技術部門が連携し、ボトムアップでつくる「出社したくなるオフィス」 ――手狭なオフィスが、交流と集中を促す場に生まれ変わる

成田国際空港株式会社 様

技術部門が連携し、ボトムアップでつくる「出社したくなるオフィス」 ――手狭なオフィスが、交流と集中を促す場に生まれ変わる

成田国際空港株式会社 様

Project Data

プロジェクト名
成田国際空港株式会社 本社4階・6階改装プロジェクト
面積規模
約1,680㎡
人員規模
約170名
完成年月
2025年6月

Point!

  • 人員増で手狭、会議・集中スペースが少ない等の課題が意欲低下の一因に
  • 施設部と整備部が連携し、若手主導で改装プロジェクトを立ち上げた
  • 什器の転用や売却で工夫し、経営層への丁寧な説明で予算確保
  • 動線上に交流エリアを設置、活気に満ちた「出社したくなるオフィス」を実現

日本を代表する国際拠点空港として、人やモノの往来を支える成田国際空港。その運営を担う成田国際空港株式会社(以下、NAA)では、さまざまな部署の社員が業務に取り組んでいます。

2025年6月、NAA本社ビルの4階・6階で、若手社員が中心となり、前例のないオフィス改装を完了させました。改装プロジェクトのメンバーは、空港施設の維持管理を担う「施設部」と、空港施設の新設や大規模な改修工事を担当する「整備部」。いずれも、空港運営を支える技術部門です。

改装のきっかけは、若手社員が抱いた「業務の質やスピードをさらに高めるには、働く環境そのものも見直すべきではないか」という想いでした。これを機に両部門でアンケートを行ったところ、老朽化した什器やリモート対応環境の不足、打ち合わせ・集中作業の場の少なさなど、多くの課題が浮かび上がってきました。

社員の声に丁寧に耳を傾けながら、自分たちの職場環境を自分たちの手で良くしていこうという機運が高まり、改装プロジェクトが発足。本社ビルで初となる本格的な改装に向けた取り組みがボトムアップで動き出しました。どのようにプロジェクトを牽引したのか、4名のメンバーに、実現までの道のりを伺います。

(前列左から)施設部の藤川隆介さん、整備部の渡部明浩さん(後列左から)施設部の宮井新平さん、臼井駿さん

改装以前のオフィス

the previous office
以前のオフィス
改装以前のオフィス

ゾーニングと紹介するエリア

ゾーニングと紹介するエリア

Interview

Scene 1

人員増に対応し、一体感を育むオフィスへ

今回のオフィス改装計画は、どのように始まったのでしょうか。

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:きっかけの一つは、組織再編により施設部の人員が増えてオフィスが手狭になったことです。当初は机や椅子を追加して対応する案を考えていました。

その段階では、まだフロア全体の見直しという話には至っていなかったのですね。

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:はい。ただ、成田国際空港全体での機能強化が進む中、私たち技術系社員も、それに備えて一丸となれる体制づくりが必要だと考えていました。業務の質やスピードをさらに高めるには、働く環境そのものも見直すべきではないかと。そうした想いから、什器の追加ではなく、空間全体の見直しを検討する方向性を見出しました。

施設部・臼井さん

施設部・藤川さん

施設部・藤川さん:これまでのオフィスはグループごとにデスクを配置する、いわゆる“島型”のレイアウトで気軽に話しかけにくい雰囲気がありました。そうした状況を変えようと、臼井が中心になって周囲に働きかけ、それが施設部全体の動きにつながっていきました。私はマネージャーとして、部全体の方向性を見据えながら後押しする立場でした。

整備部もオフィスに課題を感じていたのですか?

整備部・渡部さん

整備部・渡部さん:整備部も組織再編による人員増加でスペースの確保に苦慮していました。キャビネットを撤去するなどして一時的に対応していましたが、今後さらに業務量と人員が増えることが見込まれていたため、レイアウトの見直しは視野に入れていました。

整備部・渡部さん

それぞれの部で課題感が高まっていたのですね。

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:はい。そうした中で、整備部でもレイアウト変更を検討しているという話を耳にしました。整備部とは業務上の接点もあり、どちらも技術系の職種です。「4階の施設部と6階の整備部の改装を一緒にやってみませんか」と声をかけたところ、快く応じてくれました。

整備部・渡部さん

整備部・渡部さん:施設部から声をかけてもらえたのは、心強く、とてもありがたかったです。

施設部・藤川さん

施設部・藤川さん:現場同士が改装に対して同じ熱量を持っていたことで、連携の動きはスムーズでした。

Scene 2

ボトムアップで動き出した一歩

改装計画の初動では、どのようなことをされましたか?

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:最初は、各部で「働く環境に関するアンケート調査」を実施しました。その結果、施設部ではペーパーレス化の遅れや会議スペースの不足、寒色系のお堅いイメージの内装でモチベーションが上がらないなど、オフィス環境への不満が見えてきたんです。

整備部・渡部さん

整備部・渡部さん:整備部も同様で、そのほかにも集中やリラックスできるスペースがない、自席でWeb会議をする人の声が気になるといった意見も。リクルーティングの観点で、「働く環境が客観的にどう見えるか」を意識するべきだという苦言もありました。

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:本来、オフィスの改修・改装は総務部門の領域ですが、私の声が大きすぎたのか(笑)、自分が旗振り役として進めることになりました。とはいえ、今後の全フロア改修の可能性を見据えて発注やレイアウト決めといった要所では総務人事部にしっかり支えてもらい、連携して取り組みました。

その後、若手メンバーが加わったとうかがいました。

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:施設部の入社1年目・宮井が、「やりたい」と手を挙げてくれたんです。

施設部・宮井さん

施設部・宮井さん:私は建築を勉強してきて、オフィスの内装や設計に興味がありました。NAAに入社してみたら、オフィス環境には理想とギャップがあって……。部内会議で改装の計画があると小耳に挟み、もっと気持ちよく働ける環境をつくるチャンスだと思ったんです。

施設部・宮井さん

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:入社1年目で、自分から「やりたい」と言えるのはすごいですよね。自分ならためらってしまうかも。

施設部・宮井さん

施設部・宮井さん:勇気を振り絞りました(笑)。アンケートに、普段感じていた不満を正直に書いているうちに、「じゃあ自分でやってみよう」と思えてきて。

施設部・藤川さん

施設部・藤川さん:自ら動こうとする若手がいることは、マネージャーとして非常に心強かったです。こうした動きがプロジェクトを推進する上でも確かな力になると感じ、「ぜひやってごらん」と背中を押しました。

施設部・藤川さん

若手の意志を尊重されたのですね。経営層への提案はどのように進めたのでしょうか?

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:経営層への説明資料には、施設部・整備部・総務人事部の3部署名を明記し、連携した取り組みであることを印象づけました。今回のプロジェクトが“全社的な働く場の変革に向けた第1フェーズである“というメッセージをしっかり届けたかったんです。

経営層の承認を得るうえでは、費用面の説明もポイントになったのでは?

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:納得してもらえるギリギリの予算を組みました。コストダウンするために、とにかく工夫の連続で。既存の什器を極力転用し、使える椅子はそのまま使う。金属製キャビネットは処分費用を削るために廃棄せず売却するなど。プロジェクトメンバーで意見を交わしながら足並みをそろえ、要所で上層部へ丁寧に説明を重ねて、理解を得られるよう心がけました。

Scene 3

目指したのは「出社したくなるオフィス」

今回の改装では、どのようなビジョンがありましたか?

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:「出社したくなる職場」を目指しました。予算の制約がある中で、集中ブースや可動式の椅子、ソファなどいろいろなタイプの什器を取り入れ、気分や業務に応じて環境を変えられる、モチベーションが高まる空間にしたかったんです。

働く場所を選べると、気分も切り替えやすいですよね。デザイン面では、どのようなこだわりがありましたか?

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:ひとつは4階の通路ですね。以前はエレベーター側壁面に沿って一直線だったのですが、それを執務エリアの中央を通る形状にクランクさせ、さらに動線に沿って交流エリアを設けました。人と人が自然に行き交い、ちょっと雑談ができる場所があるだけで、雰囲気がぐっと変わると思いました。

クランク状の通路沿いに、気軽に立ち寄れる交流エリアを配置。目的地へ向かう途中で思わず“寄り道”したくなる動線が、グループを超えた交流と会話を促す。

4階の交流エリアには可動式什器が多く配置され、自由なレイアウトが可能。ベンチシートではモニターを使用するミーティングが行われ、リラックスした雰囲気のなか活発な意見交換が生まれている。

整備部・渡部さん

整備部・渡部さん:6階も人の行き来が多い動線沿いに交流エリアを設けて、気軽に立ち寄って声をかけやすい雰囲気をつくったことで、自然なにぎわいを感じられます。また滑走路に面した窓際にカウンター席を新設して、一人で集中できる場も設けました。

出入口付近に設けられた6階の交流エリア。行き来する人に会話の内容が届き、ゆるやかな情報共有ができる。オープンな場として会話にも入りやすい。

滑走路に面した6階のカウンター席。飛行機の離着陸を眺めながらの仕事は気分転換にもなると好評。

社員アンケートの中で、印象的なキーワードはありましたか?

整備部・渡部さん

整備部・渡部さん:「リラックスできるスペースが欲しい」という声が多かったですね。その声を受けてカフェスペースやファミレスブースなど、今までになかった場所をつくりました。休憩中に一緒に食事する様子が見られ、自然な会話が増えています。

6階に新設されたカフェスペースでは、ランチをしながら談笑する姿も。簡単な打ち合わせにも利用されている。

6階のファミレス席はモニター付きで、資料を映しながらの打ち合わせに便利。背後の視線を遮る、ほどよい囲われ感がリラックスした会話を促している。

改装計画を進めるにあたり、丁寧に対応された場面もあったと聞きました。

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:施設部の一部ではペーパーレス化への抵抗がありました。そこで、若手社員を中心に“断捨離チーム”を結成して、「なぜ紙の削減が必要なのか」を一つひとつ説明。部内全体への意識づけに努め結果的に紙資料を3割削減できました。

整備部・渡部さん

整備部・渡部さん:改装を行うにあたり、整備部でも限られたスペースを最大限活用するために 収納スペースの削減は避けて通れないテーマでした。そこでこの機会を活かし、ペーパーレス化を進め、紙資料の整理・削減に積極的に取り組みました。

ペーパーレス化といった内部での取り組みに加え、今回の改装では外部サポートも重要だったと思います。オカムラとの連携について、印象に残っていることがあれば教えてください。

施設部・宮井さん

施設部・宮井さん:ショールームとラボオフィスへ足を運び、実物や働く様子を見ながら説明していただきました。図面だけではわからなかった什器のサイズ感や雰囲気がつかめて、すごく参考になりました。

施設部・藤川さん

施設部・藤川さん:私たちの働き方を理解し、多様なオフィスの方向性を提案してくれました。特に什器の提案が幅広く、納得感のある内容でした。

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:工事期間では、現場での立ち合いもお願いしました。「急に変更したい」となったときでも、柔軟かつ迅速に対応していただけて助かりました。

Scene 4

空間が変える、働き方のこれから

実際に改装されたオフィスで働いた感想を教えてください。

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:集中ブースは私自身もよく使っていて、お気に入りの場所です。ファミレス席も常ににぎわっていて、コミュニケーションが活性化しているのを感じます。

「音の干渉が気になる」という社員の声をもとに導入された4階の一人用ワークブース。吸音パネルに囲われ気兼ねなくWeb会議ができるほか、集中作業にも適している。

4階の執務エリアに隣接する交流エリアは、可動式什器を活かして多目的に利用可能。

施設部・宮井さん

施設部・宮井さん:別フロアで働く他部署の人が「ちょっと見せて」と、4階に立ち寄ってくれることが増えました。入った瞬間、一度足が止まり「いい意味でNAAっぽくないね」と(笑)。グリーンも多く取り入れたことで、全体が柔らかく、開かれた印象になったと思います。

以前の印象を一新したいという想いから設けられた4階のカフェカウンター。ランチタイムにはお弁当を温めたり、ドリンクを用意したりする社員が集まる。あいさつや雑談が交わされるにぎやかな交流の場に。

大判の図面も広げられる天板が特徴的な4階のハイカウンター。通路に面していることで人の目に留まりやすく、立ち話や軽い相談など自然なコミュニケーションが生まれている。

整備部・渡部さん

整備部・渡部さん:改装後の初日は「どうなるだろう」と不安もありましたが、すんなりと日常の業務が始まり、拍子抜けするほどスムーズでした。事前に説明会を開き、細かい移転要領まで丁寧に案内し、それを部内の社員がしっかりと対応してくれたことが、スムーズな定着につながったと思います。

改装後に社内アンケートを実施されたそうですね。結果はどうでしたか?

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:5段階評価で平均3.5以上と、かなり高い評価をいただきました。ただ、これで終わりではありません。働き方が変われば、運用やルールも変えていかなければなりません。今回の改装は、今後に向けて“くさび”を打ち込んだようなもの。ここから中身をどう進化させていくかが、次の課題です。

やぐら型のフレームで囲われた4Fの打ち合わせスペース。場の一体感が高まり、コミュニケーションの活性化にもつながった。空間の印象も引き締まり、変化を実感する声が上がっている。

最後に、改装プロジェクトを振り返って、今感じていることをお聞かせください。

施設部・藤川さん

施設部・藤川さん:長年使ってきた什器がかなり古くて、補修して使っている状態でした。今回の改装で空間が整い、多くの什器も新しくなったことで見た目にもすっきりしました。気持ちよく働けることで、やはりモチベーションが上がるなと実感しています。

施設部・宮井さん

施設部・宮井さん:オフィスがきれいになったのはもちろん嬉しいことですが、それ以上に、このプロジェクトを通して「タスクの進め方」「周囲の巻き込み方」「関係者への説明の仕方」など、社会人として大切な姿勢をたくさん学べました。最初は分からないことばかりでしたが、先輩方の言葉一つひとつが勉強になり、この経験は大きな財産になったと感じています。

整備部・渡部さん

整備部・渡部さん:社内初の大きな改装に携われて本当によかったと思います。「大丈夫かな」と心配な部分もありましたが、結果、うまく機能していて安心しました。すべての意見がポジティブなわけではないですが、これからも改良を重ねて、よりよい環境にしていきたいです。

施設部・臼井さん

施設部・臼井さん:他部署の人が見に来たくなるオフィスができたことが、何より嬉しいです。会社の中に多少なりともあるセクショナリズムをやわらげて、「連携していこう」という機運が生まれたのではないでしょうか。新滑走路建設を含む国家級プロジェクトが始まるにあたり、これからのNAAには部門横断の協働が不可欠です。その意味でも今回の取り組みが、連携の第一歩として形になったのは大きいと思います。

Credit
編集
水上アユミ(ノオト)、オカムラ編集部
執筆
合戸奈央

記事内の情報は取材当時の情報です。

この記事は2026年1月22日に公開されたものです。

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