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2013.07.15  取材・文/山下久猛 撮影/村上宗一郎

いいことづくめの働き方

──サラリーマン時代と今を比べて独立してよかったと思いますか?

それはもう間違いなくよかったですね(即答)。会社員時代とは精神的な健やかさ加減が全然違います。もっとも、より忙しくなっているので肉体的にはきついですけどね(笑)。


──独立してよかったと思う理由は?

まずは働き方や、やる・やらないの選択権などいろんな意味で自由だからです。同時に自由であるがゆえにいろんな責任もともないますが、それは自由が前提にある責任なのでまったく苦になりません。やっぱりすべて自分で決めたことなので結果がどうなっても納得感があります。

あとは「コミュニティ」ですかね。おもしろい人とのつながりがどんどん増えて、自分がつくるコミュニティもすごくおもしろくなっているという思いはとても強くもってます。

サラリーマン時代のつながりって同じ社内の人が多いと思うんですよ。そうするとそれが当たり前だと思っちゃうんですが、会社から出て独立すると、世の中にはいろんな人がいるなと実感できるし、自分とは違う生き方、働き方も全然ありだと思えます。すると、自分はどうしたいのか、どう生きたいのかと考えたときに制約がどんどんなくなって、より自由な状態になってるような気がします。

今は独立する前に願っていた、自分の居場所を作りたいという夢が叶っているので、とてもいい状態だと思います。


──逆に独立してデメリットに感じることは?

ないですね(即答)。

働くとはどういうことか

──中村さんにとって働くとはどういうことでしょう?

生きることとほぼ同義です。それくらい自然な行為。もちろん楽ではなくてたいへんなこともたくさんありますが、自分の生きていくこと、暮らすこと、あらゆることに自然と接しているというかつながっているというか、そういうものが仕事でありたいです。


──では何のため、誰のために働いていますか?

間違いなく自分のためですね。自分が楽しくあるために。そう自信をもって言えるようなことならば、結果として誰かに贈り物をするような仕事になると思うので。

今後の仕事と働き方の変化

──今後の世の中の仕事や働き方はどう変わっていくと思いますか?

最近特に思うのが、10~20年前までは何かをつくる職業がけっこう人気だったと思うんですよ。でも「仕事百貨」を5年やってきて、ここ最近人気が集まっているのは、つくるよりも「つなげる」仕事なんですよね。

例えば僕らが学生だった10年前は、デザイン系の就活イベントに優秀な学生が集まっていたのですが、今はコミュニティをつくるような仕事やシェアハウス、シェアオフィスのようなコミュニティ関連の仕事などにすごく優秀な人が集まっているんです。

モノはすでにたくさん世の中にあふれています。それにどう関わるかとか、人と人をどうつなげるかということの方がよほど大事だと多くの人は思っているように感じています。だから、これからは広い意味で「編集する」というか「つなげる」という仕事がもっと増えていくんじゃないかなと思います。

働き方としては、あらゆる境界や垣根や障害がどんどんなくなり、働き方自体がフラットになり、あらゆる意味でどんどんシームレスになっていくと思います。

例えば会社という枠組みや時間の制約などがなくなり、縦割りの中で仕事をするということがなくなる。それってたぶん生きるように働くということのひとつだと思うんですが、自分が望む生き方を実現するために大きな会社を辞めて独立する人も増えていくでしょうし、フリーエージェント・スタイルみたいに組織に半分所属しながら独立して自由に働く人も増えるでしょう。

人生の夢

──今後の目標は?

まず目の前の目標としては「リトルトーキョー」をおもしろくしていきたいですね。僕らは世の中の既存のシステムを与えられる、享受する立場じゃないですか。だけどその与えられる側がつくったものがもしかしたら世の中のシステムの変化を促すかもしれませんよね。それを目的にやっているわけではないんですが、何よりも自分たちがフラットに考えて、楽しくて、気持ちがいいことを居心地のいい場で実践していき、リアルな形としてつくっていきたいですね。

──人生の夢はありますか?

夢ですか......夢ってなんだろう? 僕はあまり未来のことは考えていないんですよね。こうじゃなきゃいけないと思うこともないですし。

よく思うのは、「未来」や「社会」という大きなものを対象とするよりも、まずは「今」や「目の前にいる身近な人」を大切にしたいということです。目の前のことにちゃんと誠実に取り組んでいけばいいご縁、いいつながりが生まれていくという実感があるので、それをまた贈り物をするように誰かにお返しするというか、それを積み上げていくことこそが僕の望み、やりたいことですね。

中村健太(なかむら けんた)
1979年東京都生まれ。株式会社シゴトヒト代表。

明治大学大学院理工学研究科建築学専攻を卒業後、不動産会社ザイマックスに就職。不良債権処理、大型複合商業施設の開発・運営などを経験後、2007年28歳のときに退職。2008年8月、生きるように働く人のための求人サイト「東京仕事百貨」(現「日本仕事百貨」)をオープン。「自分ごと」「隣人を大切にする」「贈り物」な仕事を、全国各地で取材し紹介している。2009年10月1日株式会社「シゴトヒト」設立。現在はまちおこしなどのディレクター、東京に町をつくる「リトルトーキョー」など各種プロジェクトやメディアのプランナー、キャリア教育などに関わり、「シブヤ大学しごと課」ディレクターや「みちのく仕事」編集長も務めている。

初出日:2013.07.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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