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2016.01.22  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

普通のことを丁寧に

川崎直美-近影10

──現在はどんな暮らしなのですか?

だいたい8時過ぎに起きて、シャワーを浴びたり朝ごはんを食べたり、海でアウトリガーカヌーに乗ったりしてゆっくり過ごしてます。営業日は開店準備をして11時にお店を開けて、営業中は接客・販売のほか、洋服のリメイクをしたりもします。でもお店にずっと座っているわけではなくて、お客さんもそんなに来ないから、隣の居間でパソコンの前に座って地域活動系の仕事をしていることが多いわね。


──日々の過ごし方で大事にしていることは?

一番大事にしている、というか大切にしたいと思っていることは、普通のことをできるだけ丁寧に心を込めてするということ。朝起きて寝るまでの一連の行為、歯磨き、食事、洗濯、掃除など、普通の暮らしをいかに丁寧に手を抜かず心を込めてやるかというところに私はすべての根源があり、人生が決まってくるんだと思うの。


──丁寧にというのは具体的には?

一つひとつの行為を意識してやるということかな。日々の普通のこと、掃除や洗濯、食事、人との会話など、どんなことも一つひとつの行為を意識して行う、丁寧に隅々まで心を込めて行うってことかな。例えば髪の毛を洗うときに一本一本の髪の毛を意識しながら愛を込めて洗う。歩くのもただA地点からB地点へ移動するのではなく、一歩一歩を意識して歩く。70年代にBE HERE NOWって言われてたことかな。何か特別なことをやるのではなく、そういう普通の生活の基本そのものをどれだけ意識して丁寧にできるかが自分のペースを作っていくわけだよね。


──食材も自然食品にこだわっているのですか?

川崎直美-近影11

もちろん極力そうしているんだけど、そこはケースバイケースで絶対じゃないですね。食材はだいたいいつも逗子の大きな自然食品店で買うことにしているけど、そこで買えなかった場合は近所のスーパーで買ったり、いいものを買いたいけどお金が足りないときは普通の食材を買ったりしています。肩肘張ってると続かないしね(笑)。

物にこだわるというよりは行為に対して心を込めて、手を抜かずにしたい。例えば食事も忙しいときはとにかく食べなきゃいけないからちゃっちゃと作ってぱっぱと食べるという感じになりがちだけど、できるだけそれをしたくないのよ。時間がないときはお店でお弁当を買うこともあるんだけど、それをできるだけやめて、家でおにぎりを作って持って行くというふうに変えていきたいなと。

多くの人はね、偉大なことを成し遂げることで幸せな人生になるとどこかで思ってるような気がする。例えば大企業に入ることだったり、すごくすてきなお店をもつことだったり。何かで成功することだったり有名になることだったり。でもそうじゃなくて、料理でも掃除でも丁寧に心を込めてやると気持ちがよくなるでしょ。そういう小さないい気持ちの積み重ねが豊かな人生を作っていくんだと思うの。

やりたいことをやるべき

──生き方という意味で大事にしていることは?

私の好きな言葉で言うと「人事を尽くして天命を待つ」。自分でできることはとことんやって、最後は神様に任すしかないのかなと。


──では働くということ、もしくは働き方で大事にしていることは?

川崎直美-近影12

私は自分がやりたいことを仕事にするべきだと思うのね。でもこれがなかなか難しい。私も会社を辞めるとき、すごく悩んだんだけど、社長から毎日本社に出勤しろって命じられたりいろいろと自由が効かなくなってきても、我慢して従っていれば毎月一定の給料が入ってくるから経済的な生活は安定する。でもそれって、自分の時間と労力を自分がやりたくないことのために差し出して、その見返りとして生活が保証される、つまり生活するために魂を売り渡しているわけだよね。

でも本来人間はそういう暮らしをするべきじゃないと思うのよ。やりたくないことを嫌々やりながらじゃないと暮らしていけないなんて絶対おかしい。すべての人間は本来、自分の好きなことややりたいことをやれて、生活も成り立つというふうに暮らせるはずだと思うのね。私は今、やりたいことはやれてるけど生活は苦しいから、何かが間違ってるんだろうね(笑)。


──それはたぶん多くの人が感じている問題だと思います。やりたいことと経済的安定のバランスって本当に難しいですよね。

やりたいことを取って経済的な安定を失うのは誰だって恐いわよ。多少収入が減るくらいならいいけど、50%ダウンだったら厳しいよね。でも嫌な仕事はやっちゃいけないし、嫌な会社にい続けたらいけないと思う。悩んでいる人もいろんな理由付けをして本当はこうしたいということをやれていないと思うんだけど、自分の本当の気持ちは自分自身が一番よく知ってるんだよね。そこから目をそらし続けるか、直視するかの違いだけだと思いますよ。

理想の生き方

──では理想の生き方は?

川崎直美-近影13

自分が好きなことでちゃんと稼げて好きなように生きるということ。もちろんみんなそうだと思うけどね。自分の好きなことだけをして生きると言うとすごくわがままで、怠け者、ずるいような感じもするんだけど、そうじゃなくて自分に与えられてるものを生かすということ。ちょっと大げさなことを言うとみんな使命、やるべきことを背負ってこの世の中に生まれてきてると思うのね。それを見つけることができれば精神的にも経済的にもハッピーに生きることができると思うのよ。


──ご自身の役割、使命は意識されてますか?

葉山に引っ越してきてから地域のために尽くしたいという気持ちがより一層強くなったから、それが私の使命なのかな。今後も地域のみんなが幸せに暮らせるような活動をしていきたいと思っています。これで食べていければ最高なんだけどね(笑)。


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川崎直美(かわさき なおみ)

川崎直美(かわさき なおみ)
1951年神戸市生まれ。レパスマニス店主/地域活動家

神戸に暮らしていた10代は、ヒッピー文化の影響を受け自由な生き方にあこがれる。16歳で高校中退後、アルバイト生活。大阪万博のアルバイトで知り合ったスウェーデン人の女性に触発されて20歳のとき世界一周の旅へ。途中で立ち寄ったバリにハマり、バリを拠点に生活スタート。23歳のときタイで出会ったアメリカ人男性と恋に落ち、24歳で娘を出産。生活拠点をハワイに移し、バリとハワイを行き来する暮らし。28歳のときパートナーと離別、日本に帰国。様々なアルバイトを経験後、東京で外国人タレントのマネジメント事務所で働くようになる。計2社で約4年勤務した後に自ら外国人タレントのマネジメント事務所を起業。バブル景気に乗り、大成功を収めるも、12年経営した後に廃業。1994年単身、アメリカに渡り古い中古車を購入し、中西部のネイティブアメリカンの土地をめぐる。半年間で1万6000キロを走破。帰国後は逗子に移住。渋谷に自然生活雑貨店「キラ・テラ」を開店。2年後、大手自然食材企業に吸収、社員となり、横浜の店で勤務。12年勤めた後、退社。地域活動にのめり込む。2011年に葉山に移住、自然生活雑貨店「レパスマニス」開店。現在はレパスマニス店主を務めるかたわら、葉山町をみんなが暮らしやすくする町にするために様々な活動に尽力中。

初出日:2016.01.22 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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