WAVE+

2014.05.15  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

夢や目標は行動しながら見つけるもの

──でも自分にはやりたいことがないとかいう人もけっこういますよね。

そうなんですよね。「米良さんはやりたいことがあっていいですね。自分には何もないから...」みたいなことを言う人がけっこういるのですが、私もはじめからやりたいことがあったわけじゃないんですよね。それどころか、最初は身近にいた人に比べて夢も才能も何もない自分に劣等感のようなものを抱いていたというところからスタートして、興味のあることは取りあえずやってみるということを繰り返していくうちに、自分が全力で打ち込めるものを見つけられました。転機となったのは大学4年生のときに立ち上げたチアスパです。頑張る人を応援することは、社会的な意義や責任感を感じられるし、やってて楽しいし、すごく気持ちがいいと感じました。世の中には価値を生み出せるワクワクするような人がたくさんいて、そういう人たちの背中を押すことを自分の生きるミッションにしたいと走り始めてからは、毎日が楽しくなりました。

そしていろいろな人との出会いがあり、READYFOR?を立ち上げたわけですが、READYFOR?を使って一歩踏み出し、夢を実現して喜んでいる人が増えることで、私自身ももっとこの価値を大きくしていきたいというモチベーションが上がり、すごくたいへんなことがたくさんあっても楽しみながら前に進んでいけるわけです。

だから好きなことややりたいこと自体がないという人もたくさんいますが、私含め最初からやりたいことがある人なんてあまりいないと思うんですね。生きている中で何かやらなきゃと思うことは大なり小なり必ずあるはずで、それに気づいたらまず始めてみて、全力で取り組んでいるうちに、好きなこと、やるべきことが見えてくると思うんです。

幸せになりたいと思ったことがない

──仕事観についてお聞きしたいのですが、米良さんにとって働くとはどういうことでしょう。何のために働いているのでしょう。

学生のうちから事業を始めてしまったということもあり、私はお金にさほど執着がないんですよね。いい暮らしをするためにお金を稼ぎたいとか、お金を得るために仕事をしていると思ったことが今まで一度もありません。もちろん生きていくためにお金は必要ですが、それよりも、もっと事業を大きくして、たくさん利益を生み出して、それをよりよいサービスにするために投資して、支持して使ってくれるユーザーを増やす、というふうに社会がもっとよくなるようなお金の流れを生み出したいと思っていて、そのために働いているという感じなんです。

自分のミッションをもって社会のいろいろな課題に取り組んで新しい仕組みをつくったり、世の中にいいインパクトを与えたりするという生き方の方が幸せなのかなと。たぶん、若い世代の人たちは私と同じような価値観をもっている人が多くて、さらに今後増えると思います。


──では人生の最終目標というか、米良さんにとっての幸せな人生とはどういうものですか?

う~ん、それはわからないです。私にとっての幸せ......そもそも私はこれまで幸せになりたいと思ったことがないんですよね。それよりも社会に価値を提供し続けられるような個人でありたいという思いの方が強いですね。またこれから強い個人たちを世の中に輩出したいという思いもあります。

ですから今やっていることは仕事という意識はあまりないんですよね。もちろんプロフェッショナルとして結果を出すという意味では仕事ですが、それよりもライフワークというか人生そのものといった方が近いかもしれません。今後家族ができれば働き方は変わるかもしれませんが、一生やり続けたいライフワークであることに変わりはないですね。

READYFOR?を社会にもっと浸透させたい

──今後の目標を教えてください。

昨年、東山動物園がコアラの餌代を集めるプロジェクト(コアラを守りたい!~東山動植物園コアラ応援プロジェクト~)を立ち上げました。コアラの餌となるユーカリはすごく高価で餌代だけで莫大な費用がかかりとても税金だけではまかないきれません。そこで広く一般に支援を求めたところ、目標金額を大幅に上回る支援金が集まり、コアラというみんなが大好きな動物をみんなで守るということを実現させました。

目標金額を大幅に上回る支援金が集まった東山動物園コアラ応援プロジェクト

このように、READYFOR?が人々の生活に身近なことにもっと利用されるようにしたい。日々の生活の中でやりたいことがあったら、READYFOR?を使うのが当たり前というくらいにユーザー数を増やしていきたい。それが今の一番の目標ですね。

米良はるか(めら はるか)
1987年東京都生まれ。READYFOR?代表/オーマ株式会社取締役

慶應義塾大学経済学部に在学中、「あのひと検索スパイシー!」の開発に携わり、「あのひと応援チアスパ!」を立ち上げる。卒業後は、2012年同大学院メディアデザイン研究科に進学。米スタンフォード大学に留学し、クラウドファンディングサービスの研究に没頭。帰国後、2011年3月、日本初のクラウドファンディングサービスREADYFOR?を立ち上げる。以後、READYFOR?の統括責任者としてチームを牽引、日本最大のクラウドファンディングサービスにまで育て上げる。2012年には世界経済フォーラムグローバルシェイパーズ2011に選出され、日本人史上最年少でダボス会議に参加。「国・行政のあり方に関する懇談会」のメンバーも務めている。

初出日:2014.05.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの