三位一体で取り組んだ 妥協しない理想のオフィスづくり
――社内共創空間を中心とした コミュニケーション豊かな空間に
NTT・TCリース株式会社 関西支店 様

三位一体で取り組んだ 妥協しない理想のオフィスづくり
――社内共創空間を中心とした コミュニケーション豊かな空間に
Project Data
- プロジェクト名
- NTT・TCリース関西支店 移転プロジェクト
- 面積規模
- 約870㎡
- 人員規模
- 約70名
- 完成年月
- 2024年9月
Point !
旧オフィスの老朽化に伴い、現代の働き方に合った職場環境を目指したオフィス移転の事例です。フリーアドレスを導入した執務エリアと、フロア中央には部門の枠を超えた会社の価値創造を促す共創エリアを設け、電動昇降デスクや集中デスクなど社員が働く環境を選べるよう整えました。執務エリアとがらりと雰囲気の異なるリフレッシュエリアは、カフェカウンターやソファ、明るさを抑えた照明などで、まるで本物のカフェのようです。
この移転プロジェクトは、理想のオフィスづくりと限られた予算との両立が大きな課題となりました。オカムラとビル管理会社、お客様とが三位一体となってコストをかけるところはかけ、節約するところは節約する取捨選択の連続を乗り切った結果、満足を超え感動する社員が続出する新オフィスが完成しました。
大手通信会社のグループ企業で、国内外におけるリース・ファイナンス事業を手掛けるNTT・TCリース。全国にある支店の中でも、関西支店は西日本をリードする思いのあふれる社員が集まっています。築30年のオフィスから、おしゃれなビルが林立する御堂筋沿いの新築ビルへの移転プロジェクトが始動した2024年1月。目指したのは、コミュニケーションが社員同士でしっかり取れること。そして、社員がワクワクする最先端オフィス空間であること。これらの実現に向け、それからの約3カ月間はプロジェクトメンバーにとって課題解決に向けた理想のオフィスづくりと、コストの調整に明け暮れた日々でした。

「諦めない」をキーワードに、コストの課題とありたいオフィスとは何かについて、3社で何度も話し合いを重ね、ついに2024年9月に理想を形にした新オフィスが完成しました。厳しい予算条件をどのように乗り越え、満足度の高いオフィスを作り上げたのか。移転プロジェクトチームの中心メンバーであるNTT・TCリースの田門深さんとNTTアーバンバリューサポートの足立卓三さん、オカムラの設計担当・甲斐なつきが振り返ります。

ゾーニングと紹介するエリア
Interview
「良いオフィスをつくりたい」 予算内で理想を 実現するために
今回の移転プロジェクトは、どのような理由で始動したのですか?

田門さん:築30年の旧オフィスのビルの老朽化が理由です。改装も検討しましたがコストもかさむため、ならばいっそ、快適でセキュリティ面でも安心なオフィスへ移る案が浮上し、大阪・キタの中心である梅田にも近い、御堂筋沿いの新築ビルへ移転することになりました。

NTT・TCリース 田門深さん

田門さん:新オフィスでは、気軽に声をかけあい自然と会話が生まれる空間を実現すること。そして今の働き方に合った、先進的なオフィス空間の実現を目指しました。


共創エリアとその周辺は、自然と人が集まりさまざまな話題が交わされている。
ときには支店長も参加したフラットな雰囲気での雑談もあり、部署や立場を超えたオープンなコミュニケーションが広がっている。

足立さん:移転が正式に決まって、実際にプロジェクトとして動き始めたのが2024年1月でした。私はビル管理会社の移転プロジェクトマネージャーとして、同月に始まった関係者全員の定例会に参加しました。2月中に大まかなレイアウトや必要な事項を決め、4月中には打ち合わせを終えて什器の選定や具体的な工事に入っていったという、なかなかのスピード感でしたね。

NTTアーバンバリューサポート 足立卓三さん

田門さん:タイトなスケジュールの中、当社の「このエリアはシャープな感じに」、「全体的にスタイリッシュなイメージで」、「もっとここはシックな雰囲気に」というふわっとした希望に対して、甲斐さんがみごと具現化したデザイン案を提示してくれたんです。その提案を見たときは「そう!それが言いたかったんだ!」と驚きました。


甲斐:そう言ってもらえて嬉しいです。ご希望を伺って出した最初のデザイン提案で予算超過があったと聞き、次の提案では什器や壁紙などを変えたコストダウン案をご提示しました。すると田門さんから「最初のデザイン案がとても気に入ったので、やはりそれを軸に進めたい」との言葉をいただき、そこからは初期提案のデザインを保ちながらコストダウンする方法を3社で探っていきました。

オカムラ 甲斐なつき
妥協したくない! 役員プレゼンで会長・社長から 了承を得ることに成功
最初のデザイン案に沿ったオフィスを実現するために、田門さんは社内で予算獲得に向けて動いたそうですね。どのようにして予算獲得を叶えたのですか?

田門さん:先ほど甲斐さんが「予算超過があった」と仰いましたが、弊社では最初のデザイン提案を受ける以前の2023年12月の時点で、すでに役員に概算コストでプレゼンをして予算の承認をもらっていたのです。その後、オカムラさんからデザイン案と見積書をいただいたのですが、これが承認をもらった予算額を大幅にオーバーしたというわけです。思わず頭を抱えました。


社員が生き生きと働ける空間をつくるには、どうにかして予算を増額したかった。
そこで予算獲得に向けて、2回目の役員プレゼンに踏み切ったのですね。

田門さん:私たちの要望を丁寧に汲んでいただいた最初のデザイン案は、当社のプロジェクトメンバー全員が気に入った、まさにありたい理想の形でした。ぜひ実現させたい。そのために予算獲得のプレゼンは、やる価値があると思ったのです。いろいろな部署の方のお知恵を借りて、翌年1月に2回目のプレゼンに臨み、無事に予算の承諾を取りました。
どのような戦略でプレゼンを行ったのですか?

田門さん:初期投資として考えると高額ですが、設備コストというものは、今後何年にもわたって消費していくものです。そこにポイントを絞って臨みました。
「ワクワクする会社にしたい」と強い気持ちを込めてプレゼンしたことが、功を奏し了承を得られたのかもしれません。
必要かどうかの 取捨選択で 高いクオリティを
田門さんが予算を獲得された一方で、甲斐さんと足立さんはその予算をデザインや設備にどう活かすか模索されたそうですね。限られた予算の中で、デザイン面ではどのような工夫をされましたか?

甲斐:例えばエントランスは、当初、アール壁の曲線と呼応するように、ソファも曲線のデザインで造作することをご提案しました。しかし、両方を叶えるにはコストがかかります。そこで特に気に入っていただいたアール壁を残すために、ソファは既存製品を採用し、会議室の装飾もシンプルにしました。

(左)当初のデザインCG(右)変更後のデザインCG。左上に写っているアール壁を残し、右下のソファは既存製品に変更した。

甲斐:単に全体のコストを抑えるのでなく、コストをかけるべき場所にはかけて、それ以外は抑えるというようにメリハリをつけました。

完成後のエントランスの写真。当初の明るい雰囲気から「もっとシックに」と希望され、色味を抑えながらも素材感で魅せる、上質な雰囲気の空間を演出。

田門さん:当初からチーム内で「無駄なコストはかけない」と意思統一していました。旧オフィスで使用していた比較的新しい什器は一部の席で転用し、廃棄コストも削減しています。

営業サポートは効率的に業務を進めるため固定席を採用。旧オフィスから転用した、使い慣れたデスクやチェアでスムーズに仕事開始。

新設した共創エリアの什器は、使い心地のよさを重視してじっくり時間をかけて選んだそう。

足立さん:ビル工事の面でいうと、一括で消灯できる照明システムは導入を見送りました。田門さんが「便利だけどエリアごとにボタンを押して消灯することに不便さを感じていないので要りません」と明確に判断してくださったからです。リフレッシュエリアも、当初は天井の一部分にルーバーの装飾をつける案でしたが、そのためには天井内部の補強工事が必要でした。「そこまでして装飾は必要ないよね」と、そこも費用対効果を考えてなくしましたね。

リフレッシュエリアのデザインCG。左から最初のデザイン案、コストダウン後の案、予算増額後の案。この3パターンで、試行錯誤の変遷がわかる。

甲斐当初からリフレッシュエリアと執務エリアの雰囲気を変えてほしいと、田門さんからご要望がありました。そこで、空間をゆるやかに仕切れるよう、エリアの境目に造作のプランターボックスと天井までのルーバーを設置するデザインをご提案しました。


完成後のリフレッシュエリアの写真。終業後は、ここでお酒を飲みながら、気軽なイベントを催すことも。また新入社員を招いてリクルート活動にも活用したいそう。

田門さん:甲斐さんから、天井にもルーバーを這わせることで特別感を演出するアイデアをいただいたのですが、オンとオフを切り替える工夫は壁面だけで十分と判断し、ルーバーは壁部分にだけ残しました。その代わり天井はシックな色で変化を持たせて、執務エリアとは違う空間に仕上げていただきました。

甲斐そうした一つひとつの工夫が功を奏して予算に余裕が出たので、コストの問題でいったん却下された天井のダウンライトが復活。無事、取り付けることができたんです。

リフレッシュエリアのブラックの天井にはダウンライトが。温かい色の柔らかな光が、蛍光灯の執務エリアと一線を画している。
関西支店を、 当社が一丸となる 共創の拠点にしたい
今回のプロジェクトを振り返った感想を聞かせてください。

甲斐田門さんはこちらの提案の一つひとつをいったん受け入れてくださり、的確で合理的な判断をしてくださいました。テニスのラリーのようなリズミカルでスピーディーなやり取りで、打ち合わせのたびに「じゃあ次回はこういう提案をしよう」とウキウキしていました。


田門さん:上司から裁量を与えられていたので、細かい判断を自分で行うことができました。だから、スピード感のある意思決定が可能だったんです。

足立さん:最初の提案を予算オーバーだからナシにするのではなく、なぜ必要か、本当に必要かを見定めて、予算内でできる最大効果を上げることを全員で心がけました。NTT・TCリース、オカムラ、NTTアーバンバリューサポートの3社が、うまく足並みをそろえて進行できたプロジェクトだったと思います。

新オフィスに対する、社員の皆さんの反響はいかがですか?

田門さん:移転直前に、新オフィスのツアー見学会を行ったのですが、みんな驚きを通り越して感動していました。

電動昇降デスクは、立ったまま働けて呼ばれたらすぐに動けると、営業担当に大人気だそう。

オンライン会議でいつも誰かが使っているという個室ブース。

足立さん:「関西支店が素敵なオフィスになったらしい」と、見学に来る他支店の社員さんが多くいらっしゃいますよね。

会議室を予約するほどでもない、ちょっとした打ち合わせにちょうどいいファミレスブース。

吸音性能の高いワークブースは、集中したいときに便利。
新オフィスをどのように活用していきたいですか?

田門さん:今回の移転プロジェクトは、以前のオフィスビルの老朽化が直接の理由ですが、2024年4月のパーパス体系の新たな制定を経て、役員の間では「NTT・TCリースをよりいっそう魅力的で生き生きした職場に生まれ変わらせたい」という共通の思いがありました。この移転は、社員のモチベーション向上や当社の再スタートの象徴でもあったと感じています。


田門さん:全国に支店があるので、関西のメンバーだけでなく、全社的なサテライトオフィスとして活用してほしいと思っています。まずは九州、中国、四国など西日本の支店の社員が気軽に関西に立ち寄り、関西で仕事をして、またどこかで営業活動を行ったり。
この関西支店が、支店の枠を超えて社員が互いを高め合えるようなオープンな場として、その役割を果たせることを願っています。
About this Project
- 業種
- リース業
- 企業名
- NTT・TCリース株式会社 関西支店
- 所在地
- 大阪府大阪市中央区淡路町
4丁目2番13号 アーバンネット御堂筋ビル5階
- デザイナー
- 関連タグ
Credit
- 編集
- 水上アユミ(ノオト)、オカムラ編集部
- 執筆
- 國松珠実
記事内の情報は取材当時の情報です。
この記事は2025年9月11日に公開されたものです。