現場スタッフの声
医局改装で生まれたコミュニティと新しい医局のかたち久留米大学 医学部 神経精神医学講座
医局改装について話をうかがいました。
神経精神医学講座 医局長 中村 倫之 様
「人が集まる医局」を実現した空間づくり 学生・若手医師が自然と集まる場所へ
【 改装前の課題 】
インタビューお願い致します!
まず、医局の改装に踏み切ったきっかけを教えてください。
中村:
建屋が出来てから長い年月が経っており、部屋もいくつかに分かれていて、スペースによっては物置のようになっていたりと、空間を十分に活用できていない状況でした。また、医局員の全員が集まって会議等を行えるスペースがなく、症例検討会や医局会を行う際には学内の別会議室を借りて実施していました。そうした状況を見直し、「これからの医局に必要な空間とは何か」を考え、改装を行うことになりました。
改装前の医局はどのような場所だったのでしょうか。
中村:
本来、医局というのは医師が集まる中心的な場所だと思うのですが、実際には事務作業をするために立ち寄る程度の場所になっていました。
簡単な書類の提出や事務処理をする場所としての役割が中心で、そこに長く滞在するような場所ではありませんでした。また、部屋も細分化されていたため、全体として狭く感じられ、医局員が自然と集まるような環境ではなかったと思います。もちろん外部の方、(市役所、保健所の方など)を、お通しする場所でもありました。
【 改装前の要望 】
改装にあたって、どのような医局を目指しましたか。
中村:
主任教授が最初から強く言っていたのが「人が集まる医局にしたい」というコンセプトでした。本学の精神科は特に睡眠の研究に注力し、また多職種との連携が重要な診療科ですので、本丸である医局として、そこに大勢の人が集まって会議もでき、活気のある空間でコミュニケーションを取りやすい場所をつくりたいという思いがありました。また、そうした中で、学生や若手医師が「ここで働きたい」と感じられる環境を作ることも重要なテーマでした。
【 改装の実施 】
具体的な改装内容を教えてください。
中村:
まずは、これまで分かれていた部屋の壁を取り払い、空間を一つにつなげたことです。これにより広いスペースを確保することができ、医局会や症例検討会などの会議をすべて医局内で行えるようになりました。当初は、それぞれの個室を作るといった案もありましたが、いろいろな角度から検討し、今の姿に収まった次第です。また、小規模な打ち合わせが同時に行えるようにミーティングスペースもいくつか設けています。さらに、できるだけ物を置かないようにして開放感のある空間づくりを意識しました。例えば、書籍などは3年間分を医局に置き、それ以前のものは図書館で保管してもらうなど工夫をしました。
櫓で囲うことにより、オープンスペースにある打合せコーナーとは一線を画している
人の出入りが増え、集まることで、コミュニケーションの活性化
【 改装後の結果 】
改装後、医局内でどのような変化がありましたか。
中村:
一番大きい変化は、人の出入りが増えたことです。以前は医局に常駐するのは医局長や秘書、教授くらいでしたが、今では医師や学生が自然と集まる場所になりました。また、今までバラバラだった打合せを同じスペースで行うことにより、ちょっとした声掛けでドクター同士のコミュニケーションが活発になりました。予想していなかったのは、本当に学生が寄り付くようになったことです。魅力的な場所になったことで学生に対してのアピールができ、卒業後に大学病院に進む学生が減ってきている中で人材確保(リクルート)に向けても効果的です。
女性医師の働きやすさという点で工夫はありますか。
中村:
改装計画の過程で、女性医師から「一時的に子どもを連れて来られる場所があると安心できる」という声がありました。そこで、医局内に短時間でも子どもを預けることができるスペースを設けました。「いざという時にそのような場所がある」という安心感は大きいと思います。昨今、女性医師が増えている中で、このような環境を整えることは、医局としても大切なことだと考えています。
医局の利用方法にも変化はありましたか。
中村:
はい。広く使えるようになったので、現在は40人以上が参加しても十分に対応ができ、全ての会議やミーティングをこの医局だけで行えるようになりました。特に、学生も含めた症例カンファレンスを週に一度行えるようになったことは、とても大きいことと思っています。また、学生が勉強の時間より早く来て、ソファでくつろいだり、勉強したりしている姿も見られるようになりました。以前より医局での滞在時間が増え、今ではこの空間を自由に使ってくれており、落ち着いた時間を作ることのできる場所になっています。
広いスペースにソファを並べてくつろげる空間を演出
モニターを設置し、キッズスペースとしても活用
リラックスできるようにキャンピングチェアを設置
医局改装の肝は、最初にコンセプトを決めること
【 その他 】
改装で苦労した点はありますか。
中村:
改装中も医局の機能を止めるわけにはいかないので、その調整は大変でした。工事を段階的に進めながら、秘書や教授の部屋を一時的に移動させて運用しました。また、大学の場合、建築契約の関係で途中変更が難しいため、最初の設計段階でしっかり考えておく必要があります。その点は少し苦労したところですね。
最後に、医局改装を検討している大学や病院へアドバイスをお願いします。
中村:
一番大切なのは、最初にコンセプトを明確にすることだと思います。私たちの場合は「人が集まる医局」というコンセプトがあり、それに合わせて空間を設計しました。また医師だけではなく秘書やスタッフの意見も取り入れることで、実際に使いやすい医局になったと感じています。医局は単なる作業場所ではなく、医師同士が交流し、新しいアイデアや医療の質向上につながるコミュニティの場でもあります。そうした視点で空間づくりを考えることが大切だと思います。
貴重なアドバイスをありがとうございました。「人が集まる医局」が医療の質の向上につながるというお話は、大変勉強になりました。本日はインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました。
施設紹介
久留米大学病院は、高度な先進医療を実践する特定機能病院として昭和3年(1928年)に創立。歴史ある伝統を重んじ、医療情勢の変化に応じて、さらなる質の高い医療実現へと変革と挑戦を続けています。高度で安全なチーム医療の実践が最も重要な点と考え、患者一人一人の状況に合わせて、各科や各部門の専門職が一体となって治療を実践しています。
施設データ
- 所在地
- 福岡県久留米市旭町67番地
- 病床数
- 1094床( 一般病床:1041床 精神病床:53床)
- デザイン協力
- ハシモト事務機 株式会社
