top Banner): カワイハルナ
Production: Plus81

詳細な情報を掲載したPDF版(掲載ページP15〜)は下記バナーからダウンロードしてご活用ください。