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自治体における働き方改革

【対談者】

合同会社KUコンサルティング 代表社員 髙橋邦夫氏
WLBC関西 取締役 福井正樹氏

豊島区役所に29年在席、新庁舎建設時にはCISOを務め、現在は総務省地域情報化アドバイザー・テレワークマネージャーとして活躍される髙橋さんと、多くの自治体に働き方改革・ワークライフバランス推進のコンサルティング・研修を実施されている福井さん。
「自治体における働き方改革」をテーマに、なぜ、自治体において働き方改革が進みにくいのか、推進するための仕掛けについてお伺いしました。

1章:なぜ自治体において働き方改革が進みにくいのか。改革を進めるのに必要なマインドとは?

──国を挙げて取り組みが進んでいる働き方改革ですが、なぜ、自治体において、働き方改革が進みにくいとお考えでしょうか?

福井氏(以下、福井) 働き方改革を進めずとも、指摘されることもなく、行政経営を圧迫するようには表向き見えにくいので、変えなければいけないというマインドや意識があまりないことだと考えています。

髙橋氏(以下、髙橋) そうですね。現状のままで十分という意識があるのではないかと、私も思います。

──周囲との比較や、より良くしたいという風土ではないということでしょうか?

福井 周囲の環境と比較をするとしても、自治体同士での比較になり、民間企業は比較対象にならないことが多いです。ただ、世代間において意識の格差はあり、若い世代ほど、現状の働き方について「このままではいけない」と気付き始めているのではないかと感じています。ですが、部長に意見しづらく、課長を通さなければいけないといった環境ではなかなか、その気付きを働き方改革につなげられないこともあります。役所というのは、比較的若い職員が自由に仕事をできる環境だと思うのですが、上司に対して意見しづらいというところがネックになっているような気がします。

髙橋 職員は、任せられた範囲においては好きなように仕事を進めることが可能ですが、自身の裁量は決まっています。良い意味で言えば、“個別最適”はできていると思いますが、悪い意味で言えば、各部門が別々に改革を進めようとしており、“全体最適”が出来ていません。そうすると、各部門の課題に対してしか改革が進みませんので、自治体全体で変わろうという動きになりません。

──働き方改革に取り組むこと自体が業務になれば、改革が進むと思いますが、上司を動かすために、部下はどう動いたらいいのでしょうか?

福井 費用対効果を提案すると良いと思います。例えば、「1000人の職員に対して年平均25%時間外勤務が減ります」など、具体的数値で示すと上司に伝わりやすくなるのではないでしょうか。その取り組みが、今後10年、20年と続いていけば、莫大なコスト削減になることは明らかです。

髙橋 現実問題として、自治体こそ「働き方改革に取り組まなければいけない状況にある」と感じています。しかし、やらなければという危機感や切迫感よりも、残業時間さえ減らすことが出来れば良いというところで着地し、本質を見失っているケースが多いように感じます。本来、仕事のやり方を見直し、働き方を変えることで、結果的に時間が減っていくわけですので。

福井 私は、ボトムアップ(部下から上司に働きかけて行うということ)で働き方改革を進めた自治体の方が、定着につながると思っています。行政のトップは、市長や知事ですが、任期があるのでその継続性が懸念されます。ある意味で実際のトップは、長年業務に携わっている課長や部長なのではないかと、私は思っています。

──では、実際にボトムアップによりスタートした自治体は、どのように働き方改革を進めていらっしゃるのでしょうか?

福井 ある自治体の人事課では、「はたらくということにきちんと向き合う意識改革」が何より重要と考え、人事課主導により改革を進めています。現在、管理職・一般職・主任級への研修を行っています。独自のやり方で仕事を進めようとする、頑なな管理職の方もいらっしゃったのですが、そのような方に対しては、弊社コンサルタントと1対1でじっくりと向き合う時間を取り、課題を紐解くことで解決へつなげています。

髙橋 私の経験談になりますが、新庁舎建設のタイミングで取り組んだ豊島区での取り組みもボトムアップ事例のひとつではないかと思います。当時の区長は、「紙に囲まれて働くことは止めよう」という方針を私達に与えただけで、具体的な進め方までは介入しませんでした。「どうしたら業務において紙の利用が必須の環境から脱却できるか」など課題を与え、具体的な施策は、部下がどうしたら実現できるかをみんなで一緒に考える。これもボトムアップなのではないでしょうか。

福井  私がお手伝いした自治体の中にも「やり方を知っているがあえて言わない」という市長がいらっしゃいました。この方も、手順までは説明をせず、職員に考えて行動してもらうというスタンスです。

──自治体職員が自ら考え創り上げることで、働き方改革の定着につながる導きをされたのですね。また、職員自身も改革の一躍を担うことで、モチベーションアップにもつながるように思います。

福井 それについては、いい例がありますよ。採用応募が少ないという課題を、職員のアイデアによりWEB面接導入で年間4000人の応募につなげた、という施策もあります。もともとアイデアを出された職員は、働き方改革の否定派だったのですが、私の研修を受講されて、業務への取り組みや考え方に変化があったようです。このように、ボトムアップで働き方改革を進めた自治体の方が、定着につながり、継続的に推進できると思っています。そのためには、誰でも意見を挙げていく、または、挙げることができる環境を作ることが大切だと思います。

──働き方改革の波及効果が良い形で表れていますね。 また、今後は“シニアになっても働く”という時代かと思います。シニア世代活用は、また別の課題になるかと思いますがいかがでしょうか。

福井 数年ほどで定年退職をされる50代のマインドに変化を起こすことは、難しいなと感じています。とはいえ、管理職向けに働き方改革のワークショップを10回ほど開催すると、3回目くらいに、推進派と反対派、どちらでもないと意見が分かれてくるのですが、意見を交わしていくうちに、もともと反対派であった人も、徐々に推進派に変わってくるということもあります。

──反対しているからといって無碍にするのではなく、一緒に良い方向に進んで行こうというスタンス、意見交換できる環境があることが大切ですね。またシニア世代は、特にICTを苦手とする方も多いと思うのですが、ICT環境を新しく導入する場合、反発はあるものなのでしょうか?

髙橋 はい、実際にありました。そこで、個人利用のプリントアウトは問題ないということを説明し、一方でIT電話を導入したり、無線LANに変え電子会議にしたりするという、全体の改革の動きについては受け入れていただきました。ベテラン職員に対して、身内職員からの意見はなかなか通りませんが、第三者の意見であれば耳を傾ける場合もありますので、是非私のような外部の者を有効に使ってほしいですね。

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