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2015.08.03  取材・文/山下久猛 撮影/大平晋也

4つのフェーズ

──留職は具体的にはどうのように運営しているのですか?

大きく4つのフェーズがあります。まず1つ目のフェーズは「企画設計」。留職プログラムの導入を考えている企業の担当者と一緒に、留職を導入する意義、展開方法などを検討します。導入が決定したら、面接などのプロセスを経て留職者を選定します。そして、その留職者のもっている経験やスキルに応じて、実際に留職する現地の組織とそこでの業務内容を調整していきます。企業の担当者と一緒に協議し、派遣元企業と、留職する先の団体の双方のニーズに沿った設計をします。この両者のマッチングが留職最大のポイントなので、うちのプロジェクトマネージャーが現地に実際に行って、派遣先の団体の人と話して双方にとってメリットがあるかを見極めます。

クロスフィールズのスタッフが現地NGOを訪問し徹底的に調査する
クロスフィールズのスタッフが現地NGOを訪問し徹底的に調査する
クロスフィールズのスタッフが現地NGOを訪問し徹底的に調査する

クロスフィールズのスタッフが現地NGOを訪問し徹底的に調査する

2番目は「事前研修」。出発前に1~3ヶ月程度の間で計3回、日本国内で実施します。研修では留職先の地域や組織についての情報を知るとともに、留職先の組織が抱える課題と業務内容に対して理解を深めていきます。また、現地業務に向けて留職者が自身の成長目標の設定も行います。

そして3番目はいよいよ「現地業務」。約1~12ヶ月間、留職先団体の職員として、社会課題の解決に向けた実践業務に従事します。留職者が本業で培ってきたスキルを最大限に活用し、配属された機関の現地スタッフの方々とともに一丸となって目標に向かって業務を推進していきます。これまでたくさんの方々が数々の目覚ましい成果を挙げています

任期を終えたら帰国となりますが、まだ終わりではありません。最後のフェーズ「事後研修」では、1~2ヵ月間で、事前研修で設定した業務面・個人成長面での目標に対する達成度合いを振り返った上で、得たものをどのように今後の業務にどう活かすかを議論していきます。さらに、プログラムの成果については、最終報告会を実施し、留職者の上長や社内の関係者に対して活動の成果を発表して頂き、一連の留職プログラムは終了です。

単に留職者を現地に送るだけではなく、現地に行く前から帰ってきた後まで、キメの細かいサポートをすることによって、現地活動の成果を会社での本業に活かせる形でフィードバックする仕組みがあることが、留職の最大の特徴だと言えるのです。

あらゆるプロセスで熱を起こす

──留職を運営する上で大事にしていることは?

小沼大地-近影4

一番大事なのは、この4つのフェーズを含め、あらゆるプロセスの中に熱を起こすということです。企画設計のさらに前段階、留職に興味をおもちの企業に留職についてお話するときも、とにかく熱のある企業の方々とお付き合いすることを心がけています。単に巷にあふれるグローバル人材育成プログラムの中で、「とりあえずどれでもいいや、あ、何となくこれなんかいいかも」という程度の気持ちで問い合わせをしてくる企業は、こちらからお断りしています。それではたとえ留職を導入したとしても期待する成果は得られないと思うからです。

ですので、本気で会社を変えたいと思っていて、そのために留職プログラムをぜひ導入したいと熱く語る企業の担当者とお付き合いさせていただくようにしているのです。


──企業側の留職導入の目的、あるいはメリットにはどのようなものがありますか?

導入いただいた企業の方からよく聞くのは大きく3つあります。1つはこれまで話してきたような「リーダー育成」です。多くの会社はグローバルな環境で活躍できるリーダーの育成に対する投資という意味で導入しています。未知の国で自らゴールを設定して最後までやりきるという、通常業務ではできない修羅場経験を通して大きく成長し、帰国後にも活躍している社員が多いようです。

2つ目は「現地の理解」。留職は、自社の現地法人で働くのとは全然違って現地の人と一緒になって課題解決に取り組むので、現地のことを肌感覚で理解することができてよかったという声をたくさんいただきます。

3つ目は「組織活性化」です。留職から帰ってきた人は非常にイキイキして帰国するので、社内での働き方がこれまでとはガラッと変わり、それが周囲にいい影響を与えることが多いようです。

インドの衛生環境改善を支援するNGOに留職したパナソニックの社員

インドの衛生環境改善を支援するNGOに留職したパナソニックの社員

──留職を通じて事業拡大につながったというケースは?

最近、留職プログラムに紐付いて新規事業が立ち上がったという企業の例も出てきていて、我々としてもうれしい限りです。それにともない、人材育成に加え、留職を機に途上国市場を攻めたいというビジネス寄りのニーズをもった企業が増えてきました。それに応じて我々も個人の成長、リーダーシップ育成という観点からさらにもう一歩進んで、留職が新規事業につながっていく仕掛けをもう少し入れていきたいなと考えているところです。

また、最近は認知度が少し上がってきたのか、採用面接で「御社が導入している留職にぜひ参加してみたい」という学生もいると人事の方から聞きました。優秀な学生を獲得できるというメリットがあるとも言えそうです。

小沼大地(こぬま だいち)
1982年神奈川県生まれ。NPO法人クロスフィールズ代表理事

一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。大学卒業後、青年海外協力隊として中東シリアに2年間赴任し、現地NPOとともにマイクロファイナンスや環境教育のプロジェクトに携わる。帰国後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。人材育成領域を専門とし、国内外の小売・製薬業界を中心とした全社改革プロジェクトなどに携わる。同時並行で若手社会人の勉強会「コンパスポイント」を立ち上げ、講演会の企画やNPOの支援活動などを行う。2011年3月退社、松島由佳と共同でNPO法人クロスフィールズを創業。2011年、世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Shapers Community(GSC)に選出。2015年からは国際協力NGOセンター(JANIC)の理事も務める。1児の父親として家事・育児にも積極的に参加するイクメンでもある。

初出日:2015.08.03 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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