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2015.07.01  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也

ビジネスに使える知恵袋

──現在の活動について教えてください。

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2012年に起業し、仲間たちとビザスクというWebサービスを運営しています。ビザスクとは、課題を持つビジネスパーソン(=クライアント)と、専門的な情報や豊富なビジネス経験を持つビジネスパーソン(=アドバイザー)が、「1時間の電話/対面会議(=スポットコンサル)」という形で出会う機会を提供する有料のWebサービスです。言い方を変えれば、売り物は個人がこれまでに身につけた専門的な知識やスキルで、それを必要としている人が買う、その仲介役ですね。最近は、ひと言でいうと、「ビジネス(企業の意思決定)に使える知恵袋のようなものです」と紹介しています。

──ビザスクに関しては後ほど詳しくおうかがいするとして、まずは現在の働き方について教えてください。端羽さんはネットベンチャーの経営者であると同時にお一人で子どもを育てているシングルマザーでもありますが、仕事と育児の両立をどのようにしてこられたのでしょう。特に起業してからは大変だったのではないですか?

起業した2012年当時娘は小学校4年生で、家をオフィスにして社員もいなかったので、むしろ娘との時間は多かったんです。それよりも2013年の夏に1人エンジニアがフルタイムになってチームができてからが大変でした。家で仕事をするわけにもいかなくなり、オフィスを構え、さらに営業や資金調達のため外回りに行かなくてはいけなくなりましたから。最初はキッズルームがあるシェアオフィスに入っていました。娘もそこが気に入って夏休みに来ては小さい子と遊びながら宿題をやっていました。

その頃は私を入れて2、3人のチームだったので朝から夜までずっと仕事をしていました。娘にも「会社を辞める前の方が忙しくなかったんじゃない?」と言われたり。その頃娘は中学受験をしていたのですが、一緒にカフェに行って私はPCを開いて、娘は勉強道具を広げてお互い作業をしてました。娘は塾で帰りが遅かったので私も遅くまで仕事がしやすい部分もあり、働くお母さんこそ子どもに中学受験をさせた方がいいのかもと思いますね。


──働き方で大事にしていることは?

端羽英子-近影2

起業していると仕事とプライベートを分けることは難しいですよね。四六時中仕事のことを考えているし、周りの友人もそういう人たちが多くなって、夜食事をするのでも、起業仲間と一緒だと絶対仕事の話がメインになるので、どこまでが仕事でどこからがプライベートなのかわからないですよね。線引きが非常に難しいというか。また、そもそも私たちのサービスはビジネスパーソン向けなので、お客様・ユーザーなのか友達なのかも曖昧になることが多く、その辺の境界も溶けていく感じはしています。でも今はそれが楽しいんですよね。

起業すると公私の区別が曖昧になって24時間365日仕事みたいになりますが、プライベートでの楽しみと、ビジネスとして利益を出せる目算と、自分が起こした事業で社会がきっとよくなるはずだという思いの3つが同じ方向を向いてるから頑張れるんです。どれか1つでも欠けていたらつらいと思いますね。仕事自体がすごく楽しくてわくわくすることなので、趣味も必要じゃないんですよ。ただ気分転換というか、意識して心を落ち着けるために茶道を習っています。

ライフステージによってバランスを変える

──ではいわゆるワークライフバランスについてはあまり気にしていないのでしょうか。

いえ、ワークライフバランスはとても大事なことだと思います。家族がいたら自分だけではなくて配偶者や子どもの問題でもありますからね。私はそもそも仕事がすごく好きで、放っておくといつまでも働いてしまうので、娘の時間を大事にするとか、いろんな人に会いに行く時間を意識的に取るようにしています。ただ、ずっとワークライフバランスを求める必要はないと考えていて、人生のある時期によってワークとライフの行き来が自由であってもいいと思います。例えば私の場合は大学卒業後1年間外資系投資銀行で勤務→娘を出産→1年間主婦→1年半外資系化粧品会社で勤務→1年間アメリカで主婦→2年間学生→離婚→5年間投資会社で勤務→起業して2年、という感じでワークとライフを行き来しているんですが、すごく幸せだったと思いますね。仕事に打ち込む時期、主婦に専念できた時期、娘とたっぷり一緒にいられる時期を持てたので。

最初に入社した会社ではワークにかなりの比重を置いていたし、娘が産まれたら会社を辞めて育児に専念。その後MBAを経て働き始めましたが、娘の受験を手伝いたいと思ったので家にいられる時間を多くもてるような働き方にしました。中学受験も終わったこれからはもう少し働く時間を増やせるかなと思っています。子どもの年齢によっても大きく違ってきますよね。その行き来が自由にできやすい社会になればいいと思います。

助けてくれる人やサービスを使う

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私は最初に就職した会社で1年目で子どもができて辞めるときに、生意気にも「申し訳なさを抱えて子育てをしながら仕事をしたくない」と上司に言ったんです。外資系証券会社での仕事は午前0時に帰宅して早いねといわれるような激務だったので、どんなに頑張っても絶対に周りの社員や上司にごめんなさいと言わなきゃいけないし、まだ1年目なので実績もありません。外資系化粧品会社で働いていたときは22時には帰宅できて娘を23時まで保育園にあずけられていたので誰にもごめんなさいと言わずにみんなと同じように働けました。娘がまだまだ手がかかるときに離婚していて仕事も子育ても両方頑張らなければならなかったのですが、独身の年上の友人に一緒に住んでもらったり、私の姪にベビーシッターとしてうちに来てもらってすごく助かりました。

だからワークライフバランスを自分と夫と子どもだけで考えるとすごく大変で行き詰まってしまいますが、手伝ってくれる友人を見つけたり、経済的に余裕があればベビーシッターに来てもらったりして、ライフステージに合わせてそのときベストのバランスを他人の力やサービスを使って取ればいいと思います。全部を完ぺきにはこなせませんからね。最近ではこの4月から中学生になる娘が一緒に食事を作ってくれたりして助かっています。


──では現在の働き方に関しては満足しているという感じですか?

中学生になったばかりの子どもをもつシングルマザーで、ベンチャーの経営者という立場で仕事をしているという身としては、ある程度理想に近い形かなと思います。今後、娘がもう少し大きくなればもっと仕事に費やす時間を増やしたいし、社員のことを考えるともう少しスタッフを増やしてあげたいとは思いますが、私個人はすごく好きな仲間がいて、時間の融通が効かせられて、好きな仕事ができているので、起業してよかったなと思いますね。

端羽英子(はしば えいこ)
1978年熊本県生まれ。株式会社ビザスク代表取締役社長

東京大学大学経済学部卒業後、結婚。ゴールドマン・サックス証券に入社。投資銀行部門で企業ファイナンス等に従事。入社半年で妊娠し1年で退社。その後女児を出産。USCPA(米国公認会計士)を取得後、日本ロレアルに入社。化粧品ブランドのヘレナルビンスタインの予算立案・管理を経験。夫の留学に同行し家族で渡米。1年間主婦をした後、MIT(マサチューセッツ工科大学)のMBA(経営学修士)コースに入学。2年後MBA取得。帰国後離婚、以来シングルマザーとして働きながら子どもを育てる。帰国後すぐに投資ファンドのユニゾン・キャピタルに入社、企業投資を5年間経験後、2012年株式会社ビザスクを設立。2013年ビザスク正式オープン。知識と経験の流通を変える新しいプラットフォームの構築に日夜奔走している。

初出日:2015.07.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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