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2013.12.01  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

今後の働き方

──秋好さんは新しい働き方をつくろうとしているわけですが、今後、人びとの働き方はどのようになっていくと思っていますか?

ひとつは、現代は人類史上初めて、職業の寿命が人間の寿命よりも短くなった時代なんですよ。どういうことかというと、例えばヨーロッパで代々靴職人を生業としている家系だと、靴職人というスキルを親が子に伝え、子が孫に伝え、そのスキルだけで200~300年は生きてこられました。

しかし、今は例えばIT関係のスキルを身につけてもそれが実際に開発現場で使える期間は30年くらいです。しかもその期間はだんだん短くなっている。求められている技術はものすごいスピードで進化していて、その分使われなくなる技術もものすごいスピードで増えている。そうすると何が起こるかというと、これまではひとつのスキル、職能だけを身につければ生涯食べていけたのが、今後は1つじゃ足りなくて2つ、3つくらいないと生きていけなくなる。

別の角度から見ると、グローバルな競争にさらされたりすることで産業そのものの寿命が短くなっているので、会社の寿命も短くなっています。事実、100年、200年続く企業ってどんどん少なくなっていますよね。そうなると一番会社を圧迫する経費は人件費なので、会社は正規雇用を控えるようになり、個人がひとつの会社で長く働くということが難しくなってくる。

そういう状況になると、事業を推進していくために企業が取る方策としては、社内の人間だけで回していくのではなく、企画ごとにさまざまな職能を持つ外部の個人が離合集散するプロジェクト式になるでしょう。今後、全体の1割とか2割はそういう働き方になる可能性があります。事実、リクルートワークス研究所の調査でも、今後企業のアウトソーシング率が1.5~2倍になるとか、正社員は確実に減っていき、今全体の15%を占めているプロジェクト式が2020年には50%くらいになるという結果が出てるんですね。

とはいえ、こういうプロジェクト式がベストだと言っているわけではありません。そもそも働き方にいいも悪いもありません。当然巨大なプロジェクトは個人の集まりではできないので、従来通り大企業の社員が中心となって進めていくでしょう。

どちらかトレードオフというのではなく、多様な働き方があっていいと思うし、そのうちのひとつの可能性を作っていきたい。個人の職能を生かしたプロジェクト式を採用したいという企業や、そんな働き方をしたいという人が増えた時のプラットホームにランサーズがなりたいと思っているんです。

人びとに伝えたいこと

──働くということに関して人びとに伝えたいことは?

本当にやりたいことがあるのに、それを我慢して生きている人が多いような気がします。長らく不況が続いているので仕方がない面もあるとは思いますが、特に若い世代はリスクに対して必要以上に臆病にならずに、本当にやりたいことがあればやってみればいいんじゃないでしょうか。ダメでも命までは取られませんから。

僕自身も若い頃はこの先自分はどうなっていくんだろう、などと悩んでいました。でも頑張ってやってみたらできたし、行動する過程で好きなことや得意なことや苦手なことを判断する軸が見えてきたので、いつまでも悩んでないで、とりあえずやってみることをお勧めします。


──確かに頭の中でいつまでも悩んでいたって何も得られませんもんね。

そうですよ。有名な壷の話がありますよね。人びとを集めてAとBの2つのグループにわけて、Aグループには最高の壷を作れという指示を出して、Bグループにはとにかく壷を量産しろという指示を出した。その結果は、明らかにBグループの方がいい壷をたくさん作ったという話です。

この話は人生にも当てはまると思っていて、自分にとって天職のような仕事がしたいと思ってもあれこれ考えすぎてなかなか難しい。でも少しでも興味のあることをどんどんやっていくとその過程でこれだというものに出会えると思うんです。僕の周りの尊敬する人たちも同じようなことを言っているので、真理だと思いますね。


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秋好陽介(あきよし ようすけ)
1981年大阪府生まれ。ランサーズ株式会社代表取締役社長。

20歳のときに初めてPCを購入し、自力でホームページを制作。以降、広告収入や受託開発などインターネット関連ビジネスで個人事業主として年間数千万円の収入を得る。2005年、ニフティ株式会社に入社。Webプロデューサーとして複数のインターネットサービスの企画運営を担当。2008年4月ニフティを退社し、起業。同年12月に「時間と場所にとらわれない新しい働き方」の創出を目指して国内初となるクラウドソーシングサービス「ランサーズ」を立ち上げる。現在では同種のサービスがいくつか存在するが他の追随を許さないほどの圧倒的シェアを誇る。2013年1月、日本テレワーク協会「第13回テレワーク推進賞」の会長賞受賞。

初出日:2013.12.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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