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2014.03.03  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

リフィッシュ食堂

6月10日グランドオープンの時の一コマ

──「リフィッシュ食堂」とはどういうものなのですか?

産地の海や魚に関する情報発信、さまざまな魚の食べ方の提案、手頃な価格の魚食堂、産地PR活動の支援、などを目的として、去年(2013年)の6月から営業を開始した食堂です。ただ新鮮でおいしい魚料理を提供するだけでなく、ワンフィッシュナイトという「鯖ナイト」や「魚しゃぶしゃぶの会」というイベントを開催したり、自宅で食べてもらうための料理のレシピも教えてきました。(※現在は体制のリニューアルのため一時休業中)

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築地Re-Fish食堂と全さば連のコラボイベント「築地場外・鯖ナイト」でサバトークを行った河野さん

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「築地場外・鯖ナイト」でサバ料理を提供(撮影:松本宏一さん)

──どのような経緯で立ち上げたのですか?

ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、築地は、市場がある場内は東京都の管轄、たくさんの飲食店や海産物の販売店などが並んでいる場外は中央区の管轄なんです。場内は豊洲に移転することが決まっていますが、場外は町内会なので築地に残ります。でも巨大な魚市場があるからこそ場外が成り立ってるわけで、場内が移転してなくなってしまえば築地のブランドもなくなってしまうんじゃないか。そんな危機感を、築地場外のこれからを考えているNPO団体がもっていたんですね。

そんな彼らが、あるとき水産庁の上田さんとリフィッシュのことを知り、場外に厨房付きの空いている店舗スペースがあるから、リフィッシュの活動の一貫としてここを使いませんかと提案されたんです。こちらとしても、漁業関係者にとって築地は聖地なので、その聖地にリフィッシュの活動の拠点をもっていた方がいいということでリフィッシュ食堂をオープンしました。

ほとんど儲けは出ていませんが、魚食を広めるためのアンテナショップという位置づけなので儲けに走ることなく、みなさんにもっといろんな魚を知ってもらうためにメニュー作りを含めていろいろな活動をしていかなければなりません。ただ、営業を続けていくためにはサービス開発を見直してやっていかなければならないということで次のプランをいろいろと考えているところです。

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2013年、『ビッグコミック』に連載中の「築地魚河岸三代目」にRe-Fish食堂が登場した

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Re-Fish食堂では魚料理を提供するだけでなく、魚に関するさまざまな情報も発信している

魚食を世界へ

──リフィッシュの活動に取り組んでいるのは魚食文化を広げるためということですが、なぜそうしたいのですか?

「魚食文化」について調べてみたところ、魚をよく食べる国の人は長寿で頭がいいということがわかりました。そんな国民が多い国は国力も強くなりますよね。いいことばかりだから魚をもっと食べようという至極シンプルな理由です(笑)。

ただ、魚は肉に比べて値段が高いので、つい肉を選びがちになるというのもわかります。また、魚はさばいたりおろしたり調理をするのも手間暇がかかるし、ゴミも増えます。ですので、特に東京の場合は魚を食べようと思ったら外食が多くなってくる。なので多くの店でおいしい魚が食べられるように、僕が経営している尾辰商店ではいろんな業種の飲食店に対して魚メニューを提案をしています。例えば焼き鳥屋さんにもこの魚はこう焼いたらおいしいですよ、というふうに。


──魚食を広めることで最終的にどういったことを目指しているのですか?

これはリフィッシュだけじゃなくて本業の魚屋としてもそうなんですが、僕が目指しているのは魚食というソフトウェアを世界に売り込むということなんです。

河野竜太朗(こうの りょうたろう)
1969年大阪府生まれ。築地仲卸尾辰商店五代目当主/リフィッシュ事務局長

近畿大学理工学部建築学科卒業後、国内大手の総合印刷会社、大日本印刷株式会社へ入社。営業、開発、企画などを経験後、2004年、35歳のとき築地で鮮魚の仲卸を営む尾辰商店に転職。2006年法人化し株式会社尾辰商店代表取締役社長に就任。経営の多角化に乗り出し、千葉そごう、横浜そごうに鮮魚と惣菜の販売店「つきすそ」を開店。2013年11月には銀座に魚料理店「銀座 尾辰」を開業。経営者として辣腕をふるう一方で、水産庁の上田氏が代表を務める有志の団体「リフィッシュ」の事務局長や日本全国の仲買人をネットワークしている「鮮魚の達人」の東京担当を務めるほか、リフィッシュ食堂の運営(現在は一時休業中)など、「魚食で世界制覇」という野望を胸に魚食文化の発展と啓蒙活動に取り組んでいる。「キズナのチカラ」「夢の食卓」「ソロモン流」などテレビ出演多数。

初出日:2014.03.03 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの