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2013.07.15  取材・文/山下久猛 撮影/村上宗一郎

独立したスタッフとフリーエージェント契約

取材当日居合わせた専従のスタッフと一緒に。引っ越ししたばかりのオフィスでひとつの机でわきあいあいと働く

──独立してしばらくはおひとりでやっていたとのことですが、現在スタッフは何人いるのですか?

専従のスタッフは4人です。「仕事百貨」の取材・執筆の他に、それぞれがプロジェクトを担当しています。それ以外に外部の提携しているライターが数名と、現在インターンもけっこう増えているので関わってもらっているのは合計で20人くらいですかね。


──専従スタッフの雇用形態は? みなさん社員として雇用しているのですか?

いえ。「東京R不動産」と同じでそれぞれの独立した個人事業主と業務委託契約を結ぶというフリーエージェント・スタイルです。うちの場合はオフィスに出勤するのは週3日で、報酬はスタッフと話し合ってお互い納得のいく額を決めています。あとは他の仕事をしてもいいし自由にやってもらってます。


──報酬はどのような形態なのですか?

まずは担当するプロジェクトを仕切る業務委託費がベースにあります。それに「仕事百貨」の取材・執筆・編集費が上乗せされていくというシステムです。取材があまりない月でもスタッフが生活していけるようにこういう2層のシステムにしているのです。やはり、いくらフリーエージェント・スタイルがいいといっても、ベースとなる収入が全くないと人は精神的につらくなると思っているので。

働き方に関するポリシー

──働き方についておうかがいしたいのですが、中村さんが大事にしているのはどういうことですか?

まず、「打算的に働くよりは贈り物をするように働きたい」、「他人事ではなくて自分事(じぶんごと)として仕事をしていきたい」、そして「生きるように働きたい」、この3つですね。


──中村さんはいろんなところで「自分事」とよく言っていますが、具体的に言うとどういうことですか?

例えば休日に本屋をぶらついているときに、自分が担当しているプロジェクトに役に立ちそうな、あるいは参考になりそうな本が見つかったとき、それを手に取るか取らないかはけっこう大きな違いだなと。思わず手に取る人は自分事として仕事をしてる人だと思います。もっと言うと、今は誰かに必要とされてなくても自分がこれをどうしてもやりたいんだとか、どこかに絶対に必要としている人がいるとか強い確信や信念をもって取り組んでいる状態。それが「自分事」というイメージですね。


──では仕事とプライベートの境目はないですか?

そうですね。24時間働いているわけではないのですが、明確にオンとオフをわけるという時間の過ごし方はしていません。言わば休んでいる時でもパソコンがスリープ状態のような感じで、何かあったらすぐ起ち上がる。それはすぐに仕事を始めるというよりも、これおもしろいなと思うことを発見したら、こういうこともできるんじゃないかと思考が際限なく広がり始めるんですよね。

僕はいつもいろんな仕事の何がおもしろいのか、おもしろい点を発見したら、どうしてそれが成立するのかを考えちゃうんですよ。例えば仕事外の時間でもこの飲食店いい感じだなあと思ったら、店内を観察して席数や客層、スタッフの数から、客単価、料理の原価、回転数、利益などをつい考えちゃうんですよね。こういうことを考えることも仕事と捉える人もいるでしょうけど、僕の場合は完全に楽しんでやってるんですよね。おもしろいことが世の中で起きていて、それがどういうふうに繰り広げられてるのかを明らかにすることが好きというか、癖なんですね。気がついたら考えちゃっているという(笑)。


──では「ワークライフバランス」に関しても...

仕事とプライベートはどっちも大切なことですし、バランスさせるものではないと思っているので、僕の場合は常にどっちも混ざっているようなものですね。

「生きるように働く」とは

──「生きるように働く」は「仕事百貨」のキャッチフレーズになっていますよね。この言葉に込められた思いは?

先ほどの話とかぶる部分も多いのですが、明確にオンとオフの区切りがあるわけではなく、仕事だから割り切るという状態でもなく、仕事とプライベートが連続した、波のようにつながっている状態を「生きるように働く」だと思っています。

もうひとつは、生きている人はみな「生きている」ということを日常ではあまり意識しませんよね。僕自身、働くというのもそれくらい自然なことなので生きるように働きたいと思っています。

だからといって、みんなが生きるように働けばいいとは全然思っていません。仕事は生活の糧を得るための手段と捉え、平日に働いて週末は家族や趣味のために使うという生き方・働き方も全然ありだと思います。

ただ、「仕事百貨」の場合はそうではなく、僕と同じような、仕事とプライベートを分けることなく、納得感をもって働きたい人に向けて情報を発信しているので、まさに生きるように働く人のためのメディアなんです。

中村式「日々の過ごし方」

──日々のスケジュールはどんな感じですか? 仕事をする時間や休日などは決めているのですか?

基本的に働く時間は決めてないです。集中できないので家で仕事をすることはないので会社には行っていますけど。「仕事百貨」のような締め切りが明確に決まっている仕事以外は自由にやってます。

基本的に土日は休むようにはしていますが、仕事をしているときもあります。土日だからこそじっくりゆっくり仕事ができますからね。

仕事以外ではトライアスロンやトレイルランに出場したり、そのための練習をしています。またそんなにハードではなくても野外でシートを広げてピクニックしたり、そういう時間の過ごし方もしています。相変わらずサラリーマン時代に通っていたバーにもひとりでよく行ってますし。

誰かと一緒にいるのも好きですが、ひとりになる時間もすごく必要なんですよね。だから休みというよりはひとりになる時間と誰かとコミュニケーションしている時間、どっちも必要です。寝るのも好きですよ。その辺が渾然一体となっている感じですね。


──働き方に関する社内ルールはありますか?

スタッフは出社は週に3回、あとは仕事は10時から19時まで、それ以降はしちゃダメと言ってます。やりだすとキリがないですから。それくらいですかね。

あとルールではないのですが、オフィスで仕事をしててどうしても眠くなるときってあるじゃないですか。そういうときはオフィスのソファで遠慮なく寝ていいことにしています。少し寝るだけでその後の効率がかなり上がるし、そういう余裕があると人って精神的に健やかになりますよね。結果をちゃんと出していれば、また、結果を出そうとする真摯な姿勢があれば、その他のことは別に問題ないです。

中村健太(なかむら けんた)
1979年東京都生まれ。株式会社シゴトヒト代表。

明治大学大学院理工学研究科建築学専攻を卒業後、不動産会社ザイマックスに就職。不良債権処理、大型複合商業施設の開発・運営などを経験後、2007年28歳のときに退職。2008年8月、生きるように働く人のための求人サイト「東京仕事百貨」(現「日本仕事百貨」)をオープン。「自分ごと」「隣人を大切にする」「贈り物」な仕事を、全国各地で取材し紹介している。2009年10月1日株式会社「シゴトヒト」設立。現在はまちおこしなどのディレクター、東京に町をつくる「リトルトーキョー」など各種プロジェクトやメディアのプランナー、キャリア教育などに関わり、「シブヤ大学しごと課」ディレクターや「みちのく仕事」編集長も務めている。

初出日:2013.07.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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