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2015.04.13  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

テレビ局の報道カメラマンに

──前編では主に茂さんの現在にいたるまでの経緯をうかがいましたが、今回は亜基さんのこれまでの道のりについて教えてください。

大和亜基さん(以下、亜基) 私は子どもの頃からアナウンサーになるのが夢だったので日本テレビのアナウンス部の採用試験に応募しました。しかし選考過程で面接官に「君はアナウンサーには向いていないから総合職で受けたらどうか」と勧められたので路線変更し、総合職に応募したところ内定をいただきました。

日本テレビに入社後、最初に配属されたのは報道局映像取材部という部署でアナウンサーとは真逆の世界に飛び込むことになり、私の新入社員生活は私も含めて誰も想像もしていなかった映像カメラマンとして始まりました。当時から女性のカメラマンは珍しく、報道局には私1人だけでしたし、他社にもほとんどいませんでした。


──報道カメラマンの仕事ってすごくたいへんそうなイメージですが、実際にやってみていかがでしたか?

亜基 ものすごくハードでした。報道局というところは世の中で起きていることを伝えることを使命とし、何か事件・事故が起きたらいつでもどこにでもすぐに駆けつけなければなりません。毎日早朝から深夜まで、時には長時間の張り込みや泊まり勤務もあるという日々。ほぼ気が休まることはなかったですね。退職してもう7年以上経つのに、いまだに救急車やパトカーのサイレンの音が聞こえると反応してしまいます。職業病ですね(笑)。

そんな毎日なので食生活もひどいもので、3食すべて外食。自分で家で料理を作って食べた記憶がほとんどありません。とにかく食べられるときに食べる。しかも時間がないのでとにかく早く食べる。取材先ではなかなかトイレに行けないので水分は極力摂らず、仕事が終わった深夜から飲み会などで暴飲暴食をしていました。ただ仕事自体はおもしろかったので、そういう状況すらも楽しみながら限界まで頑張っていました。今考えるとなぜあそこまで頑張っていたのかと思うくらい、その瞬間を撮るために全力投球していました。元々そういう性分なんですね。

でもそういう不規則な生活を続けることで体が悲鳴を上げないわけはありません。次第に体調がおかしいなと思い、出血が始まって、それでも働いていたのですが、2年目の健康診断で潰瘍性大腸炎と診断されそのまま緊急入院となったんです。この病気は指定難病で原因不明といわれているのですが、生活習慣、ストレス、食生活などが大きく影響しているのではないかといわれています。

一変、健康的な生活に

──入院しているときはどんな気持ちでしたか?

亜基 私の人生は終わったと思いました。不健康のレッテルを貼られてしまうと、もう報道局にはいられないだろうなと。でも当時の上司がすごくいい人で、報道局の中にいればまた希望職種に戻れる可能性もあるので部署内異動で業務部に異動してはどうかと。業務部というのは取材現場で働く人たちの後方支援的な仕事。いわゆる事務職で残業はほとんどなく、18時の定時で終わります。体への負担もだいぶ軽くなるので業務部に異動しました。

私生活においても、ライフスタイルをがらっと変えました。まず潰瘍性大腸炎のお薬の量がすごく多かったので、どうにか薬を飲まない状態にもっていきたいなといろいろ調べました。すると私よりたいへんな病気だったのに食生活を変えることで薬を飲まなくても完治した人の例もたくさんありました。それゆえ、もう一度食生活から見直そうと食と健康について猛勉強し、体にいいものを食べるようにしたり、毎日の食事を記録したりしました。また、睡眠もちゃんと取るようにするなど規則正しい生活を心がけるようにしたところ、健康を取り戻すことができたんです。今では薬も一切飲んでいません。

また、健康的な体を取り戻すための一環として、当時ロハスという言葉がブームになっていたので、ロハスについて考える会を結成しました。毎月第3月曜日に有志で集まり、例えば食のエキスパートや睡眠のエキスパート、有機野菜農家の方をゲストにお招きして、みんなで有機野菜や調味料などにこだわった食事をいただきながら学び合うという会合を開いていたんです。2年間ほど継続したのですが、これも心身ともに健康になった大きな要因ですね。

大和茂(やまと しげる)
1978年東京都生まれ。Thai Health Promotion Foundation公式プロジェクト責任者/Marimo5代表

株式会社NTTドコモを経て、タイにMarimo5 Co., Ltd.を設立すると同時に、タイヘルス公式プロジェクト責任者に就任。2007年から約5年駐在員として働く一方で、チュラローンコン大学労働経済学修士課程修了。帰任後は、ICTヘルスケア事業の海外展開等に従事。 健康的な職場と企業成長の関係性を研究すべく、早稲田大学スポーツ科学研究科博士課程在籍中。

大和亜基(やまと あき)
1978年広島県生まれ。Marimo5副代表/食育アドバイザー

大学卒業後日本テレビに入社。報道カメラマンとしてキャリアのスタートを切ったが、激務のため大腸疾患を発症し入院。以来、食と健康についてワークショップを開くなど勉強に励む。広報部に所属していた2007年、夫の茂さんのタイへの赴任辞令にともない日本テレビを退社。タイへ移住。2008年頃からタイ人とともにタイの有機農家と在タイ日本人をつなげる任意団体Marimo5を発足、活動を開始。現在はタイの職場で働く人の肥満問題の解決、健康増進などのソリューションを提供している。

※2015年5月にHappy Workplace Programとオカムラのオフィス研究所が取り組んでいる日本の職場、働き方に関する最先端の研究を発表予定

初出日:2015.04.13 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの