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2013.12.15  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

好きなことで役に立ちたい

──秋好さんは働く上でどんなことを大切にしてきましたか?

ひとつ根本にあるのが、明日死んでも後悔しない生き方がしたいということ。その原体験となったのが僕が中学生のときに起こった阪神淡路大震災です。当時は大阪に住んでいたので震災からしばらくは、親族や友人など日常的に人の死に直面させられました。そのとき、人って簡単に死ぬんだな、自分だっていつ死んでもおかしくないんだと強烈に思いました。だからこそ明日死んでも後悔しない生き方がしたいとの思いが胸の奥に深く刻まれたんです。2011年の東日本大震災でも改めてそう思ったし、そういう人も多いんじゃないでしょうか。

明日死んでも後悔しないために重視してきたのは心の底からワクワクするような本当にやりたいことをやること。好きな仕事で楽しく働くこと。ですから今取り組んでいるランサーズの事業は仕事というか自分のやりたいことで、僕はそのやりたいことをやりたいようにやって、生きたいように生きている。それが結果的に「働いている」という状態になっている、いう感じです。


──最高の人生ですね。

最高です(笑)。そうなるようにこれまで自分自身でその都度働き方や生き方を選択してきたという感じですね。

もうひとつ働く上で重視しているのは。自分の仕事が社会にとって意義があるかどうか。それがなければただの遊びになっちゃいますからね。好きなこと、やりたいことで、人や社会の役に立つことを理想として取り組んできました。

苦手なことも好きなこと

──とはいえ、経営者という立場になると本来はやりたいと思っていなかった苦しいことやつらいこともたくさん出てくると思いますが。

確かに経営者という立場になる過程でそういう悩みはありました。ひとりのエンジニアだった頃は好きなものづくりだけに没頭できたのですごく楽しかった。

それが組織が大きくなってくると当然収支面や人のマネジメントなど会社を経営していくための難しいことを考えなければなりません。正直数字を見て分析、判断することなどは得意じゃないのでできればやりたくない仕事です。

だけどそういう苦手な仕事も、僕たちが目指している社会を実現するためには避けては通れない道なんですよね。また、結局どんな大企業でも社長≒会社だと思うんですよ。社長の器で会社の規模も決まるといっても過言ではない。自分も経営者として研磨、鍛錬、成長しないと、会社は成長しないしやりたいこともできない。だから苦手な仕事もやりたいことの一部だなと思えるようになりました。

これからもっと会社の規模が大きくなり、僕自身の視座が高くなっていくと、こんなこともやらなきゃいけないのかというようなことも増えてまた絶対悩むと思いますが、それもまた好きな仕事だと思ってやる。その繰り返しなんでしょうね。


──立場が上がっていくにしたがってやりたくない仕事も増えていくけど、実現したい大きな目標があるから頑張れる。それをこなしていく過程で会社も秋好さんも成長してきたし、これからも成長していくということなんでしょうね。

そうですね。最初はアルバイトひとり雇うのも死ぬほど悩んでた小さな人間でした。石橋を叩きまくって渡るタイプなので(笑)


──では何のために働くかというと?

突き詰めれば自分のためだと思います。大学生のときに大きな衝撃を受けたインターネットの可能性を多くの人にも知ってほしい、気づいてほしいという自己欲求な気がしますね。

そして、正社員、契約社員、派遣社員、アルバイトなどと同列にある働き方の選択肢のひとつとしてクラウドソーシング、つまりランサーズを確立したい。例えば今の大学生が卒業すると大多数は会社に就職しますが、当たり前のように「ランサーズを利用して働く」を選ぶという社会になればいいなと。そういうキャリアパスが描けるように、いきなりランサーズで生きていくというロールモデルも作っていきたいと思っています。そうやって将来的には日本の働き方を変えて、引いては人びとの生き方を変えるところまで実現したいと思っています。

秋好陽介(あきよし ようすけ)
1981年大阪府生まれ。ランサーズ株式会社代表取締役社長。

20歳のときに初めてPCを購入し、自力でホームページを制作。以降、広告収入や受託開発などインターネット関連ビジネスで個人事業主として年間数千万円の収入を得る。2005年、ニフティ株式会社に入社。Webプロデューサーとして複数のインターネットサービスの企画運営を担当。2008年4月ニフティを退社し、起業。同年12月に「時間と場所にとらわれない新しい働き方」の創出を目指して国内初となるクラウドソーシングサービス「ランサーズ」を立ち上げる。現在では同種のサービスがいくつか存在するが他の追随を許さないほどの圧倒的シェアを誇る。2013年1月、日本テレワーク協会「第13回テレワーク推進賞」の会長賞受賞。

初出日:2013.12.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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