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2013.04.15  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

──そういう人がいるとスムーズにことが運びそうですね。

こういう仕事は働き方研究から、教育・ワークショップ、以前の建築計画の経験を総動員できるのでうれしいですよね。

2月18日には全員が陸前高田に集まってキックオフをやり、その場でばんばん建物の模型もつくりながら、3日間で基本的な設計をやってしまおうという試みを実行しました。

その後は建築家とランドスケープデザイナーがメインの設計者になるので、その他の関わってた人たちは自分のもっているノウハウや視点を提供して、後は頼まれたら相談役になるという感じ。今年の11月くらいには竣工する予定です。

陸前高田での会議の模様

──すごいスピード感ですね。ここでも、頭の中だけで考えず、とにかく始めてみる、遅延させないということが生きているわけですね。

そういうスピード感でやりたいのでワークショップ型にしたんですよ。通常の建築プロジェクトとは違って図面や模型などは一切作らず、プレゼンテーションもなし。話し合いで基本的なコンセプトだけを共有し、あとは今、目の前で材料を切って造って見せるという感じのワークショップでやろうと。

その分、設計期間もコミュニケーションにかかる無駄な時間も圧縮されるので、早くできるというわけです。

この陸前高田のプロジェクトは10年間で解散することが決まっています。地方でのプロジェクトに限らず、基本的にはプロジェクトごとにいろんな人が集まり、終了すると解散するという離合集散型のグループワークが基本です。


──西村さんはさまざまな仕事内容に加えて、個人としての活動、経営者としての活動、そして社員としての活動と働き方としても多岐に渡っていておもしろいですね。全体の仕事の割合ってどんな感じになっているんですか?

現在は、陸前高田の仕事が4割、書く仕事2.5割、教える仕事2.5割、クライアントから受注するデザインやモノづくりが1割、自分でやるモノづくりがほとんどゼロという感じです。これが悩みのタネなんですが(苦笑)。


──独立されてからはベースとなる拠点というか仕事場はご自宅になっているわけですよね? 職住近接というか一致。このへんのストレスは感じてないですか?

地方に出かけていたり、どこかで会議やワークショップのファシリテートをやっていたり、あるプロジェクトでみんなでディスカッションしていたり、インタビューで人の話を聞いたりと、外に出ている時間が多いのであまり自宅にいません(笑)。

またそもそも会社員時代から家で働きたいなあとぼんやり思っていたし、家で働くということが苦にならないタイプなのでストレスはないですね。

しいて挙げるとすれば、モノづくりの過程で生じる物で作業場があふれかえっているので、これを何とか整理しないといけない。悩みといえばこのくらいですね。

西村佳哲(にしむら よしあき)
1964年東京都生まれ。リビングワールド代表/プランニング・ディレクター/働き方研究家。

武蔵野美術大学卒業後大手建設会社の設計部を経て30歳のときに独立。以降、ウェブサイトやミュージアム展示物づくり、各種デザインプロジェクトの企画・制作ディレクション、働き方・生き方に関する書籍の執筆、多摩美術大学、京都工芸繊維大学非常勤講師、ワークショップのファシリテーターなど、幅広く活動。近年は地方の行政や団体とのコラボレーションも増えている。『自分の仕事をつくる』(2003 晶文社/ちくま文庫)、『自分の仕事を考える3日間』『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』(2009,10 弘文堂)、『いま、地方で生きるということ』(2011 ミシマ社)、『なんのための仕事?』(2012 河出書房新社)など著書多数。

初出日:2013.04.15 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの