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2017.02.01  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也 イラスト/フクダカヨ

C.W.ニコルさんの森の再生活動への支援も

対談 近影10

佐藤 オカムラが取り組んでいるACORN活動の1つに、C.W.ニコルさんが長年取り組んでいる森の再生活動(「アファンの森」)への支援があります。ニコルさんは森の再生活動において、森から間伐材を運び出す際、馬を使う「馬搬」の採用を推奨しています。その理由は2つあって、1つは運搬用の道を整備しなくてもいいから森を傷めずにすむということ。もう1つは馬搬という、廃れてしまっている日本古来の文化を残して後世に伝えたいという使命感です。

アファンの森にあるホースロッジは早稲田大学建築学科の古谷先生の設計なのですが、古谷先生の研究室の学生さんと一緒にアファンの森で家具製作のワークショップを開催して、できあがった家具をホースロッジに設置しました。


──そのワークショップとは具体的にはどういうものだったのですか?

佐藤 まずはアファンの森から馬搬で伐り出した丸太を板材に加工して、自然乾燥させる製材から行いました。その後、家具の板にするために正寸でカットして、塗装をして、最後は施工までして完成させたんです。ポイントは学生さんたちが自分たちで実際に木を触って家具を作り上げたという点。オカムラの社内的にも初めての試みでした。学生さんたちは森での木の生え方とか伐り出し方、加工の仕方など、普段なかなか目にしたり経験したりすることはないじゃないですか。今回は森から木を伐り出すところから参加してもらい、それらを現場で伝えることができたので、非常に有意義な木育の機会になったと思っています。

アファンの森でのワークショップの様子。三段目右が完成した家具

浅野 先ほどエコプロで展示した木育家具の件でお話した「アファンの森のホースロッジのワークショップ体験を活かして」というのはこの時のワークショップのことです。


地域創生としての木育

──角田さんは山形で産学官連携の木育の取り組みに関わっていますが、これについて詳しく教えてください。

角田 東北芸術工科大学のプロダクトデザイン学科では創立時より家具デザインに力を入れており、私は2014年から2年生を対象とした家具演習の中で、企業内デザイナーという視点で実践的なデザインプロセスや家具デザインを教えています。いま注力をしているのは一昨年(2015年)から取り組んでいる産学官プロジェクト。山形県の山間にある小国町には豊かなブナの森があって、昔はブナの木を使った製品作りが盛んだったのですが、現在は第二次産業が発達した町になってしまったためほとんどの住民がそういう文化があったことを知らないんですね。このままではそのような自然も文化も消えてなくなってしまうと憂慮した町の有志の皆さんの意向を受けて、「木」をキーワードとし文化の継承や町の活性化を図るため、我々オカムラと東北芸術工科大学と町が協力して何かやろうというプロジェクトを始めたんです。

角田さんによる東北芸術工科大学での初回講義の様子

角田さんによる東北芸術工科大学での初回講義の様子

1年目は「小国町のブナ材を使った地域創生の手掛かりを見るけるためのファーストファニチャーと仕組みづくりのデザイン」というテーマのもと、学生には小国の森や町でフィールドワークを行った上で、産まれてくる地域の子どもたちに届ける家具のデザインと仕組みづくりを考えてもらいました。彼らは木工家具づくりも学んでいるので小国町から採れたブナを使い実際に自分たちで見本となる家具も製作しました。

小国町では1年間に子どもが30人くらいしか生まれません。現在は衰退してしまった木工場でも年間30台は製作できるので全員に行き渡ります。幼いころからの愛着、同学年の子たちがみんな同じ椅子や机を持っているという共通の思い出が、年数を重ねるごとにすべての子どもたち、そして大人たちに段階的に広まっていきます。町の木を使い町で作った家具に触れ合うことが定着すれば、成人式や結婚式などのお祝いとしての広がり、ひいては、木産業が盛り上がり、最終的には町自体の活性化にもつながるのではないかと考えたのです。

佐藤政満(さとう まさみつ)

佐藤政満(さとう まさみつ)
1956年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 企画部長

大学でプロダクトデザインを専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品やホームインテリア製品のデザイン、パブリック製品やオフィス製品の企画開発などを経て、現在はマーケティング本部にてプロジェクト単位の製品開発支援、また個別営業物件の製作調整、支援などに従事している。


角田知一(かくた ともかず)

角田知一(かくた ともかず)
1964年神奈川県出身。株式会社岡村製作所 きづくりラボ チーフデザイナー

大学でインダストリアルデザインを専攻後、岡村製作所に入社。ホームインテリア家具やオフィス家具のプロダクトデザインを担当。現在は木に関する研究や木製家具の開発と地域創生に繋がる産学官研究などに従事している。


浅野裕一(あさの ゆういち)

浅野裕一(あさの ゆういち)
1968年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 パブリック製品部

大学で機械工学を専攻後、岡村製作所に入社。製品設計や特注製品のデザイン業務を経て、現在は教育施設向け家具の企画開発を担当している。


森田舞(もりた まい)

森田舞(もりた まい)
1978年東京都出身。株式会社岡村製作所 マーケティング本部 オフィス研究所 主任研究員

大学、大学院で建築学を専攻後、岡村製作所に入社。オフィス製品の企画開発を経て、現在は教育施設を中心として、よりよい空間・環境のあり方に関する調査・研究に従事。専門は建築計画。博士(工学)、一級建築士。

初出日:2017.02.01 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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