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2014.03.03  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

活動の2本柱

──河野さんが現在手がけている仕事・活動について教えてください。

新鮮な魚が並ぶ尾辰商店

大きくわけて、本業の商売とボランティア的活動の2つがあります。まず、商売としては、株式会社尾辰商店の経営者としての仕事があります。メインとなるのは築地で営業している鮮魚の仲卸店「尾辰商店」で、全国の港から築地に届く新鮮な魚を仕入れ、鮨店や居酒屋などの飲食店に販売しています。現在4号店まであり、お得意様は都内に500店ほどあります。また、千葉そごうと横浜そごうに鮮魚と惣菜を販売している「つきすそ」というお店を出しています。店名は「築地のおすそ分け」を縮めたものです。飲食店も経営しており、千葉にイタリア料理店「Fish labo」、銀座に魚料理店「銀座 尾辰」を出店しています。尾辰商店に入ったのは、約10年前(2004年)、35歳のときで、それまでは大日本印刷という印刷会社のサラリーマンでした。

もうひとつのボランティア的活動は、「Re-Fish(リフィッシュ)」という団体の一員として、魚食文化を国内外に広げるための活動に取り組んでいます。

尾辰商店の仕事とリフィッシュの活動は密接につながっていて、魚を扱う者として、もっと日本人においしい魚を食べてもらいたい、魚食文化を見直してもらいたい、そして世界に魚食文化を広めたいという思いで活動しているんです。

リフィッシュとは何か

リフィッシュの公式Webサイト

──「リフィッシュ」は魚が好きな人たちの間ではだいぶ認知度が上がってきているようですね。「リフィッシュ」とは何なのか、もう少し、詳しく教えてください。

リフィッシュは水産庁の上田勝彦さんが代表を務める有志の団体で、「日本の魚食の復興」、「水産物を中心とした日本の食の再構築」を目指してさまざまな活動を展開しています。メンバーは漁師や僕のような魚の仲卸業者、魚屋、有機野菜の宅配会社、デザイナー、カメラマン、料理人、船主、メディア関係者など多士済済です。

中には「漁港」というバンドや「ウギャル」という若い女の子のモデルのグループなど、個性的な団体もいるんですよ。

上田さんとは共通の知人を介して知り合ったのですが、強烈な人だなというのが第一印象ですね。元漁師で坊主頭にねじりはちまき、豪快なヒゲと見た目も全然役人ぽくない(笑)。話してみると魚食文化をもう一回見直して日本にもっと広めたい、人々にもっと魚を食べてもらいたいという思いは一緒で、即意気投合しました。すごいと思う点は国の人間として考え方がぶれない点とすごい行動力をもっているという点ですね。彼を下支えする人間がいればもっとこの活動を広めることができるんじゃないか、それを民間の立場として僕がやりましょうという感じで参加しました。

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リフィッシュ代表を務める水産庁の上田勝彦さん(撮影:山本洋子さん)

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フルフィッシュフェスティバルにて気勢を上げる上田さん

──リフィッシュの中で河野さんの役割は?

いわば事務局長みたいなもんですかね。同じ志をもつ者が集まって、魚食文化を広く啓蒙していくための各種イベントのプランニングから関係各社・者との交渉、実行・運営、後片付け、お金の計算まで担当しています。

河野竜太朗(こうの りょうたろう)
1969年大阪府生まれ。築地仲卸尾辰商店五代目当主/リフィッシュ事務局長

近畿大学理工学部建築学科卒業後、国内大手の総合印刷会社、大日本印刷株式会社へ入社。営業、開発、企画などを経験後、2004年、35歳のとき築地で鮮魚の仲卸を営む尾辰商店に転職。2006年法人化し株式会社尾辰商店代表取締役社長に就任。経営の多角化に乗り出し、千葉そごう、横浜そごうに鮮魚と惣菜の販売店「つきすそ」を開店。2013年11月には銀座に魚料理店「銀座 尾辰」を開業。経営者として辣腕をふるう一方で、水産庁の上田氏が代表を務める有志の団体「リフィッシュ」の事務局長や日本全国の仲買人をネットワークしている「鮮魚の達人」の東京担当を務めるほか、リフィッシュ食堂の運営(現在は一時休業中)など、「魚食で世界制覇」という野望を胸に魚食文化の発展と啓蒙活動に取り組んでいる。「キズナのチカラ」「夢の食卓」「ソロモン流」などテレビ出演多数。

初出日:2014.03.03 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの