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2014.11.17  取材・文/山下久猛 撮影/守谷美峰

和える誕生

──企業に就職するという道を選ばなかったのはなぜですか?

最初、大学を卒業したら日本の伝統を次世代につなげるため、職人さんたちの技術や魅力を伝えたいと、赤ちゃん・子どもたちのための日用品を職人と共に作っている会社に就職しようと思っていました。そこで、いろいろ調べたのですがそういう会社は見当たりませんでした。ならば自分でやるしかないと、大学3年生のとき東京都・東京都中小企業振興公社主催の学生起業家選手権に「日本の伝統をなでしこキッズに伝える!」という事業プランでエントリーして最上位の優秀賞をいただきました。そのときの賞金150万円で、2011年3月、大学4年生のときに株式会社「和える」を起業しました。

結果として、私は今の仕事は一番自分がやりたかった「伝える」仕事に就けたと感じています。モノを通して語り、日本の伝統を次世代の子どもたちに伝えているのです。


──起業するとき、不安や迷いはありませんでしたか?

22歳、元々何も持っていないので、失うものは何もないですし、当面は自分が生きていける分を稼げればなんとかなると思ったので、あまり怖さは感じませんでした。

社会に育てられた

──22歳の若さで一人で起業して、まだ3年半しか経っていないのにしっかりした経営理念をお持ちで、経営も順調とのことですが、誰か特定の人に師事したりという経験は?

私の中に「理想の大人くん」がいるのです。イメージとしては、人型クッキーの背面のようなイメージです。「理想の大人くん」は私が出会ってお話させていただいた人たちの、良いところ、魅力的なところ、見習いたいと思ったところを、少しずつ取り込んでいきます。

経営理念やものづくりをする上でのポリシーなど、私の考え方の軸となっていることは、誰か特定の人に教わったわけではなくて、今まで私に関わってくださった方々、社会のみなさんに教えていただいたのだと思っています。昔は社会で子どもを育てていたといわれていますが、まさにそのような感覚で育てて頂いているような気がします。社会の多くの大人の方々がさまざまな挑戦の機会や、ものの見方・考え方、知恵をくださいました。いろんな人の良いところを吸収して、翌日には自分の糧にしていくということを繰り返してきたように感じます。こういうことが私にとっても、和えるにとっても一番貴重な体験だと思います。

矢島里佳(やじま りか)
1988年東京都生まれ。株式会社和える(aeru)代表取締役。

職人の技術と伝統の魅力に惹かれ、19歳の頃から日本の伝統文化・産業の情報発信の仕事を始める。「21世紀の子どもたちに、日本の伝統をつなげたい」という想いから、大学4年時である2011年3月株式会社和えるを設立、慶應義塾大学法学部政治学部卒業。幼少期から職人の手仕事に触れられる環境を創出すべく、子どもたちのための日用品を、日本全国の職人と共につくる“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げる。また、全国の職人とのつながりを活かしたオリジナル商品・イベントの企画、講演会やセミナー講師、雑誌・書籍の執筆など幅広く活躍している。『青森県から 津軽塗りの こぼしにくいコップ』『福岡県から 小石原焼の こぼしにくいコップ』が2014年度グッドデザイン賞を受賞。 2013年3月、慶應義塾大学院 政策・メディア研究科修士課程卒業。2013年末、世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤング・グローバル・シェイパーズに選出される。2014年7月、書籍『和える-aeru- 伝統産業を子どもにつなぐ25歳女性起業家』を出版。

初出日:2014.11.17 ※会社名、肩書等はすべて初出時のもの

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