ソリューション

SOLUTIONS
  • 特別企画
  • 対談

自治体における働き方改革

【対談者】

合同会社KUコンサルティング 代表社員 髙橋邦夫氏
WLBC関西 取締役 福井正樹氏

豊島区役所に29年在席、新庁舎建設時にはCISOを務め、現在は総務省地域情報化アドバイザー・テレワークマネージャーとして活躍される髙橋さんと、多くの自治体に働き方改革・ワークライフバランス推進のコンサルティング・研修を実施されている福井さん。
「自治体における働き方改革」をテーマに、なぜ、自治体において働き方改革が進みにくいのか、推進するための仕掛けについてお伺いしました。

2章:具体的な実例

──オカムラでは、働き方改革の取り組みの一つとして“業務の棚卸”を行いました。まずやる事を書き出し、本当に必要か、そのやり方で良いのかという見直し行いました。現状の自治体においても「優先順位を付けたり、この業務はやらなくて良い」という判断をすることは可能なのでしょうか?

福井 すでに自治体でやっていますよ。それでも、全体の業務のうち絶対必要もしくは絶対不必要が、それぞれ2割程度になり、残り6割はどちらつかずという “グレーゾーン”に仕分けられ、「これは残した方がいいのでは?」という意見があると、そのまま残ってしまう傾向があるのではないかと思います。

髙橋 私は元自治体職員でしたのでよく分かるのですが、自治体の人は文章を書くことに長けており、要望があると少数意見か多数意見かに関わらず、文章の表現で必要な事業にしてしまうものも多いような気がします。業務の棚卸には、事業自体が不要だというものと、事業自体は必要ですがやり方を変えなくてはいけないものがあるのではないかと考えています。

福井 ある市の例で、地元消防団の集会統括業務について、相談いただいたことがあります。消防団の人が正装をしている関係上、公共交通機関での移動が難しいため、市の職員が休日返上で公用車を何往復もさせて随行していたのですが、休日出勤手当など無駄が多いので、良い方法はないかとの相談でした。 電車移動は難しいと思うので、タクシーチケットを提案しました。この方法であれば、職員一人の休日出勤分より費用としては安価で済みます。

──その方はなぜ福井さんに相談されたのでしょう?

福井 何かおかしいとは思っているけれども、ご自身の考えが正しいのかどうか不安なのだと思います。私のような外部の人間が、同意見だと言ってくれることを期待している部分も少なからずあるのではないでしょうか。個人レベルで持っている問題提起が、働き方改革に結び付くのだという自信を持つことができれば、あとは進んで行くと思います。

──職員ひとりひとりが気付き始め、お二人のような方に後押ししていただければ、もっと小さな改革からでも始められそうですね。そう考えると、やり方を変えるという、現場レベルで出来ることはまだまだありそうですね。

髙橋・福井 はい、たくさんあると思います。

福井 自治体において文書削減が課題に挙がることが多いですね。ある県のコンサルティングの際に、供覧を紙に印刷することが文書管理規定の規則になっているのかを調べたことがあるのですが、実際にはそのような規定はありませんでした。パソコンがない時代から長年続いてきたことなので、規定の一部であると思っている職員は多いです。たとえ規定に「紙に印刷することが条件」とあったとしても、そもそもの規定を変えて電子捺印にするなど視野に入れるべきだと思います。

髙橋 課長職の方は、ご自身で思っている以上の決定権限をお持ちです。福井さんがおっしゃったように、文書管理規定の内容変更の承認も可能で、規定自体を変えてしまうくらいの勢いでいいと思います。よく、自治体へ支援に伺うと、「これは規則にあります」とか「要綱にあります」となり取り組みが進まないことがあるのですが、要綱においては課長権限で変えることができるので意固地になる必要はないと思います。

福井 基本的に、職員は法律に準じて業務を行います。均一な蓄積ができ、常に同じ判断基準をお持ちで、これは公務員の強みなのですが、やり方を考えて変えていけるとより良いと思います。過去何十年も同じやり方でやってきた当時は、今ほど業務量は多くなく、住民からのニーズももっと単純でした。ところが、今は業務量が多く内容も多岐にわたるので、それに合わせてやり方も変えていくべきだと思います。そうしないと、業務をこなすことに追われ、結果的に住民サービスは低下してしまいます。

髙橋 明らかですね。また、職員のワークライフも多様化しており、豊島区の場合、子供のお迎えがあり夕方以降は残ることができないので、定時よりも早く始めたいという人や、電車のラッシュ時を避けたいという理由で、早く来る人がいらっしゃいました。そこで、豊島区は、7時半から16時半、9時半から18時半というかたちで勤務時間を組み、“ずれ勤”を認めました。区役所としては、第一号でした。

──フレキシブルな対応策を考えることも必要ですね。

髙橋 また豊島区では、窓口で区民を2時間も3時間も待たせてしまうことはサービスとして良くないと考え、週末も窓口を開けています。週末に出勤している職員は、平日に休みを取得しています。このようにイレギュラーに見える勤務形態も規定上、全く問題はなく、むしろ自治体の営業時間が月曜から金曜の8時半から17時15分までという意識が固定概念として、ひとり歩きをしてしまっている気がします。

──規定が所轄部署や自治体の権限で変更ができるとは思っていませんでした。難しいと思っていた今の環境からでも、視点を少し変えることで業務のやり方を変えていける部分がまだまだありそうですね。

お問い合わせ

下記より、自治体庁舎づくりに関する
資料のご請求やお問合せ、ご相談を承ります。