トップメッセージ

代表取締役 社長執行役員  中村 雅行

一人ひとりが「活きる」ことこそが持続可能な社会の実現につながる

オカムラグループは、パーパスである「人が活きる社会の実現」に向け、「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」をミッションとしています。私たちは物質的な豊かさだけでなく心の豊かさも育み、互いを尊重しながら自分らしい働き方や暮らし方を選択できるように努めています。一人ひとりが「活きる」ことこそが、持続可能な社会の実現につながるという信念と使命感のもとに、すべての人々が笑顔で活き活きと働き暮らせる社会の実現を目指しています。私たちは、オフィス、教育・医療・研究・商業施設、物流センターなどのさまざまなシーンにおいて、クオリティの高い製品とサービスを提供することに努め、企業価値のさらなる向上と社会課題の解決に取り組んでまいります。
オカムラの歴史を簡単にご紹介すると、1945年、設立の主旨に賛同した航空機の技術者たちが、資金、技術、労働力を提供し合って「協同の工業・岡村製作所」としてスタートを切りました。その創業の精神は、「創造、協力、節約、貯蓄、奉仕」の5つの言葉からなる社是と、これを受けた基本方針により企業文化として定着し、「よい品は結局おトクです」をモットーに歩んでまいりました。その精神は「オカムラのDNA」として現在のオカムラグループの経営と事業活動に脈々と受け継がれています。

経営は常に社会との調和をはかる

今、世界には極端な気候変動や、社会・経済的な格差の拡大、生物多様性の損失・環境破壊など、人々が直面する課題がいくつもあります。また日本では人口減少時代を迎え、経済・社会のあり方が大きく変わろうとしています。企業には、お客さまや地域社会、さらには地球環境に対してよい関係をつくり、社会的な責務を果たし、成果を積み重ねていくことが求められます。オカムラグループは「人が活きる社会の実現」に向けて、こうした課題に対峙し、解決に資するさまざまな取り組みを進め、社会との調和をはかってまいります。
オカムラグループでは、2023年5月に2024年3月期から2026年3月期までの3カ年を対象とする「中期経営計画2025」を策定し、「新たな需要の創出」を目指して、時代の流れを捉え、提案力と製品力を磨き、「需要創出型企業」への変革を加速しています。経営基盤の強化をはかるとともに、持続的成長を支える従業員のエンゲージメント向上を目指して人財育成とオカムラが提唱する「Work in Life*1」を実現する働きがい改革を一段と推進します。

マテリアリティの特定とサステナビリティに基づく活動の推進

パーパスである「人が活きる社会の実現」にはサステナビリティを中心に捉えた事業活動が重要であるとの考えのもと、事業活動の経済的側面と同時に社会的側面・環境的側面の重要性を認識し、「オカムラグループ サステナビリティ方針」を掲げ、企業の社会的責任を果たす経営に取り組んでいます。マテリアリティ(経営の重要課題)を特定するとともに、そのリスクの低減と機会の創出に向けて、4つの分野で活動を推進しています。この分野とは、「人が活きる環境の創造」「従業員の働がいの追求」「地球環境への取り組み」「責任ある企業活動」の4つです。「責任ある企業活動」を経営基盤とし、「従業員の働きがいの追求」によって一人ひとりが働きがいを感じるとともに、「地球環境への取り組み」を実践することでサプライチェーン全体を通じて環境負荷を低減してまいります。また、事業活動を通じた「人が活きる環境の創造」により、人々が笑顔で活き活きと働き暮らせる社会の実現に貢献します。特定した重要課題を着実に実施するために、各課題それぞれにKPIを定め年度ごとの目標値を設定し推進しています。サステナビリティの重要性がますます高まる中、外部環境の大きな変化と「中期経営計画2025」の策定時期に合わせ、事業リスクへの対応力強化をより重視し、サステナビリティの重点課題から経営の重要課題として、その位置づけを見直しました。各重要課題において、事業活動と関わりのある社会課題を認識するとともに、その影響によるオカムラグループにとっての主なリスクと機会を検証し、各課題へのアプローチを明確にしています。具体的には、気候変動リスクを含むオカムラグループのリスク全般について、経営・財務などへの影響を考慮し現状リスクの再評価および新規リスクの抽出・評価を行うとともに、重要リスクの特定と見直しを行っています。また、取り組みを有機的に進めるために、サステナビリティ委員会を設置。年度計画に基づいたグループ全体の取り組みを推進・サポートし、進捗をモニタリングするとともに、対応方針の立案と関連部署への展開を行っています。
オカムラは国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト」に署名し、2020年2月26日に参加企業として登録されました。グローバル・コンパクトの人権に関する原則を踏まえ、事業活動から影響を受けるすべての人々における人権尊重の責任を果たすことを目的として、「オカムラグループ人権方針」を策定し企業活動のさまざまな側面において取り組みを進めています。

環境負荷低減に向けた取り組みを加速

4つの分野の一つである「地球環境への取り組み」では、「サーキュラーエコノミーの推進」「持続可能な自然資源の利用と保全」「気候変動問題への貢献とカーボンニュートラルの実現」を経営の重要課題としています。「オカムラグループ環境方針」に基づく環境長期ビジョン「GREEN WAVE 2030」を策定し、事業活動に伴う環境負荷低減の重要性を認識し、企業の社会的責任を果たす経営を目指しています。グループすべての事業活動における環境負荷低減の取り組みや、お取引先やお客さまとのパートナーシップによる積極的な環境活動を推進します。
また、サプライチェーン全体における地球環境負荷の低減を徹底し、2050年の温室効果ガス排出実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指し、そのマイルストーンとして2030年度の温室効果ガス排出量の削減目標を2020年度比50%と定め、グループ全体で取り組みを進めています。生産事業所をはじめ各拠点における省エネルギー対策など、これまでの活動をさらに強化するとともに、再生可能エネルギーの利用拡大など新たな視点に立った取り組みを展開し、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
製品開発においては、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方に基づき、製品の企画・設計から販売、メンテナンス、リユース・リサイクル、適正処理に至るまでの製品のライフサイクルの中で、限りある資源をより長く有効に使用し、廃棄物の発生を最小化するものづくりを目指しています。生産プロセスでは、リサイクル素材や廃木材・未利用材などの使用、樹脂廃材や水の再利用などに積極的に取り組んでいます。
2024年度には、2050年カーボンニュートラル実現に向けた移行計画についてより具体的な検討を進め、温室効果ガス排出量削減ロードマップを可視化しました。また、2025年度よりインターナルカーボンプライシングを試行的に導入します。

さらに、生態系サービスの基盤である生物多様性の損失は、「自然災害のリスクの拡大」「作物・森林・その他自然資源供給の減少」「感染症発生リスクの拡大」を及ぼす重要な課題であるとの認識のもと、事業活動における環境負荷低減に積極的に取り組んできましたが、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会などをより広い視点から総合的に評価するため、TNFD開示提言*2のフレームワークを用いて分析を行い、2025年6月にTNFD情報開示を行いました。今後、TNFDのフレームワークに沿って、戦略および指標・目標を検討、決定していく予定です。

多様性を受容しすべての人の活躍へ

「人が活きる社会の実現」に向けては、もちろん人財に対する視点が大切です。多様な人財が活躍できる制度や仕組みづくり、職場改善に取り組むとともに、個々の従業員が意識を変え行動しながら働ける環境を追求しています。個の違いを尊重し公平性を重んじることで、「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」から「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」への進化を目指してまいります。オカムラグループでは「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン方針」を掲げ、それぞれの従業員が働きがいを感じ、互いに協力し自己成長できる環境を目指して、一人ひとりの多様性を尊重しています。多様性の受容の考え方を基本に、さまざまな属性・価値観・発想を持つ人財を積極的に採用し、働きやすく能力が発揮できる環境づくりに取り組み、社会・文化の多様性や環境の変化にも柔軟に対応できる企業文化の醸成につなげています。この中には女性活躍の推進という視点も当然含まれます。

オカムラグループは、人事方針に「能力の開発と発揮、および協力、融和に必要な教育を積極的に行い、自己啓発の意欲の増進をはかる」ことを明記しています。「中期経営計画2025」では「人財育成と働きがいの向上」を経営基盤の強化項目の一つとしています。これを実現するため、従業員一人ひとりが未来のキャリアを描き続け多様な経験を通じて成長し続ける「キャリアジャーニー」として、従業員同士の相互理解を基盤に、学び続ける機会や挑戦する機会の整備を行っています。

進化した働きがい改革を推進

オカムラグループでは、「Work in Life」の基盤として健康経営を位置づけています。これを具体的に推進するために健康経営推進体制を構築し、2017年9月に「健康経営宣言」を策定。2020年4月にはオカムラの働き方改革「WiL-BE(ウィル・ビー)」の基盤として健康の重要性を再確認し「健康経営宣言」を改定しました。各種健康施策を拡充し、2023年4月からはさらに進化した「働きがい改革 WiL-BE 2.0」を推進中です。こうした健康経営の軸として、「プレゼンティーイズム*3」と「アブセンティーイズム*4」の低減を重要なテーマに掲げています。これにより、従業員が心身ともに健やかに働ける職場環境を整え、ウェルビーイング(幸福感)を大切にした職場づくりを進めています。さらに、健康経営の成果を測るKPIとして、エンゲージメントの向上を目標に掲げ、従業員がより健康で活力を持って働ける環境づくりに取り組んでいます。定期健康診断100%達成はもとより二次健康診断100%受診、ストレスチェック100%受検、年次有給休暇80%以上取得をそれぞれ目標としています。また、従業員の健康意識向上を促し、自ら健康増進に向けて行動できるように、ヘルスリテラシー教育や情報発信を行っています。経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人(ホワイト500)」には、2018年から8年連続で認定されました。従業員が健康で幸せを感じられるような働き方ができる職場づくりに努めるとともに、お客さまにも健康的な働き方を提案することで、それぞれが思い描く生活の実現を目指しています。

オカムラグループは、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを通じて社会に貢献し、「人が活きる社会の実現」を目指してまいります。

今後とも、一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

*1「 Work in Life」:「Life(人生)にはさまざまな要素があり、その中の一つとしてWork(仕事)がある」というオカムラが提唱する考え方です。「Work in Life」の実現とは、一人ひとりが人生を総合的に捉え、「働く」ことが人生のプラスになるように、主体的に行動できている状態を指します。
*2 TNFD開示提言:TNFDとは自然関連財務情報開示タスクフォースのことで、自然関連のリスク、インパクト、依存の評価と情報開示を求めています。
*3 プレゼンティーイズム:疾病就業。何らかの健康問題により業務効率が落ちている状態。
*4 アブセンティーイズム:仕事を休業・欠勤している状態。