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2015.07.01  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也

働き方をよりよく

──ビザスクを通して目指しているものは?

端羽英子-近影11

ひと言でいうと、この社会の「知識と経験の流通を変える」ことを目指しています。日本の場合、豊富な知識やスキル、経験を持つエリートサラリーマンと言われる人ほど社内に残っていてなかなか転職しません。そして60〜65歳のときに定年を迎えて突然第一線から引退してしまいます。それは豊富な知識と経験も同時に消えてしまうことを意味します。女性も重要なポジションでバリバリ働いていたのに結婚や出産を機に9時5時の仕事を選択するケースが多い。そうやって知識や経験の流動性がなくなるのは、会社が人材を雇用するとき、フルタイムと決めて組織の中に閉じ込めてしまうから。それを私たちは、「ITと人の力」を利用して、社外の人とも簡単に繋がれるとか、歳に関係なく活躍できるとか、地域を超えて遠い人と繋がれるというふうに変えたい。そうすると個人がフルタイム、正社員に限らない知識や経験の活かし方ができるのではないかと考えています。

そもそも私は「雇用」とか「被雇用」ってあんまり素敵な言葉じゃないなと思っています。まず各個人が自分の強みを自覚できていたら、自分で選んでこの会社で働いていると認識できて、より主体的に働くことができる。それってすごく幸せだなと思うので、私が一番やりたいのは「自分の強みを自分で認識して、だからここで働いているんだ」という意識を持てる人を増やすこと。それがまず基本コンセプトとしてあって、実現できればこの世の中の働き方をよりよく変えられると思っているんです。みなさんが自分の強みをしっかり認識できる機会は会社の中にいると難しいので、そういう機会がたくさんあるような社会を作りたい。そのためのツールとしてビザスクを開発し運営しているわけです。

もう1つ目指しているのは社会全体を元気にするということです。まずは個人に元気になってほしいと思っていて、そのためにはお金は重要なファクターの1つですよね。お給料が上がれば人々は元気になる。そうなるにはお給料を払う会社が元気じゃないといけない。そうなるには新規事業がどんどん生まれて成功する必要がある。そこに個人の知識や経験が助けになればどちらもハッピーになる。だからビザスクはB to Bのコンシェルジュというサービスに力を入れているんです。

ただ、そういう大きなコンセプトはあるのですが、端的にいうと個人が自分の強みを貯めていけるようなデータベースを作っていると思っています。今までこんな会社でこんなことをやってきたのでこういうことができるという強みに深さが出るような人のデータベースを作っていきたいんです。


──会社の新規事業担当者と話をする機会が多いとのことですが、そのときに特に感じることは?

新しい事業を作り出して利益を上げることってかなり難しいし、失敗するリスクもあります。失敗したら減点されて昇進に響いたり社内的地位が下ってしまうという会社が多いですが、それなら新規事業なんて誰もやりたがらないですよね。だから大企業は減点主義をやめて社員を褒めて伸ばす加点主義にすればいいのになと思います。そうすれば個人のモチベーションも上がるし、成功する可能性も高まると思うんですよね。当社は小さい会社ですが、私も経営者としてそうありたいと思っています。

仕事のやりがい

ビザスクのスタッフと一緒に

ビザスクのスタッフと一緒に

──今の仕事のやりがいはどういうところにありますか?

普通のビジネスパーソンであるアドバイザーさんから「クライアントからすごく役に立った、ありがとうと言われてうれしかった」という言葉をいただいたときが一番うれしいし、ビザスクを作ってよかったと思う瞬間です。あとはすでに引退している方がご活躍いただける場合もあるので、これまでつながっていなかったものがビザスクでつながったなと感じるときもうれしいですね。


──逆に仕事の大変な点やつらい点は?

それはフェーズによって違いますね。立ち上げてから最初の1年はこのサービス自体がこれまでにない新しいものだったし、私自身もWebサービスを作るのも、起業するのも初めてだったので全部がわからないことだらけで暗中模索でした。たくさんの失敗、トライ&エラーを繰り返してやっとここまでサービスの形ができてきて、多くの人にも受け入れられるようになった今、一番苦労しているのはいいチームを作ることです。事業拡大に向けてもっとアクセルを踏みたいので、たくさんのいい人に入社してきてほしいし、入ってきた人にどんどん活躍してほしいと思っています。

理想のチーム

──端羽さんにとって理想のチームとは?

端羽英子-近影13

みんな目的にはコミットしているけれど自立していて自由なやり方で結果を出す、みたいな感じです。これまでにない新しいものを作っているので正しいやり方なんて誰にもわからない。たくさん失敗をしながらも早く高速回転していけることが大事なので、目的だけぶれずにやり方は試行錯誤できるような大人なチームを作っていきたいと思っています。

チームのカルチャーとして大事にしているのは失敗してもいいからどんどん新しいことに挑戦していこうというのが1つ。もう1つは子どもがいるメンバーも多いので、私たち自身もこれまでの常識にとらわれず、新しい働き方を考えていこうとしています。例えばリモートワーク。当社にはいわゆる定時、決まった勤務時間やコアタイムがありません。ただ毎朝10時にチャットで集まって各自のその日の予定を報告し合っています。もう1つのルールは週に1度、月曜日だけは10時にみんなで会社に集まって今週やることを報告し合い、月の1度の土曜日だけはロングミーティングを開催してその月の振り返りと翌月の目標を話し合います。あとはどこで働いてもらってもかまいません。子どもの面倒を見なきゃいけないので今日は実家で働きますというのも全然OKです。とはいってもみんなけっこう会社に来て仕事してますけどね(笑)。また、比較的時間と場所にとらわれない働き方が可能なので、今度地方に引っ越す優秀な人にうちで働いてもらおうと考えています。いろんな働き方が当社の中でもあってもいいかなと。

端羽英子-近影14

私自身は自宅で働く日もありますが、基本的に毎日会社に来るようにしています。営業やファイナンス関連の仕事が多いので、外に出て会社を回ったり、空き時間にカフェで仕事をすることが多いです。でもチームを作らなければいけないので、できるだけ社内にいる時間の方を多くしようとはしています。一番典型的なタイムテーブルは、10時に出社してメールをチェックしたり、企画を作ったりします。来客があれば対応し、午後からは会社訪問。夕方に帰社して残りの作業をしたり人とのアポをこなします。中学生になる娘がいるので19時30分には退社、帰宅して娘とご飯を食たり、いろいろ話したり。22時までは娘と過ごす時間と決めています。それから社員にメールを出したりと作業をします。大事なミーティングの前日や資金調達の時期には自宅で遅くまで作業をすることもありますね。

だから朝から夜中まで1日中ずっと働いているというわけではなくて、間に娘との時間を入れたり、休息を取ったりして細切れに働いているという感じですかね。確かにオフィスにいるときの集中力を保って家でも仕事をするのは難しいという側面はありますが、スカイプミーティングや社内チャットを使ってどこからでも働けるようにするという体制を作ってなんとか乗り切ってきたかなと。

インタビュー後編はこちら

端羽英子(はしば えいこ)
1978年熊本県生まれ。株式会社ビザスク代表取締役社長

東京大学大学経済学部卒業後、結婚。ゴールドマン・サックス証券に入社。投資銀行部門で企業ファイナンス等に従事。入社半年で妊娠し1年で退社。その後女児を出産。USCPA(米国公認会計士)を取得後、日本ロレアルに入社。化粧品ブランドのヘレナルビンスタインの予算立案・管理を経験。夫の留学に同行し家族で渡米。1年間主婦をした後、MIT(マサチューセッツ工科大学)のMBA(経営学修士)コースに入学。2年後MBA取得。帰国後離婚、以来シングルマザーとして働きながら子どもを育てる。帰国後すぐに投資ファンドのユニゾン・キャピタルに入社、企業投資を5年間経験後、2012年株式会社ビザスクを設立。2013年ビザスク正式オープン。知識と経験の流通を変える新しいプラットフォームの構築に日夜奔走している。

初出日:2015.07.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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