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2017.02.01  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也 イラスト/フクダカヨ

涙のプレゼン大会

佐藤 近影12

佐藤 学生さんからいいアイディアは出ましたか?

角田 たくさん出ましたよ。中でも秀逸だったのが、小学校5年生の図工の時間で自分たちの町で取れた木を使った椅子づくりをするための教材キットを作るというもの。それもただ組み立てるだけじゃなくて、デザインや形状に手を加えられる要素を残しているのでより愛着がわくんですよね。そうやって作った椅子を学校に1年間置いて、下の学年の子たちにも使ってもらって、卒業の時には持って帰る。生まれてきた子どもたちに届けるだけでなく次のタイミングとして自分で家具を作ることでより木に愛着を持ってもらおうというアイディアだったんですね。

産学官でこういうプロジェクトを行う場合、学校や企業が町や住民に一方的に押し付けてしまうというケースが多いんです。それは絶対やりたくなかったので、プロジェクトの要所要所で必ず町の人たちを巻き込もうと思い、学生さんたちのアイディアが固まった段階で小国町へ行って、町の人たちの前でプレゼンしてみんなの意見を聞こうという場を設けたんですね。

浅野 学生と町の人を積極的に繋げるのはいいことだよね。

角田 近影13

角田 プロジェクトがスタートして最初に学生さんにブナの森を感じてもらおうと小国町のブナの森に連れて行ったんですが、その後も、学生さんたちは車で1時間半ほどかかる小国町に自ら土日を使って積極的に通って、地元の自然や文化に触れたり職人さんや住民のみなさんと交流しながら調査をしてくれました。プレゼン当日は学生さんたちがそれらの体験や調査を通じての町への思いを提案成果に生かし素晴らしいプレゼンをしてくれて。会場にも子どもからお年寄りまでたくさんの町の方々が集って熱心に聞いてくれました。そのプレゼンが終わった時、これまでの過程が脳裏によみがえってきて、学生の頑張りとその思いが地域の人々に伝わったことがすごくうれしくて、感激して泣けてきちゃいました(笑)。私だけじゃなくて学生さんも集まった町の人たちも涙を流していたんですよ。

佐藤 みんな頑張ったんだね。達成感と喜びで思わず泣いちゃったと。

角田 私、涙もろいんですぐ泣いちゃうんです(笑)。あとこの取り組み自体、まだ正式な町の事業にはなっていなくて、役場や町の有志が集まってやってる状態なので、彼らも仕事を休んで参加してるんですよ。だから町の人が仕事だからやるという感じだと感動も薄いのかもしれませんが、地元を何とかしたいという熱い思いだけで取り組んで、それが1つ形になったので私含めみんなが盛り上がったんだと思います。また、昨年(2016年)10月には図工用の教材キットを小国町の森から伐った木で町の木工屋さんに10数個作ってもらって、小国町の小学4、5年生の子たちに実際に椅子を組み立ててもらうというワークショップ実施しました。

東北芸術工科大学の教え子たちと

東北芸術工科大学の教え子たちと

浅野 参加した子どもたちの反応は?

角田 みんなすごく喜んでましたよ。組み立ての手順もわかりやすかったようなので、いい感じだったかなと。このワークショップを通して子どもたちの作業レベルやどこに興味を持つかなどがわかってきたので、より楽しめて愛着が持てるような木工キットを完成させようと思ってます。予定としては来期もワークショップを開催し改良版で子どもたちにつくってもらうつもりです。

浅野 角田さんの活動は、単なる木育というよりも地域活性化とか地域おこしという意味合いが強いですよね。

角田 そうですね。こういう活動をしてると、地域が盛り上がって幸せになるというのが最大のポイントだと思うんですね。森から伐り出した丸太も可能な限りその地域で製材して、地域で製品を作って、地域で収めるという地産地消を実践して地域を活性化させる。そのためにオカムラとして可能な限りお手伝いしたいと思い、活動しています。


インタビュー後編はこちら

佐藤政満(さとう まさみつ)

佐藤政満(さとう まさみつ)
1956年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 企画部長

大学でプロダクトデザインを専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品やホームインテリア製品のデザイン、パブリック製品やオフィス製品の企画開発などを経て、現在はマーケティング本部にてプロジェクト単位の製品開発支援、また個別営業物件の製作調整、支援などに従事している。


角田知一(かくた ともかず)

角田知一(かくた ともかず)
1964年神奈川県出身。株式会社岡村製作所 きづくりラボ チーフデザイナー

大学でインダストリアルデザインを専攻後、岡村製作所に入社。ホームインテリア家具やオフィス家具のプロダクトデザインを担当。現在は木に関する研究や木製家具の開発と地域創生に繋がる産学官研究などに従事している。


浅野裕一(あさの ゆういち)

浅野裕一(あさの ゆういち)
1968年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 パブリック製品部

大学で機械工学を専攻後、岡村製作所に入社。製品設計や特注製品のデザイン業務を経て、現在は教育施設向け家具の企画開発を担当している。


森田舞(もりた まい)

森田舞(もりた まい)
1978年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 オフィス研究所 主任研究員

大学、大学院で建築学を専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品の企画開発を経て、現在は教育施設を中心として、よりよい空間・環境のあり方に関する調査・研究に従事。専門は建築計画。博士(工学)、一級建築士。

初出日:2017.02.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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