父親も育児にしっかり向き合える
風土づくりをめざす
リーダーの林さんを筆頭に、皆さんが関わっている「こそだて支援プロジェクト」はどのように始まったのでしょうか?
林:もともとはダイバーシティ&インクルージョンの推進を目的に展開していた「ソダテルプロジェクト」の中で、男性の育児支援を検討する「ファザーズプロジェクト」を始めました。女性は産前・産後休暇の後、育児休職を取ることがほとんどでしたが、男性の育休取得はほぼありませんでした。性別に関係なく全員が自分らしい働き方を実現するためには、男性を含めて皆の意識が変わる必要がある。そこで男性従業員の行動変容を目的に、父親になるタイミングが比較的多い、30代前後のメンバーを集めてワークショップを実施しました。参加した人の多くは世代的に仕事量が増え、後輩もいてという忙しい立場。育児に関わりたいのになかなかできていない、せっかくある人事制度が使われていない現状がありました。そこで、家庭の状況を上司と話し合う機会をつくってもらうようにしたんです。例えば、特にこの曜日は早く帰って子どもの世話をしたいなど、周囲に希望を伝えれば調整できるかもしれない。実際にコミュニケーションの溝を埋めることでフレックスタイム制度が使いやすくなったという声もありました。この活動に関しては、できることはまだまだあると感じて、育児を始める人へ面談などの施策を実施しています。
「ソダテルプロジェクト」は数年かけて取り組み、2020年3月に一旦プロジェクトとしては区切りがつきましたが、父親の育児参画を浸透させるためにも、Team WiL-BE、人事部、人財開発部、労働組合などと連携して、「こそだて支援プロジェクト」という形で継続することになりました。毎月「こそだて支援ニュース」として情報を発信し、プロジェクトでつくった「こそだてコミュニケーションプログラム」をe-Leraningで普及する活動なども予定しているのですが、育休経験者の声を届けたいと思って、髙橋さんと坂根さんにもプロジェクトに参画してもらいました。
毎月配信している「こそだて支援ニュース」では、育休前後の段取りや「保活」など実用的な情報も発信している。
坂根さんと髙橋さんが育休を取得したきっかけや経緯を教えてください。
坂根:第一子が誕生した時は仕事優先で育児や家事は妻に任せっぱなしだったので、二人目の子どもが生まれるとわかった時に、育休を取りたいなと思いました。ちょうど労働組合で担当をもっていたことも多少影響していますね。組合でも働き方の多様化を積極的に進めていますので。育休を取得したのは2020年2月中旬から3月末まで。取得を考えたのは昨年で、年内に上司に直接意向を伝えて、快諾していただきました。
髙橋:制度があることは知っていたものの、実際男性が育休を取ったら、例えば人事評価に影響があるのではといった懸念も正直言うと多少ありました。ただ、妻もフルタイムで働いていて、仕事に早く復帰したいという希望もあったので、ぜひ取りたいという気持ちではいました。2019年12月に子どもが生まれて、育休を取ったのは2020年年明けから2月半ばまでです。休職前も配偶者出産休暇と有給休暇を利用していました。本当は3月いっぱいまで休みたかったんですけど、展示会の企画や販促物制作開始なども迫ってきていましたので、そこは仕事の具合をみて復帰しました。ただ今から思えば乳幼児の成長は早いので、保育園が始まるまで休んで成長を見届けてもよかったかなと思う事もあります。
坂根:私は営業職ですが、営業職の男性として、育休を取得したのは私が初めてでした。顧客に迷惑をかけることになってしまうのでは、と考える人も多いのかもしれませんね。
社外、社内を含めて、育休取得に対する周りの反応はいかがでしたか?
坂根:育休に入る前に顧客に引き継ぎの挨拶に伺ったのですが、よい反応をいただけました。バックアップ体制や制度が充実していて、周りの理解もあっていいですねと、オカムラの働き方が進んでいる点を評価していただきました。そして、担当が一人しばらく不在だとしても会社は大丈夫なんだ、と分かった瞬間でもありました。
髙橋:僕も上司から「家族も喜ぶだろうし、休めるなら休むといい」と言ってもらえました。たまたま繁忙期のピークが過ぎたタイミングだったというのも良かったのかもしれませんが、育休に対して肯定的な意見が多く、職場で受け入れられたのは、これまでのWiL-BEやさまざまなプロジェクトがあって、ある程度下地ができているという背景もあったのかなと。
林:忙しい立場の2人が、育休を取ったというのはとても良かったと思います。より若い世代へのロールモデルになってくれていると感じます。
坂根:育休を取りたいと思っても、自分の周囲に実際に取った人が誰もいないと、それだけでハードルが高く思えてしまうかもしれませんよね。これから取る人が増えていけば、その下の年代にも波及していくのかなと。
髙橋:僕は妻の希望がなかったら、育休を取ることを真剣に考えなかったかもしれません。すでにお子さんがいる男性からは、生まれたばかりの子どもを世話する女性の大変さや赤ちゃんの成長の早さを見ているから、「(育休を)取った方がいい」と言われました。けれど、僕は第一子だったので実感がわかなくて。こんなに大変だと正直思っていなかったので、育休のあいだはゆっくり休んでいるわけではないと伝えたいです(笑)。「休めていいな」って言われたこともあったし、僕もこんなに長く会社を休むのは初めてということもあって、これを機に仕事に活かせる勉強もしようと思っていましたが、結局何もできませんでした(笑)。