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自治体における働き方改革

【対談者】

合同会社KUコンサルティング 代表社員 髙橋邦夫氏
WLBC関西 取締役 福井正樹氏

豊島区役所に29年在席、新庁舎建設時にはCISOを務め、現在は総務省地域情報化アドバイザー・テレワークマネージャーとして活躍される髙橋さんと、多くの自治体に働き方改革・ワークライフバランス推進のコンサルティング・研修を実施されている福井さん。
「自治体における働き方改革」をテーマに、なぜ、自治体において働き方改革が進みにくいのか、推進するための仕掛けについてお伺いしました。

3章:これから働き方改革をしようとしている自治体の方へ

──現在取り組まれている自治体向けのコンサルティングは、どのような形で進められているのですか?

福井 庁内の有志15人で進めている案件があります。行政職員としてよりよい仕事がしたいという人や、現状に不満をお持ちで変えていきたいという人などに集まっていただいて、タスク管理と無駄削減とチームに分かれ、全庁的にプロジェクトを進めています。タスク業務規程や無駄削減のためのシステムを作り、無駄な業務を見つけてはやめる、ということを行っています。

──無駄な業務というのは、各部署で共通するものですか?それとも、部署ごとに異なるのでしょうか?

福井 結構、共通している部分も多いです。特にデスクワークにおいては、8割程度は共通しているのではないでしょうか。

髙橋 無駄削減など共通している課題については、部署の垣根を超えた共有の場を設け、共通の問題意識があることに気付くことができると、全庁的な働き方改革が一気に進むと思います。

福井 ある保育園の例で、その園にはパソコンが1台しかなく、先生方が保護者へお便りを作成するために順番待ちし、大変時間がかかっていた、という件がありました。こちらの保育園は、結果的に予算を確保してタブレットを導入し、おたよりをアプリにしました。保育士1人ひとりがタブレットを持っていれば、各々が園児の様子を動画で撮影してアプリに掲載することができ、仕事も楽になります。 また、ある県の道路維持管理課の人がこのアプリの話をご自身の課題に適用されたという例もあります。その方は、県民からの苦情・要望窓口を担当しており、実際に報告を受けた現場へ行ってみると状況が異なり、無駄足が多いという問題を抱えていました。そこで、県民からの情報提供の際、動画か写真を撮って、画像を送っていただき、そのデータを基に判断をしてから出動する、という流れに変えたところ、出動回数が6割程度削減されました。こちらの例は、現場に行く無駄足をなくすという働き方改革をIT化で実現しています。

髙橋 ICTはお金がかかるイメージがありますが、実は、コスト削減ができる一面もあります。

福井 そうですね、実は費用対効果が高くてよいと思います。文書削減のためのICT導入も同じことだと思います。「紙が悪い」と言っている訳ではなく、紙よりも便利な道具があるのだから、それを使いませんかということです。コストの削減にもなり、仕事量も減り、かつミスが減るなどクオリティーが上がることもおおいにありえます。ただ、ひとつ言わせていただきたいのですが、働き方改革のマインドを理解し、やり方を変えることで業務効率化していくということが、きちんと腹に落ちてからICTを導入しなければ、その投資が無駄になることもありますので、注意していただきたいです。

髙橋 本当にその通りです。今までの仕事のやり方を変えるためにICTを導入するにも関わらず、過去のやり方を部分的に残すと、ダブルスタンダードになってしまい効率化は図れません。

──確かに、本来どうして働き方を見直すのか目的やマインドを整理・共有していないと、本末転倒になってしまいますね。



──では最後に、自治体の職員の働き方がどのようになってほしいか、また、自治体職員の方々にエールをお願いいたします。

福井 ご自身のお子様と過ごす時間も十分に確保ができない程、超過勤務が多すぎて大変な方や、精神的なストレスを抱えてしまう方もいらっしゃると思います。そんな状況を続けるのではなく、みなさんから意見を挙げ、費用対効果の高い施策として上司へ提案してみてはいかがでしょうか。働き方改革が成功した暁に、みなさんが手に入れるのは「時間と金と愛」だと、私は思っています。自治体の職員が、心身ともに健康で仕事に人生がつぶされないような生き方、かつご自身の能力がきちんと発揮でき、住民サービスが充実させられるような働き方になってほしいと思います。

髙橋 聡明で努力家な人ほど、完璧を求める傾向にあると思うのですが、そこで発想の転換をして、正確性を落とさずに、短時間で業務が完遂する仕組みを作りたいなと思っています。第二の自分を期待している訳ではないですが、これからの時代の公務員は、ご自身の人生を満喫してほしいです。定時で仕事を終わらせ、街に出て、色々な知見を増やし、その知見を仕事に活かしてより好まれる公務員になっていただければ嬉しいです。

──本日はありがとうございました。<完> 実際に自治体で働いてきた経験談や、様々なコンサルティングに裏付けられたお二人のご意見は、非常に的確で納得できるお話でした。同時に、働き方改革に取り組む自治体職員の皆様へ、想いのこもった熱いエールと感じました。

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