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2013.12.15  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

まずは起業よりも就職の道を

──そもそも秋好さんがランサーズを立ち上げようと思った動機と経緯を教えてください。

20歳のときに初めてパソコンを購入し、大学生の頃から個人事業としてWebサイトの制作や受託開発、コンサルなどのインターネットビジネスを手掛けていました。いわゆる学生ベンチャーみたいな感じです。最も利益が大きかったのは旅行系のメディア。比較的リーズナブルなホテルを集めたポータルサイトや格安航空券の検索サイトなどを作ったところ、旅館や旅行代理店や旅行系のサイトを運営している企業から広告の出稿がどんどん舞い込み、年商は数千万円ほどになりました。規模が大きくなるにつれてひとりではできなくなったので、フリーランスのエンジニアやプログラマなどに業務を依頼していました。

就職活動時期になり、企業に就職をするか、そのまま大阪に残って自分でビジネスを継続するかで悩みました。自分が本当にやりたいことって何だろうと考えたとき、確かに起業もひとつの目標としては持ってはいましたが、それよりもインターネットを活用して、もっと世の中に大きなインパクトを与えたいという気持ちの方がそのときは強かった。ならば今は起業よりも企業に入るべきだと就活を開始したんです。

2003年当時のネット業界はまだ黎明期で、新卒採用なんてほとんどのIT企業は実施していませんでした。それでも数社から内定をいただいて、やりたいと思っていたインターネットビジネスの企画と事業開発ができるニフティに入社しました。


──ニフティではどんな仕事をしていたのですか?

入社後、Webサービス事業を行う部署に配属され、プロデューサーとして20~30ほどのインターネットサービスの企画・運営を手がけました。ニフティというのはおもしろい会社で、ビジネスの規模は大きいのですが社員はわずか600人しかいません。ですのでひとりの社員が外部の協力会社に実務を発注して、仕事を回していくというやり方なんです。私も新卒で入ったにもかかわらずプロジェクトマネジャーとして、20~30人のパートナー企業の皆様と仕事をさせていただきました。

当時業務を発注していたのはおもに大企業だったのですが、当然ながら外注費は高くつきます。そこで私が大学生のときに仕事をしてもらっていた個人事業主に発注しようと考えました。彼らはとても優秀で仕事のスピードも早いしクオリティも高かった。しかも外注費も大手企業の3分の1で済む。かつその金額は個人にしてみればすごくいいギャラでした。まさにどちらにとってもメリットが大きいwin-winなので、早速発注の稟議書を書いて上司に提出したのですが、取引実績のない個人は信用度が低く、仕事を発注するのは不安だという理由で稟議がなかなか通らなかったのです。今でも大企業は法人じゃないと取り引きしないという会社が多いですよね。それと同じです。

ただ、発注できないのは会社のルールの問題であって、有能で信頼できる個人なら企業側も依頼するメリットは大きいのは間違いありません。

ミスマッチを解消したい

個人側からしても大企業から仕事を受注できると多くの場合、報酬は高いし、その成果物は大きな実績となり、自分のフリーランサーとしての価値と信頼を高めることに繋がります。そんな大きなメリットがあるのはわかっていても、何のつてもない場合、なかなか大企業に営業に行って仕事をもらうことは難しい。かつて私自身が個人事業主として仕事を請ける立場だったのでよくわかります。高い技術を持ちながら営業が苦手というフリーランサーはたくさんいますよね。

このように、企業とフリーランサー、どちらにもニーズがあるのにミスマッチが起こっているということに気づいて、法人は安心して個人に仕事を発注でき、個人は気軽に法人から仕事を受けられるというサービスが私自身もほしいし、世の中にも必要なんじゃないかと思いました。私は両方経験しているから余計そう思ったんですね。さらにそういうサービスがあれば時間と場所にとらわれない働き方ができ、人びとの働き方が変わる可能性があるんじゃないかと考えました。

当時そういうサービスはなかったので、ならば自分で作ってしまおうと、2008年に独立して会社を起こし、クラウドソーシングサービス「ランサーズ」を立ち上げたというわけです。


──大企業グループから抜けて独立するということに不安や恐れはなかったのですか?

ゆくゆくは起業したいという気持ちは学生の頃からありましたし、学生の頃に自分である程度の規模のビジネスを作ることができたので、ニフティを辞めるときはそれほど怖くはなかったですね。もし起業してうまくいかなくてもまた数千万円レベルであればすぐ自分で稼げると思っていましたしね。

壁一面にホワイトボードが設置されていていつでもブレストができるランサーズのオフィス。ちなみに椅子はオカムラ製の「バロン」を採用している。「1日座っても疲れないので重宝しています」(秋好さん)

秋好陽介(あきよし ようすけ)
1981年大阪府生まれ。ランサーズ株式会社代表取締役社長。

20歳のときに初めてPCを購入し、自力でホームページを制作。以降、広告収入や受託開発などインターネット関連ビジネスで個人事業主として年間数千万円の収入を得る。2005年、ニフティ株式会社に入社。Webプロデューサーとして複数のインターネットサービスの企画運営を担当。2008年4月ニフティを退社し、起業。同年12月に「時間と場所にとらわれない新しい働き方」の創出を目指して国内初となるクラウドソーシングサービス「ランサーズ」を立ち上げる。現在では同種のサービスがいくつか存在するが他の追随を許さないほどの圧倒的シェアを誇る。2013年1月、日本テレワーク協会「第13回テレワーク推進賞」の会長賞受賞。

初出日:2013.12.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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