アムニモ株式会社
OFFICE

アムニモ株式会社
横河電機株式会社 事業開発センター

amnimo Inc.

想いやアイデア、成果を「Hatch!」させるオフィスphoto:Nacása & Partners

多様な素材の家具にあふれた執務エリア。おにぎり型のテーブルは、天然木の質感が心地よい。その奥に見えるのは、お客様サポートを行う円形のコールセンター。右側にはライブラリーも見える。

執務エリアでは、同社のコーポレートカラーを柱やサインに展開。どこでもコミュニケーションが取りやすく、立ち話をしている光景もよく見られる。

左は「リビングルーム」と呼ばれている小上がりのエリア。右は会議室「ninja」。

仕事に集中するための一人用の席、ファミレスタイプの席など、さまざまな設えの席が用意されている。照明にもこだわった、デザイン性の豊かなオフィスである。

セレンディピティに満ちた
仕掛けのあふれるオフィス

1915年の創立以来、計測、制御、情報の技術を軸に、最先端の製品やソリューションを産業界に提供し続けてきた、横河電機株式会社。その新たな事業開発センターが、2016年に設立された。その役割は、新しい事業領域の開拓、知財戦略の立案と実行、エクスペリエンスデザインの推進である。その取り組みの一環として、横河電機100%出資で2018年5月に設立されたのが、アムニモ株式会社だ。いわゆる企業内スタートアップである。社名のヒントになったのは、ラテン語のamnis(流れ)とmodum(計測する)という言葉。産業向けIoTの民主化を掲げて、新たな事業領域へのソリューション開発・提供に挑んでいる。

 従来のオフィスは場所が分散していたことに加えて、「いつも同じ席で関わる人が限られる」「ちょっとした相談をするスペースがない」「静かすぎて話しにくい」など、チームのコミュニケーションを阻害する数々の要因があった。そこで、2019年7月に武蔵野市にある横河電機R&Dセンターのワンフロアに誕生したオフィスでは、コミュニケーションの活性化も考慮し、「SECI(セキ)モデル*」と呼ばれる知識創造モデルを導入した。共同化(Socialization)、表出化(Externalization)、連結化(Combination)、内面化(Internalization)という4つのプロセスのサイクルによるモデルであり、SECIはそれぞれの頭文字。吹き抜け階段を中心とした執務エリア内に、各プロセスを具体的な場として落とし込んでいる。このサイクルを回す体感によって社員みんなが知識を共有しながら、知的生産性を高めることができる。

 新しいオフィスの合言葉は「Hatch!」。「カラをやぶろう! 思いをうみだそう!」というスローガンに込められているように、想いやアイデア、成果を次々に「Hatch!=孵化」できる環境を創造。フリーアドレスの導入とともに、カフェコーナーやライブラリーなどのさまざまな機能空間が用意されているため、社員は歩きながら、空間を選びながら、毎日違う人と出会うことができる。また、あちこちで打ち合わせができ、仕掛けにもあふれたオフィスは、セレンディピティ…思わぬものを偶然に発見しながらアイデアにつなげる喜びに満ちている。



*SECIモデルとは、野中郁次郎教授(一橋大学名誉教授)が提唱した、知識創造活動におけるナレッジ・マネジメントのフレームワーク。

1行目:「omokage(面影)」と呼ばれる会議室を、内側からと外側から見たところ。すべての会議室がガラス張りであり、それぞれの名前には由来がある。

「omokage(面影)」と呼ばれる会議室を、内側からと外側から見たところ。すべての会議室がガラス張りであり、それぞれの名前には由来がある。

3行目:命名者による「omokage」のストーリーは、「忘れられない人がいます。いつか見たあの風景の中に佇むその姿に、いつも励まされ、勇気づけられ、優しい気持ちにさせられます。しなやかに、たおやかに、自分もそうありたいと思うのです」

命名者による「omokage」のストーリーは、「忘れられない人がいます。いつか見たあの風景の中に佇むその姿に、いつも励まされ、勇気づけられ、優しい気持ちにさせられます。しなやかに、たおやかに、自分もそうありたいと思うのです」

2行目:執務エリアの各所に設けられた黒板の内容はどんどん更新され、情報の伝達・共有がなされている。

執務エリアの各所に設けられた黒板の内容はどんどん更新され、情報の伝達・共有がなされている。

その日に触れる素材さえも
出会いやひらめきにつながる

執務エリアには、天然木の素材を活かした肌触りのよい大型テーブルなどを配置。その日に触れる素材の質感や触感さえも、ひらめきにつながるよう願いが込められている。

 代表取締役社長の谷口功一さんは、「執務エリアの真ん中には『コラボテーブル』と呼ばれる、参加者全員がペンを持って同時に天板に書き込めるテーブルを設けました。普通に立てかけるタイプのホワイトボードならば、みんながいっしょに書き込むのは物理的にできませんからね。そんな工夫もしながら、『コラボテーブル』はSECIモデルの『表出化』の場として活気を生み出しています」と語った。オフィスに変化があると社員にチャレンジする気持ちが生まれ、いろいろなことを試してみたくなると谷口さんは語る。

 ユニークな数々の仕組みも、コミュニケーションを促進している。例えば、同社ならではのアワードを設け、優れた活躍をした社員は「月間いいね賞」によって表彰。年間アワードを受賞すると、豪華商品と会議室の1年間のネーミングライツが得られる。2019年のテーマは「Reaching out to the world from Japan」で、会議室の名前は「asagiri」「minori」「ninja」「iwafune」「mikoshi」「omokage」など、和の情趣にあふれたもの。その頭文字をつないでいくと「amnimo」の文字になるという遊び心も隠されている。さらに、新たな職種として設けたエンゲージメント カタリストの存在も、さまざまな「Hatch!」を楽しく加速し、「カラをやぶろう! 思いをうみだそう!」という気運を高めている。

カフェコーナーの周辺には、ハイカウンター、ガラス張りの会議室などさまざまな設えを用意。空間によって照明の色温度を変え、雰囲気に変化をもたらしている。

カフェコーナーと呼ばれる円形のスペース。社員が集い会話のあふれる場をめざしたシンボリックなエリアである。

執務エリアの中央部に設けられ、パネルに吸音材を使用しているコールセンター。上下昇降デスクを採用している。

「コラボテーブル」は、天板がガラス素材になっているため、みんなで書きながらコラボすることができる。

「コーヒートーク」という、全社員がコーヒーを片手に活動や状況を情報共有できる、カジュアルな社内イベントも毎月催されている。

「コーヒートーク」という、全社員がコーヒーを片手に活動や状況を情報共有できる、カジュアルな社内イベントも毎月催されている。

1行目:吹き抜け階段の横に設けられた、気軽に情報交換できる「止まり木テーブル」。

吹き抜け階段の横に設けられた、気軽に情報交換できる「止まり木テーブル」。

3行目:ライブラリーには、社員が薦める本や手作りの紹介POPも置かれ、コミュニケーションのきっかけにもなっている。右側はスケルトン天井の実験エリア。

ライブラリーには、社員が薦める本や手作りの紹介POPも置かれ、コミュニケーションのきっかけにもなっている。右側はスケルトン天井の実験エリア。

2行目:

4行目:マーケティング本部 事業開発センター エンゲージメント カタリストの二木佐知子さん。インタビュー頁にて詳しくご紹介。

マーケティング本部 事業開発センター エンゲージメント カタリストの二木佐知子さん。インタビュー頁にて詳しくご紹介。

DATA

所在地東京都武蔵野市中町2-9-32
オフィス対象面積910㎡
オフィス対象人員120名
インテリア竣工2019年6月
プロジェクトマネジメントデザインバイコミュニケーション
オフィス設計・デザインオカムラ(川﨑 梢)
bp vol.33掲載(2020.04発行)