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2015.02.25  取材・文/山下久猛 撮影/ 守谷美峰

生命の起源を解き明かしたい

自身の研究について高校生に講義する羽村さん

──東大大学院の博士課程に在籍する研究者としては、これまでどういった研究をしてきたのですか?

私の専門領域は惑星科学、アストロバイオロジーです。惑星科学は水金地火木土天海を始めとする太陽系の中の惑星や衛星、小惑星や彗星などさまざまな天体を調べる学問です。アストロバイオロジーは宇宙における生命の存在やその起源を調べる、比較的新しい研究分野です。中でも私は、今から約40億年前に地球に大量に降り注いだ隕石の衝突にともない、生命の材料がどうやって作られたのか、に迫る研究をしてきました。


──そもそもどうして、いつごろから宇宙の研究をしたいと?

若いころは、お金持ちになりたい、女性にモテたい、有名になりたいなど、ありがちな願望がいくつかあったんです。私の場合は中でも特に「有名になりたい」が強かったんですよね。それも、歴史に名を残す人になりたいと思っていたんです。

では、万人が知ってる歴史上の人物ってどういう人だろうと考えたとき、ガリレオ、ニュートン、アインシュタインの3人の名前が浮かびました。この3人って、宇宙にまつわる物理学の分野でそれまでの常識をくつがえすような、またその後の科学の進歩に大きく貢献したすごい功績をあげた研究者なんですね。だから私も宇宙と物理を学ぼうと思って、大学受験のときに物理学科を受験し、唯一受け入れてくれた慶應義塾大学理工学部に進学しました。

隕石の衝突を再現するために、神戸大学や宇宙科学研究所(ISAS)の巨大な銃(実験機器)を使用している(写真はISASのもの)

宇宙人・地球外生命を探したい

大学4年生の研究室配属のときに天文系の研究室に入りたかったのですが、すごい人気で抽選に外れて入れなかったんです。そこから自分探しの新たな旅が始まりました。ひと言で宇宙とか天文といってもすごく広いんですよ。そこで、いろいろ本を読んだりして情報収集をしていたところ、天文学者が宇宙のことについて話して、その後参加者とお酒を飲みながら宇宙談義をするという「アストロノミーパブ」という会が毎月開かれていると知りました。おもしろそうだと思って、情報収集を兼ねて参加しました。

するとその場で国立天文台の観望会のスタッフと出会って、宇宙に興味があるなら観望会を運営したり、参加者に解説したりするアルバイトをしてみないかと誘っていただきました。これは渡りに船とバイトをし始め、それが後にKSEL立ち上げのきっかけのひとつになったのは先にお話した通りです(※前編参照)。

そこでいろんな先輩研究者の話を聞いていたら、自分が最も興味をもてるのは宇宙人・地球外生命の有無だと思ったんです。どんなに小さな生き物でも地球以外のところに地球由来ではない生物がいたらすごくおもしろいし、宇宙人を見つけたら歴史に名を残せると。確かなことが確認できるのは遥か未来の話でも、そこに繋がる大きな一歩を自分が担ってみたかった。それができそうな研究室を探して、東京大学大学院 新領域創成科学研究科の杉田研究室に入ったんです。

ただ、広い宇宙の中から、まだいるかどうかもわからない地球外生命体を探そうと闇雲にもがいても、何かが見つかる可能性は極めて低い。一方で、宇宙のどこかに仮に生命がいるとしたら、地球と似た発生の仕方をしているんじゃないかと思いました。そこで地球での生命の起源を調べる方向に研究の舵を切りました。地球の生命の起源にはいくつかの説がありますが、中でも有力だと思われるもののひとつに、隕石が地球に衝突したことで生命の材料のそのまた材料のようなものが作られたのではないか、という考えがあります。そこで、そのプロセスの解明を志し、以来、ずっとその研究をしてきました。

実験、計測中のひとコマ

宇宙人は存在するか

──そもそもの夢だった地球外生命体は宇宙のどこかに存在すると思いますか?

いてほしいと思っています。いるとは断言できないし、いないとも言いたくない、みたいな(笑)。じゃあ出会えますかと聞かれたらそれは無理だと思っています。交信もできなさそう。なぜなら宇宙はあまりに広すぎるし、候補となる天体も多すぎるからです。太陽から一番近くの星との間で通信するだけでさえ、往復約9年もかかります。直接行くとなったら、何万年かかることか......私が生きている間どころか、人類が存続している間に可能かどうかすら怪しい気がします。ただ、この広い宇宙のどこかにはいてほしい、とは思いますけどね(笑)。

羽村太雅(はむら たいが)
1986年山梨県生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程/KSEL創立メンバー

慶應義塾大学理工学部卒業後、「宇宙人を見つけたい」との想いを叶えるため東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 杉田研究室へ。専門は惑星科学、アストロバイオロジー。隕石の衝突を模擬した実験を通じて生命の起源を探る研究を続けてきた。研究の傍ら、2010年6月に柏の葉サイエンスエデュケーションラボ(KSEL)を立ち上げ、地域に密着した科学コミュニケーション活動を行なっている。その活動が認められ、日本都市計画家協会優秀まちづくり賞やトム・ソーヤースクール企画コンテスト優秀賞などを受賞。また「東葛地域における科学コミュニケーション活動」が2014年度東京大学大学院新領域創成科学研究科長賞(地域貢献部門)を受賞。さらに単独でも多様な科学コミュニケーション活動を行なっている。国立天文台定例観望会学生スタッフ、宇宙少年団(YAC)千葉スペースボイジャー分団リーダーなども務めてきた。2015年3月卒業後は起業を予定している。ちなみに名前の「タイガ」は寅年生まれに由来する。

初出日:2015.02.25 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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