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2014.05.01  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

READYFOR?とは

──米良さんが立ち上げた「READYFOR?」とはどんなサービスなのですか?

2011年4月にスタートした、日本初にして日本最大のクラウドファンディングサービスで、たくさんの人がウェブ上で実現したい夢や目標をプレゼンし、共感した人から支援金と想いを集めています。私はファウンダー及び統括責任者としてREADYFOR?の運営の指揮を執っています。

クラウドファンディングとは、「クラウド=群衆」「ファンディング=資金調達」という意味の言葉を組み合わせた造語で、その名の通り、インターネットを利用して、多くの人から少しずつ支援を募り、最終的に目標とする大きな支援金を得るというサービスです。そもそもアメリカ発のサービスですが、新しい資金調達の手段として注目されており、今では世界中で500以上のクラウドファンディングサービスが運営されています。日本でもREADYFOR?の出現以来、いくつかのクラウドファンディングサービスが生まれています。

──READYFOR?の仕組みを教えてください。

「こんなことがやりたい」「こんな問題を解決したい」という夢や目標を抱いたら、READYFOR?上にプロジェクトを掲載します。掲載料は無料です。READYFOR?ではプロジェクトを立ち上げた人のことを「実行者」と呼んでいます。実行者は、支援金の目標金額と募集期間とリターンを設定します。3ヶ月の募集期間内にプロジェクトに共感した支援者から目標金額が集まった場合のみ、プロジェクトは成立し、実行者は支援金を受け取ります。目標金額に1円でも満たない場合は、支援金は支援者に全額返金されます。不十分な資金ではプロジェクトは実行できず、支援者へのお礼もできないからです。


──お礼というのは?

プロジェクトが成立した場合、実行者は支援金を受け取る代わりにお礼として支援者に「リターン」を返します。支援したい人は、このリターンを受け取るための引換券をネット上で購入することで支援者となり(※引換券を購入するにはJCB/Visa/Masterのクレジットカードが必要)、実行者が実現したいプロジェクトを達成したときに「リターン」を受け取ることができます。つまり、単なる寄付ではないということです。このようにREADYFOR?は数あるクラウドファンディングサービスの中でも「購入型」&「オール・オア・ナッシング型」のサービスなのです。

現在サービスを開始して丸3年と少しですが、順調にユーザー数を伸ばし、これまで約800のプロジェクトが立ち上がり、支援した人は合計で3万5000人、集まった支援金は約5億円、全体の7割以上のプロジェクトが目標金額に達しています。ユーザーも高校生からお年寄りまで幅広い年齢層で、ゴミ拾いをして街をきれいにしたいという小さなものから、社会問題を解決するために起業したいという大きなものまでさまざまなプロジェクトが日々立ち上がっています。私たちはプロジェクトが成立した場合のみ、総支援額の17%を手数料としていただいています。開始2年目で黒字化することができました。(※READYFOR?の仕組みについてはこちらを参照)

プロジェクト立ち上げまでの流れ

READYFOR?で目指しているもの

──米良さんはどんな思いでREADYFOR?を運営しているのですか?

READYFOR?のミッションは、「年齢、性別、保有資産の多寡にかかわらず、誰もがやりたいことを実現できる世の中にする」ということです。今の社会は「こういうふうにやればこの社会問題が解決するんじゃないか」とか「こういうふうにやればみんながもっと気持ちよく、元気に楽しく生きていける社会にすることができるんじゃないか」と思っても、資金や人脈の問題であきらめるという人が多い。つまりやりたいことがあっても実行するまでのハードルが高いと思うので、それをREADYFOR?でもう少し低くすることによっていろんな人たちがやりたいことにチャレンジして、実現できるような社会にしたいというのがまず根底にあります。そのために、READYFOR?というプラットフォームをさらに使い勝手をよくして、世の中に広めていくことが私の使命だと思っています。

口で「こういうことがやりたい」と言う人はたくさんいるんですが、その実現のために実際に自分で一歩踏み出して実行する人はあまり多くはいません。私はその一歩は本当に大きな一歩だと思っていて、READYFOR?でプロジェクトを立ち上げる人のことを「実行者」と名づけたのはまさにそこにあります。なぜ一歩踏み出せないかというと、資金不足ということもあるとは思いますが、失敗するのが恐いから、成功の見込みが薄いから、ということも大きいと思うんです。でも私は失敗しても全然いいと思うんです。失敗したら、落ち込むけれどなぜ失敗したんだろうと振り返って検証するはずなんですよね。それが必ず次の一歩につながります。

また、日本、特にネット社会では何か新しいことをやろうとする人、何かに挑戦しようとする人に対して否定的な意見を言ったり、足を引っ張ったりする風潮があると思いますが、一人ひとりがやるべきことを明確にして実行者となり、それをお互いに支え合うような世の中になっていけば、そういうことも減ると思うんですね。一度実行者になった人は、その熱意やたいへんさ、成功した時の喜びがわかるので、新たに何かを始めた実行者を応援したくなりますから。そんな感じで実行者が増えて有機的につながると社会がよりよくなっていくし、人々の成長や、引いては経済成長にもつながると思うんです。だからREADYFOR?を使ってみんなが実行者になる社会を作りたいと強く思っているのです。

米良はるか(めら はるか)
1987年東京都生まれ。READYFOR?代表/オーマ株式会社取締役

慶應義塾大学経済学部に在学中、「あのひと検索スパイシー!」の開発に携わり、「あのひと応援チアスパ!」を立ち上げる。卒業後は、2012年同大学院メディアデザイン研究科に進学。米スタンフォード大学に留学し、クラウドファンディングサービスの研究に没頭。帰国後、2011年3月、日本初のクラウドファンディングサービスREADYFOR?を立ち上げる。以後、READYFOR?の統括責任者としてチームを牽引、日本最大のクラウドファンディングサービスにまで育て上げる。2012年には世界経済フォーラムグローバルシェイパーズ2011に選出され、日本人史上最年少でダボス会議に参加。「国・行政のあり方に関する懇談会」のメンバーも務めている。

初出日:2014.05.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの