現場スタッフの声

天井走行リフト リハビリテーション病院 すこやかな杜

門型のリフトを借りて使っていたら、
やっぱり天井に付けたいという気持ちが高まっていきましたね。
もう少し長い距離を患者さんと歩きたいなと。

木造天井に設置された、10m超の天井走行型リフト

全国的にも木造建築の医療施設は非常に特徴的ですね

 理事長の内田泰史が、以前海外で過ごした際に森の中の診療所を見た経験や、内田自身も山登りが好きだったということもあり、森の中で医療を行い、温かみのある環境で、より効果的にリハビリを提供したいという思いが、設立の契機となっています。
 戸や柱、天井も木製で、全室個室ですし、患者さんは家にいるような感覚があると思います。入院中って、個室の圧迫感というか不安に感じるところもあると思うんですが、温もりあるお部屋で過ごされることで、落ち着いていられるという効果はあると思います。よく、もう少し泊まっていきたいというお声もいただきます(笑)。

リハビリテーション科 科長 杉本徹さん (2021年取材当時)

リハビリテーション科 科長 杉本徹さん (2021年取材当時)

平成30年に労災申請のあった休業4日以上の業務上疾病は、全産業で約12万7000件。そのうち腰痛等の「動作の反動・無理な動作」は約1万7000件で発生件数が一番多い業種は、保健衛生業(介護士・看護師など)です。

平成30年に労災申請のあった休業4日以上の業務上疾病は、全産業で約12万7000件。そのうち腰痛等の「動作の反動・無理な動作」は約1万7000件で発生件数が一番多い業種は、保健衛生業(介護士・看護師など)です。

リフト導入のきっかけは

 うちの事業所が、今後リハビリ含めどのように事業展開していったらいいのかなと思案していく中で、ノーリフティングケアに出会いました。また、平成25年に厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」の中に福祉医療の事業所で介護・看護の作業については腰痛を起こしやすい業務、作業だと明記されたんですね。「人力で抱え上げを行わせない」と指針の中に記載されたんです。
 そこで、これはリハビリだけではなく介護・看護作業に当たるスタッフ、もしくは腰痛を起こしやすい職務についている人達には、事業所がそれを遵守しなければいけないと。では腰痛予防をすすめていく事業所としてどうすればいいか考えるようになったのが、リフト導入の一番最初のきっかけになりました。

高知県発信でリフト普及が広まっているのはなぜですか

 下元佳子さん(一般社団法人ナチュラルハートフルケアネットワーク 代表理事)達の活動の効果というのはすごくあると思います。
また、高知県の高齢化率はトップクラスですし、全国よりも10年先を進んでいると言われます。10年先の日本の様子を、高知県がどう解決していくのかというのは他の都道府県の方々が注目されていますし、私達もそれは意識をしています。今後、医療や介護の業界が抱える深刻な人材不足等も10年先に経験しているんです。
 何とかしないといけない状況で、何とかできる知識や技術を持ってらっしゃるリーダーがいて、私達に「一緒にやろうよ!」と声をかけてもらってるわけですから、早くから取り組むべきだろうということに至ったわけです。

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リフト導入にあたり、経営層の理解を得るには

 内田理事長も、最初はやっぱり機械を使った介護や看護作業は、丁寧じゃないんじゃないかと思っていたようです。職員側の意見ばかりではなく、利用される方にとって利益になっているかどうかという所は、すごく壁になったかなと感じています。
 また、「入れてください。」と言って「はい、分かりました。」と承認されるお値段ではないじゃないですか。しかし、必要なものだというのは事業所も分かってはくれると思うんです。ですから、これを買い与えたらスタッフ達はうまく活用してくれるだろう、患者さん・利用者さんにきちっと還元してくれるに違いないと事業所が認めてくれるような働きもしなければいけないと思って、それは意識しましたね。

スタッフに対しては、リフト導入前・導入後にどのようなことをされましたか

 ノーリフトケアは本来、ケアを受けている側よりもケアを提供する側の腰痛予防を謳っているんです。まさに、提供する側が健康な体でないと適切なケアの提供というのはできません。ですから、今までの根性論ではなく、「腰痛予防のために、こうした方があなたのお腰も楽でしょう?」ということを最初に植え付けなければいけなかったですね。なぜそうしないといけないのかを理解してもらう必要がありました。
 体の使い方とか機器・用具の操作方法から始めてしまうと、どうしても「リハビリの」という意識になってしまうんですね。それを、リハビリのことだけじゃなくて、職員の腰痛予防を進めていく事業所としての姿勢なんだというところを強く訴えていかなければならなかったです。「意識を変える」そこからスタートです。
 また、機器・用具自体の特長や、ノーリフトの概念、目的をよく理解した上で、どんな方がこの機器を使う対象なのか判断ができるスタッフを育成することも必要だと思います。きちんと学んで人に教えられる人がいないと、使ってみたいなと思うスタッフが使えませんから。
 そんな訳で、現場を変える人間またはリーダーになっているような人間に目的を持たせて、ノーリフトリーダーやコーディネーターの研修などへ参加させ、「持ち帰ってきたものを研修として事業所の中で浸透させなさい。」と指示しました。
 事業所がリフトを使うに当たって、どういうことがしたいのかというビジョンがあることが土台です。しかし、そのビジョンを持って意識高く務めてくれる人達をスキルアップさせる体制がないと、他のスタッフへ浸透させるのは中々厳しいんじゃないかなと思います。

今回、天井走行型のリフトを導入された経緯は

 天井走行型の導入前に、オカムラさんから門型の据置リフトのサンプルをお借りして使わせていただいていましたよね。うちは回復期なので、急性期の病院から離床し始めた重症の患者さんが来るケースがたくさんあります。その急性期から回復期の間の亜急性期というところで、門型リフトを使って、体を起こしたり、立ち上がって意識覚醒を患者さんに促したりして、リハビリの効果もそれで促進していった経緯があるんです。
 さらに、門型リフトの端から端3m弱くらいの距離を使って歩行訓練として活かすことができていました。介護・看護の作業と並行して離床を促して、少しずつ覚醒を高めて、立ち上がり、歩行ということが門型リフトで経験ができたんです。そうなると欲が出てくるわけですよね(笑)。長く歩いたという自信や意欲に繋げるためには少なくとも10m、経験をしてもらいたいと。長い距離のリフト=天井走行リフトが希望でしたね。
 もう一つの理由としては、女性スタッフが多いことです。理学療法士は、患者さんの歩行訓練を行う際は常に転倒のリスクを抱えながら実施しているんですよ。足の振り出しをセラピストが援助してあげながら、体は転倒しないように抱えて歩行訓練をするんです。それを割と小柄な女性スタッフなんかがやっているのを見ると、この現状と事業所としての姿勢の乖離は変えていかないといけないと思いました。
門型のリフトを使って天井走行式リフトでできることのイメージがついた、もう一つは現場でリスクと隣り合わせで訓練を実施しているスタッフがいる、そして天井走行リフトを入れてリスク回避ができたら腰痛予防にもなるし、導入するならもうこのタイミングでしたね。
 それで、木造建物の天井にリフトが設置できるかどうか相談していった感じです。

高天井に梁を渡し、リフトを設置

高天井に梁を渡し、リフトを設置

サンプルで使用していた、門型の据置リフト

サンプルで使用していた、門型の据置リフト

木造建築ならではの、温かみのあるリハビリ空間

木造建築ならではの、温かみのあるリハビリ空間

腰痛予防啓蒙ポスターと、杉本さん

腰痛予防啓蒙ポスターと、杉本さん

患者さんや利用者さん、ご家族の感想はいかがですか

 患者さん自身が、人の手の方が良いだとか、リフトが嫌ということはあまりないですね。ご本人も、自分が家族やまわりの方の負担になってるとは思いたくないんですよ。リフトがあるから大丈夫と思えるのは本人にとってもすごく大事なので、それはリフトを導入する時の大きなポイントになってくると思います。
 障害がかなり残ってしまって、起き上がりでさえも人の手が必要な方を在宅で看るというのは、自宅で受け入れる家族がそれでも大丈夫と言ってくれるかがすごく重要です。そして、大丈夫と言えるそのバックグラウンドには「帰ってきてもこれがあるから大丈夫」とか、「こういうサービスがあるから大丈夫」という安心の保証が必要なんですね。安心の中に、やっぱりリフトなんかはかなり上位に挙がってくるんじゃないかなと思います。実際、「自宅にリフトを入れてみると介助が楽ですよ。」と入院中からご提案させていただくケースはありますね。そうすると、「これだったら家に帰ってきてもらえるかも知れないね。」というケースは多いです。
 その場合、少なくともうちの施設で、スムーズに使っているところを見せないといけないんです。スリングを装着してリフトにカチャっとかけて、アップのボタンを押すという操作を、うちのスタッフが当たり前にご家族へ見せていかなければなりません。これはとても大切です。
 通常、治療が終わると退院ですよね。そうすると、病院の目標は「退院」になります。しかし、そうではなく、退院して家に帰った初日を安心して迎えることができる準備を、入院中に努められるかというところまでが私達の責任なんです。治療が終わったから帰っていいですよと帰られて、ご家族が困るような状態を放置することは、しないように気をつけています。

今後の展望は

 地域貢献ができる事業所というのが根幹にありますので、受け入れさせていただいた患者さんについては「在宅生活へ戻ったその初日を安心・安全で迎えられること」、これをモットーにしています。
 「回復期」という名称がありますが、「機能回復」と捉えられやすいんですよ。ですが私自身は、その人の生活を回復させていくための回復だと思うんです。そうすると、「生活準備期」という名称の方が私の中ではしっくりくるんです。生活を再開するための準備のための入院期間なんだと。
 これにより、「回復期」という名称に捕らわれずに、私達は退院後の生活に向けて地域支援者の一人として、今後も責務を担っていきたいなと思っています。

施設紹介

リハビリテーション病院すこやかな杜(もり)は、内田理事長の長年に亘る臨床経験から、「木造建築の医療施設で治療を受ける方が遥かに治癒効果は高まる」との想いを実現するため、平成19年12月に開設しました。
自宅での内容を想定した状況下において、歩行などの基本動作や食事をはじめとする日常生活動作の習得、コミュニケーションや摂食・嚥下訓練にいたるまで、幅広い支援を実施。
季節の花が咲き穏やかな風が吹き入る敷地には、「診療棟」・「リハビリ棟」・「言語棟」らが建ち並び、木の香漂う屋内では、医療の現場でありながら木造特有の暖かみが溢れる明るさに心を癒されます。

施設データ
所在地
高知県高知市春野町芳原1316-1
ベッド
60床
ホームページ
リハビリテーション病院 すこやかな杜