広島経済大学 明徳館
ACADEMIC

広島経済大学 明徳館

Hiroshima University of Economics, Meitokukan

主体的な学びを促す、多彩な10フロアphoto:Nacása & Partners(ページ内1点を除く)

5階のリフレッシュ&コミュニケーションフロアには広島発祥のベーカリーチェーンが店を構える。

5階エントランス近くに配された「ワールドカフェ」。

2〜4階のステューデントコモンズは、1学科1フロアとし、24区画のゼミスペースを用意。大きなワンルーム構成にすることで、学科としての連帯感を生む仕掛け。

9・10階のラーニング&ディスカッションフロアはガラス張りの部屋が並ぶ。授業で使われるほか、予約をすれば学生も自由に利用可能。

7・8階はアクティブラーニングコモンズ。この日、8階のセミオープン型ワークショップルームでは、仲間同士でプレゼンの予行練習が行われていた。

日本最大級の
アカデミック・コモンズ

1967年、中国・四国地方唯一の経済専門大学として創立された広島経済大学。「Be Student-oriented(すべては学生のために)」のスローガンのもと、約10年前から教育改革が進められ、「人間力」を磨く実践型の学習プログラムや、「表現力」を鍛える1年次からのゼミナールなどを通じて、現代のグローバル化社会をたくましく生き抜き、実社会で活躍する人材の育成に力が注がれている。この新たな挑戦をサポートするのが、2017年4月、開学50周年の記念事業として正門横にオープンしたアカデミック・コモンズ「明徳館」だ。地上10階建ての建物すべてが学生のための自由空間で、学習、憩い、学生活動など、キャンパスライフの拠点となる。

 キャンパスは広島市街を一望する武田山の麓に位置し、斜面地という特性を活かして各校舎が配されている。明徳館も2つのエントランスフロアをもち、1階が正門に、5階が少し高い位置に立つ講義棟につながっている。この5階を中心として、「知的創造空間」と位置づけた高層階には大型の円形プレゼンテーションコートから、少人数用のディスカッションルームまで、多彩な学びの空間を配置。一方、低層階の「ステューデントコモンズ」は、いわば「ゼミ活動の部室」。ゼミ毎に割り当てられたテーブルが壁で仕切られることなく並び、ほかのゼミや学年ともゆるやかにつながる交流フロアだ。

1行目:キャンパス遠景。各校舎は大学のテーマカラーである橙色の外観で統一され、左端の水平庇が際立つ高層棟が明徳館。

キャンパス遠景。各校舎は大学のテーマカラーである橙色の外観で統一され、左端の水平庇が際立つ高層棟が明徳館。

3行目:5階レベルから見る外観夕景。ウッドデッキで講義棟とつながっている。

5階レベルから見る外観夕景。ウッドデッキで講義棟とつながっている。

2行目:約2800人の学生が経済学を学ぶ大学に新設されたアカデミック・コモンズ。5階カフェエリアと吹き抜け階段でつながる6階には、教育・学習支援センターや女子学生支援センターがある。左奥にはガラス張りの女子学生専用「こまちルーム」が見える。

約2800人の学生が経済学を学ぶ大学に新設されたアカデミック・コモンズ。5階カフェエリアと吹き抜け階段でつながる6階には、教育・学習支援センターや女子学生支援センターがある。左奥にはガラス張りの女子学生専用「こまちルーム」が見える。

7階の中心に据えられたプレゼンテーションコート。オープンな雛壇状の円形ステージで、自然と「見る/見られる」を意識させる。ポップな色使いは、人前に立つことへの苦手意識を和らげ、闊達な議論を促す仕掛け。

プレゼンテーションコートの外側は、公開セミナーの告知などに活用できる黒板にもなっている。

7階に設置されたブラックボードのタワー。学内への呼び掛けであったり、来校者が感想を残したり、自由にメッセージを書き込める。最先端のデジタル設備の中に、アナログなコミュニケーションツールも散りばめられている。

5階のカフェエリア脇では、教員が海外体験談をプレゼンするなど、世界への関心を抱くようなイベントを日常的に開催。

2〜4階の各ゼミスペースは低めの収納棚とベンチでゆるやかにゾーニング。オリジナルデザインの棚は、背板をゼミの特徴をアピールする掲示スペースに。

自分の居場所づくりから
「学び」が始まる

キャンパス内には、50万冊以上の蔵書を誇る図書館や、800台のパソコンや撮影スタジオも完備するメディア情報センター、24時間利用可能な実践プロジェクト専用の「興動館」など、様々な学習空間が用意されている。なぜ今回、日本最大級のアカデミック・コモンズ新設に至ったのだろうか。明徳館コモンズ検討ワーキング座長を務めた副理事長兼副学長の石田優子氏は、「教育改革が結果を出し始める中、自習や休憩中も含め、もっと主体的に学ぶきっかけがつくれないかと思いました。今あるのは、誰でも使えるが誰のものでもない場所。一歩進んで、小さい単位から人間関係を築いていく自分の『ホーム』となる場所が必要だと感じました」と語る。各フロアの家具配置を何度も練り直し、積極性を促す仕掛けが随所に施されている。例えば、5階の一角に設けられた「ワールドカフェ」。ゼミに所属しない短期留学生の居場所だが、多くの学生が行き交うエントランス横に置いている。このフロア唯一のパソコンコーナーも隣接させ、留学が疎遠気味になっている日本人学生に自然と国際交流をもたせる狙いだ。6階には女子学生専用スペース、授業理解や資格取得をサポートするコーナーもあり、所属するグループ、その時々の目的にあわせてフロアを選び、居場所にしている。「明徳館だけでなく、静寂を好む学生は図書館に、実践プロジェクトに没頭する学生は興動館に、その日の気分で居場所を変えている学生もいるでしょう。自分で空間を選び、環境を整えることから主体的な学びが始まると考えています」(石田氏)。まさに、学生の、学生による、学生のための空間。自由な発想で使いこなされ、新たな表現・活動が生まれる瞬間が楽しみだ。

8階のテーマは「学びを深める」。重厚感のある「知の壁」を中心に、大テーブルからグループ席、ワークショップルーム等、多様な学習空間を配置。

自習やプレゼンの資料づくりや練習に活用されている。

小上がりやソファ席などもあり、靴を脱いだり、視線や姿勢に変化をつけることで、新しいアイディアを生まれやすくする。基本的に学生はどの席でも自由に利用可能で、部屋やテーブルによっては予約もできる。

5〜8階は内階段でも行き来できる。7階にはノートパソコンの貸し出しや、大判プリンターの利用カウンターがある。

女子トイレ内のパウダーコーナーは、各階でインテリアが異なる。コンセントも完備し、ゆったりできるスペース。

DATA

所在地広島県広島市安佐南区祇園5丁目37-1
敷地面積21万3043㎡(キャンパス全体)
延床面積11648㎡
規模地上10階
設計日建設計
施工五洋建設
bp vol.26掲載(2018.01発行)